『明かされた秘密』 ゴッドフリー・レイ・キング著
極東で幾世紀もの間、守られ保管されてきた偉大な知恵が、この地球人類の進化を導き、見守る偉大な昇天マスター方の命により、今やアメリカの地に表れる時が来た。
偉大な昇天マスター・サンジェルマンは、この叢書を通じて、当惑星を統治する昇天マスター霊団の強力な使者のひとりである。
フランス革命前、革命中のフランス宮廷で活躍したマスター然とした「神のごとき存在」と同一人物である。サンジェルマンの忠告に耳を貸していたら多くの苦難をまぬかれたのだが、その神の超越的能力ゆえに当時ヨーロッパの「奇跡の人」と呼ばれた。この地球上における彼の大変重要な任務の一部は、われらの前に始まりつつある黄金時代において、地球の諸国家に対する「光」のカップの担い手となるように、アメリカ国民を浄化、保護、啓発することなので、彼は過去、現在、未来のアメリカと堅く結びついている。
はじめのころのアメリカの自由は大部分、初期の責任者を保護して励ますサンジェルマンのたゆまぬ努力によるものだった。独立宣言の草稿も彼の援助と感化の直接のたまものであり、一生の最も暗い時期ワシントンとリンカーンを支えたのは、彼の愛と保護と手引きだった。
人類のこの最愛の兄弟は、その光と自由のために飽くことなく働き、今日のアメリカにおいてでさえ国政の世界で働いて、ある好変化を引き起こしつつあり、アメリカと、アメリカを通して世界に恵みを授けるだろう。どれだけ自分たちの幸福と利益がこの偉大な昇天マスターのおかげなのか、アメリカ国民と地球の人々が知るのは何年も先のことではあるまい。彼は理想のために戦い、休みなく働き、理想へのとても深い愛、服従、奉仕でのみ彼を十分公平に評することができる。
わが国におけるサンジェルマンの活動を詳しく知ることにより、彼に緊密に接触して彼を愛する感じを味わうことができ、それが読者の人生において生きた現実の力となる。
本書の発光放射は、本例では最愛の偉大な「光の運び手」である一昇天マスター・サンジェルマンのみが与えうるようなものである。
ガイ・ウォーレン・バラード
序文
まさしくサンジェルマンの援助によって、私は光栄にも本叢書に書きとめる体験をし、あの公刊許可が与えられた。彼をはじめとするあの昇天マスター方の援助を私は受けたが、同じような援助を受けていないなら、彼らに対する私の愛と感謝の念が、いかに大きく永遠のものであるか誰も理解できない。
昇天マスター方からの招待と愛の奉仕によってのみ、可視可触の生きた呼吸するからだをまとった彼らと一緒にいる権利を獲得する。そういうわけでサンジェルマンの例外を除いて昇天マスターの実名、正確な所在地、記録、この中に記された財宝は彼の命により意図的に差し控える。他のいかなる近づき方も、きっと失望と失敗に終わるはずである。幾世紀を通じて守ってきた偉大な「存在」とパワーが、彼らを今までどおり守るからである。
おのれの精神的な浄化や力、達成が、こういう活動に入るための唯一の手段であり、それによって昇天マスターとの交際が生じる。欠点を自ら意識的に正すことによって、ある段階に達するとき、宇宙の何もマスターと接触するのを阻止できない。
アメリカには、この惑星に人類が出現して以来、人類の自由のために働いていたグレート・ホワイト・ブラザーフッド(大白色聖同胞団)の最古の中心地のひとつがある。この隠れ家での活動のいくつかは読者に明かされる。それは、もし読者が準備しているなら、自分自身の内なる光によって、この強力な神の放射中枢を通して流れ出るさらに偉大な光と意識的に接触し、それによってもう一度古代知恵の泉で飲み、平和と愛と力のクリスタルカップを疲れ果てた兄弟姉妹に運ぶためである。
本書公刊の目的は、個人に励みと力を伝え、今の過渡期を通じて向上させて支援し、またわが国の未来と来たるべき時代が今築かれつつある、健全でしっかりした土台を多少明かすことである。
「永遠の光」の象徴、あの純白にきらめく万年雪をいただく、高くそびえるシャスタ山の威容に抱かれて本書は執筆された。中身は最愛なるマスター・サンジェルマンその他の偉大な昇天マスター方に接触して連れて行かれた道の記録である。この地球人類が平和、愛、光、永遠の完成への道で戦うとき援助するため、彼らは休みなく働く。
私はそういう体験をして、生命の真理を見聞きし絶対確実に知りたいという内側から自分を支配する大願に断固としてしがみついた。私自身の内なる自己の中の力強い「神的存在」「世に生まれ出づるあらゆる人間を照らす光」「キリスト」に気づき、認めるよう一歩一歩導かれた。キリスト、「光」、その全知の遍在および確かな活動との一交信方法が私に明かされ、それを読者に本書で教える。
わが身に起こった出来事と受けた教えの一部だけを書きとめることができる。大願は非利己的だったので、ひとつずつ実現した。長い間たえまなく真理と幸福を探求してきたが、どちらも見つけた。それらは永遠であり、私自身の偉大な神我に由来するので、誰も私から奪えない。
この体験を発表するに際して、恒久的な幸福を発見しうる唯一の場所である真理の道を歩くとき、読者は最も深い祈りと共に「光」と祝福を受け、途中で成功することができる。そこに、そしてそこにのみ探究者は「光」のあとに永遠の平和と愛の奉仕活動を見いだすだろう。こういう書物を世に送り出す今の努力で、やはり「光」を求めていた地球の人たちに、私の受け取った愛と光と幸福をいくらか運べるなら、私は十分報われているだろう。
「事実は小説よりも奇なり」という格言は本書に当てはまる。好きなように受け入れるか拒絶するかは読者側だが、私を援助してくれた昇天マスター方はしばしば私にこう言った。「人類が私たちの『存在』を認めることができればできるほど門戸を広く開き、援助を十分与える。しかし拒絶し、この事実に賛成しない者がいても、私たちやあの事実が宇宙に存在し活動するのを消し去ることはない」
ここに書きとめられた事実を認める者は、新しくて強い「力」が人生に入りつつあるのを発見するだろう。一冊一冊が、この強大な「存在」、その放射と支援パワーを運ぶ。実直、まじめに、深く、根気強く本書を研究する者は全員あの「存在」とパワーの現実を知り、接触するだろう。この体験は今日この地球に人類が存在するのと同じくらい本当の事実であり、アメリカ・カリフォルニア州シャスタ山で一九三〇年八月、九月、一〇月にすべて起こったことを読者に言いたい。
ガイ・ウォーレン・バラード
昇天
わが神の炎が額にふれるのを感じる 愛のいぶき―永遠の今 目をあげると、見よ 頭上におのれ自身の偉大な神我
すべてを包む、まばゆい雲 わが真の「神的存在」の呼び声が聞こえる 愛の偉大な力がこみあげてくるのを感じる 私は深くそのいぶきに入る―その光
内に見える、この鼓動する炎 耳をすますと、わが秘密の名前が聞こえる 燃える輝きを感じる―偉大な炎のいぶき 私は死の征服者
今、進み出て、昇天し、自由の身 わが心臓の光に、万物がこうべをたれる 私は原因の存在のみ そしてあの原因、愛―聖音
私は命を注ぎだす―高め、引きあげる わが心は満ちあふれ、おのれをほめそやす わがパワーは強まり、神感を与える わが偉大な光線は神自身の火
私は太陽、わが愛―その光 他のものはみなかすんでくる―見えなくなった地上 私はおのれが神にすぎないことを知っている―絶対者 源―偉大な、偉大な中心太陽
第1章
マスターとの出会い
シャスタ山は西空を背景にくっきりと見えていた。山麓はマツとモミの茂みに囲まれ、緑色のフィリグリー台座にはめこまれた白く輝くダイヤモンドの宝石のように見えた。日が地平線に近づいて影が長くなるにつれて、雪峰はきらきら輝き、一瞬一瞬色が変わりつつあった。
うわさによるとシャスタ山ブラザーフッドと呼ばれる人々の一団、事実上、神人集団があり、グレート・ホワイト・ロッジの一派を形成し、この中心地は太古から今日にいたるまで脈々と続いているという。
私は公用で山麓の小さな町に派遣され、ブラザーフッドに関するこのうわさを余暇に解こうとしていた。たいていのうわさや神話伝説は、一見しただけではわからない不可解な事実にどこか起源があり、生命の真の探究者にしか通常見分けがつかないことを極東旅行で知った。
シャスタに恋をし、毎朝ほとんど無意識に山の精霊と団員たちに挨拶した。土地全体に何かきわめて異常なものを感じ、私の経験から、彼らの中に影を投げかける者がいても不思議ではない。
ひとりでじっくり考えたいときや重大な決定をしたいときは、いつもロングハイキングで登山道をたどるのが習慣となった。ここ、この雄大な自然に気晴らしと霊感と安らぎを見いだし、気を静め、心身を元気づけた。
考えながら、山の奥深くで時間を過ごす、そんなハイキングを遊びで計画した。そのとき以下の体験が人生に起こり、数ヶ月間従事したいつもの決まりきった仕事に戻ることがなかったら、別惑星にいるとほとんど信じられるくらい人生を一変させた。
問題の朝、夜明けに出発し、気ままに進むことにして、道を教えて下さるよう、ぼんやり神に求めた。正午までには山腹に登り、南方の眺めは夢のように美しい。
一日が進むにつれて、とても暖かくなり、しばしば立ち止まって休憩し、マックラウド川、渓谷、町周辺のすばらしい一望を満喫した。昼食時間になり、冷たい清水を求めて山の泉を探した。手にカップを持ち、水をくもうと、かがんだとたん電流が足先から頭のてっぺんまで全身をつらぬいた。
ふり向くと、ま後ろに若者が立っていて、一見したところでは私のようなハイカーに見える。もっと近づいて見ると常人でないことが直ちにわかった。この考えが頭をよぎったとたん、ほほえんで話しかけてきた。
「君、カップを渡してもらえれば泉の水よりもはるかに気分爽快になる飲み物をあげるよ」言うとおりにすると即座にカップがクリーム状液体でいっぱいになった。カップを返しながら「飲みなさい」と言った。
飲んで、驚きを予期したに違いないが、一方で味はおいしく、心身に生気を与える電気効果に驚いて、はっと息を飲んだ。カップに何か入れるのを見ていないし、いったいどうなっているのだろうか。
「君の飲んだものは―彼は説明した―生命自体のように生気を与える純粋な宇宙供給源から直接やって来ますが、実際に生命です。周囲いたるところに存在するので、遍在する生命なのです。全宇宙は愛の命令に従うので十分に愛するとき、生命は私たちの意識的な支配と命令を受け、喜んで従います。私が愛のうちに命じるとき望むものは何でも現れます。カップをさし出すと君のために望んだものが現れました。
見なさい。手をさし出しさえすればよく、金を利用したいと思えば、ほら、ここに金があります」直ちに一〇ドル金貨の大きさぐらいのディスクが、てのひらに出現した。再び話をつづけた。
「偉大なる法をある程度理解したことが君の中に見てとれますが、遍在する宇宙供給源から直接望みのものを生む出すほど表面上認識していません。君はこういう種類のものをそれほど熱心に、それほど実直に、それほどしっかりと見たいと望んできましたし、その思いはもはや止められません。
とはいえ物質化は内なる自己の大真理のいちばん重要でない活動のひとつです。もし君の願望が利己主義と現象の魅惑とから自由にならなかったら、そんな体験は起こらなかったかもしれません。今朝、家を出るとき、外部のマインド活動に関するかぎりハイキングしていると考えました。より深い、より大きな意識で内なる神我の衝動に実際従っていましたし、神我は君のとても強烈な願望をかなえることのできる人、場所、条件に導いてくれたのです。
宇宙のどこかで表現できないものは願えない、それが生命の真理というものです。願望の中の感情が強烈であればあるほど早く達成されるでしょう。けれども神の子のもうひとりか神の創造物のどこか他の部分に害を与えるのを願うほど愚かなら、どこか自身の人生体験で不調和と失敗により報いを受けるでしょう。
神の子はみなあらゆる完全なよいものに富むという、あの神意を十分悟るのはとても重要なことです。神は完全なものを創造し、子にまったく同じパワーを授けました。子も完全なものを創造維持し、神を表現する、すなわち地球とそこにあるものすべてを支配することができます。人類は神の形に似せてイメージでもともと創造されました。みながこの支配権を表現できない唯一の理由、それは神の権威を使わないからです。各人はその授かりものにより、おのれの世界を支配することになっているのですが。そのように、万物に平和と祝福を注ぐことによって愛の法に従うというのをしていません。
生ける至高神の神殿を自認し、このことを永遠に認識するため、失敗があって、こうなります。現在、見せかけの時空と活動の制限を受けている人類は、困っていて誰かに一握りのお金をさし出される人と同じ状況にあります。もし必要としている人が進み出て、さし出されたお金を受け取らないなら、どうやってそのお金のもたらしうる利益や恩恵を受けることができますか。
今日の人類の大部分は、まさにこの意識状態にあり、人生と世界に来たすべてのよいものの持ち主、贈り主、行為者として心、心臓の中にいる神を認めるまで、そのままでいるでしょう。
人間的つまり外部の意識活動は、それ自身のものをまったく何も持たないことを、各人の個我は完全かつ無条件に認めねばなりません。エネルギーによって内なる偉大な神を認めますが、そのエネルギーでさえ偉大な神我によって個我に放射されます。
あの内なる偉大な自己への愛と称賛、および真理、健康、自由、平和、支給品その他正しい使用目的のため望むいかなるものにも焦点を合わせた注意を、意識的な思考と感情にしつように保持すると、宇宙に偉大な磁力法則があるのと同じくらい確実に、君が用いるよう世界にそれらがもたらされるでしょう。
生命の永遠なる法、それは君が考え、感じることが何でも形になるというものであり、考えのあるところに君はいます。君は君の意識だからです。そしてどんな瞑想対象であれ、それになります。
憎しみ、非難、色欲、妬み、うらやみ、批判、恐怖、不信、疑いの考えにマインドがいすわるのを許すとき、いら立ちのこの感情が心の中に生じるのを許すとき、おのれの心身と世界に不調和や失敗、大きな不幸がきっと起こるでしょう。国家であれ、人であれ、場所であれ、状況であれ、物であれ、そんな考えに注意が占められるのをあくまで許すかぎり、その活動を心身や私事の構成要素に取り入れていて、実際その活動を無理やり強制的に体験しているのです。
この不調和な活動は、すべて思考と感情を通して個人とその世界に入ります。外部意識を感情コントロールに用いるかもしれませんが、思考に外部意識で気づく前に感情はしばしば爆発しますし、癖によって蓄積した多くの創造物の中に、いかに大きなエネルギーがあるのか、この種の体験から学ぶべきです。
生命の感情活動は、人間意識の中で最も無防備な箇所です。蓄積したエネルギーによって思考は原子物質に押し上げられ、こうして思考はまさに物質化します。私は君に言いますが、感情を見張る必要性はいくら強調してもいいです。心のバランス、肉体の健康、各人の個我の関心事と世界における成功と達成を維持するにあたり、感情コントロールは生命で最重要な役割を演じるからです。思考は感情でおおわれるまで決して物質化できません。
聖霊は生命、神、神の愛の活動あるいは神の表現である『母』の感情面です。こういうわけで聖霊に対する罪は、そんなに大きな苦悩をもたらすものとして引き合いに出されるのです。感情におけるどんな不調和も愛の法、均衡と調和と完全さの法を破るからです。
愛の法に反する宇宙一重い罪は、人類がほとんど絶えまなくあらゆる種類の怒りの破壊的感情を走らせることです。
人間の思考と感情によって生じる邪悪な破壊的力が、この地球とその雰囲気に表現しています。その力が、みなの日常の個人的体験における感情コントロール不足によってのみ、私事や国事に加わってしまったことを、いつか人類が悟り、認識するようになるでしょう。破壊的思考でさえ感情世界を通ってようやく行動、出来事として表現する、つまり物質化することができるのですが、それはこの表現段階において思考形態の上に物質原子の合体する活動が起こるからです。
突然の爆発音が聞く者の神経系に衝撃を与え、肉体の細胞構造に振動感覚を起こすのとまったく同様に、意識的にしろ無意識的にしろ、故意にしろ故意でないにしろ、怒りの爆発は、その感情を走らせる人の心身と世界の原子構造において、より微細な物質に衝撃を与え、かき乱し、混乱させます。
不調和な感情は、人間の経験界において崩壊、老化、記憶欠落、機能停止、臓器不全、衰弱などと呼ばれる状態を引き起こす張本人です。肉体構造への効果は建築物への効果と同様であり、もしレンガをくっつけるモルタルがくり返し衝撃を受け、日に日に衝撃が増すとすれば、この途切れのない衝撃でモルタルを構成する粒は振動して、バラバラになり、建築物は倒壊して瓦礫の山と化し、形は消滅します。
そういうことを人類は、たえず人体の原子構造に対してしているのです。
不調和な思考と感情を自我に表現するのは最小抵抗線であり、未発達で自制心に欠けた、わがままな個人の習慣的活動です。彼らは『自身の内なる自己の法』を理解するのをこばみ、表現手段にすぎない個我に『あの法』を守らせようとはしません。
意識のどの扉も、他のパーソナリティーのマインドと感情の破壊活動に対して広く開いているので、思考と感情をコントロールできないか、そうしようとしない者は、ひどいありさまです。冷酷な破壊的衝動に身をゆだねるのに力も知恵も訓練もいらず、そのようにふるまう大人は、自制心の発達に関しては子供にすぎません。
一生を通じて人類は感情コントロールをほとんど教わっておらず、そのことが人生に暗い影を投げかけます。今日の欧米で、いちばん必要なのは特にこの点に注意することです。完全に自分たちで創造した共同団体と環境に人類の大半は浸かっているので、不調和な思考や感情、活動に身をゆだねるのは確かに簡単です。
この制約を永久に超越するため、外部意識のコントロールを通じて、自らの自由意志によって、この状態から脱する努力をせねばなりません。自分自身の思考と感情を抑制するまで、その人の人生と世界から苦しみと不調和と破壊を取り除くのを誰も期待できないのです。このように心身を流れる生命が、周囲の世界でのあらゆる不穏な小事に端を発した不調和によって、まちがって修正されないようにします。
人類の九五%の思考と感情は、小さな野良犬と同じくらい自由気ままに走るので、はじめのうち、そんな訓練は絶えまない断固とした努力を要します。
しかしながら、この二つの活動をコントロール下に置くのにどれだけ努力を要しても、時間とエネルギーをたくさん費やすだけの価値があり、それなくして自分の人生と世界を本当にいつまでも支配することはできません。君にこれらの高等法則の使用を教えるのは私の喜びと名誉であり、適用すれば真の知恵を解き放ち、まぎれもない完璧を成就することができるでしょう。
君自身をコントロールする第一ステップ。マインドとからだ、両方のいっさいの外部活動をじっと落ち着かせます。一五分から三〇分。夜、就寝前そして朝、一日の仕事が始まる前、次のエクササイズを行い、必要な努力をする者は誰でも驚くべき成果をおさめるでしょう。
第二ステップでは落ち着いているのを確かめ、じっとしたら、からだがまばゆい白光で包まれているのを想像し感じます。最初の五分このイメージを保ちながら心臓中枢に注意を集中し、黄金の太陽のように内なる神を視覚化しつつ、外部の自我と内なる力強い神とのつながりを認識し、強烈に感じます。
次のステップは承認。『純粋なキリスト、力ある神的存在が満ちみちるのを私は今、喜んで受け入れる』大光明を感じ、それを強めます。からだのあらゆる細胞に少なくとも、もう一〇分間。
それから命令で瞑想を終えます。『私は光の子である。私は光を愛する。光に仕える。光に生きる。私は光に守られ、照らされ、支給され、支援され、私は光を感謝し、賛美する』
『人は瞑想する対象になる』ことを、つねに覚えておきなさい。そして万物は『光』から生じたので『光』は至高の完全であり、万物の支配者なのです。
『光』をじっと見つめ、あがめることで、いやおうなしに光明と悟りがマインドに生じ、健康と力と秩序がからだにもたらされ、平和と調和と成功が、継続しようとする各実行者の関心事に表れます。
『光』は至高であり、遍在し、『光』に万物は存在します。ずっと幾世紀にもわたって、いつの時代も、あらゆる状況下で生命の大偉業を言い表してきたすべての者が、そのように私たちに言います。
あの真理は、まさに百万年前と同じくらい今日も真実です。人類の記録があるころから、あらゆる時代の大賢人を描いた肖像は、頭上や周囲に『光』を放っています。
『光』は現実であり、ちょうど君の家の電灯と同じくらい実際のものです。各人の周囲の『光』の放射を観察者の肉眼に表示する、機械が組み立てられる日は、それほど遠くありません。個我は、不調和な思考と感情によって、神の『光』の周囲に雲をなす汚染つまり染みを生じますが、そんな機械はそれも表示するでしょう。この理由で、しかもただこれだけの理由で偉大な生命流のエネルギーは汚染されるのです。
このエクササイズを忠実に実践し、マインドとからだのあらゆる原子に『光』を深く強烈に感じるなら、『光』の中に宿り、永久に活動する途方もない活動やパワー、完全さの十分な証拠を受け取るでしょう。これを短時間でも体験したとき、もうそれ以上証拠はいらないでしょう。君が君自身の証拠になります。『光』は神の国です。神の国に入り、安らかにありなさい。父の家に戻りなさい。このエクササイズを最初の一〇日間行った後、一日三度、朝昼晩行ったほうがいいです。
『あー、そんなに時間を当てられない』とよく不平を耳にします。そういう考えを抱く人には本当にこう言いたいです。
人、条件、物がそろわず暇がないことで、普通の人はそれらを批判非難し、そのせいにします。そのことに費やす時間を、『光』をこのように認め用いるのに当てるなら、あえて試し継続する意志を十分持つ人のために天国が地上に出現するでしょう。不可能なことは何もありません。『光』は決して失敗しないのです。
『光』は神が創造し、天地創造を通じて秩序や平和、完全を維持する方法です。これをしたいという願望が十分強いとき、この地球上の誰でもみな、それをする時間が望むだけつくれます。向上のため『光』の使用を真剣に望むなら、願望そのものの強さが、時間を提供するために人、条件、物の世界を並び換えてくれるでしょう。世界中の誰ひとりとして、あの法の例外ではありません。何か建設的なことをしたいという強い願望が十分強くなるとき、それは創造と願望表現に必要なエネルギーを解き放つ神のパワーとなるからです。
全能なる神的存在に触れる同じ最高特権は誰にでもあり、この世の不調和と限界を超えて個我とその世界を引きあげるのは昔も今も、いつまでもその唯一のパワーに他なりません。
君、固く決心してこれを試し、君にいる神は必勝の女神であることを知りなさい」
物質化によって元素制御の証拠を示しただけでなく、以上のように教えて説明してくれたので、談話が終わったとたん昇天マスターのひとりに違いないと気づきはじめた。
私は腰をおろし、私のことを知っているのはなぜなのか考えた。
「君―すぐに私の考えに答えて言った―幾永劫の間、知っています。君自身の意識的努力で考えを高めたとき、そのおかげで今回君のところに来ることができたのです。二人ともより微細なからだでいるとき、私はいつも君に接触していました。とはいえ昇天マスターの誰かに手を伸ばす意識的努力が、はるかに触知できる仕方、つまり肉体感覚で触知できる仕方で君のところに来る道を開いたのです。
外部意識で完全にはわからないようですね。君の誕生や母の他界のとき居あわせましたし、遅れないよう適切なときに君と妻ロートスを結び合わせるのに力を貸しました。もう一度、君と息子との親子の縁結びをこの生まれ変わりで援助しました。でも焦らないように。
少しじっとすわり、見つめなさい。そうすれば正体を明かしましょう」言われたようにすると多分まる一分で顔やからだや服が、手で触れられる生きた呼吸するマスター・サンジェルマンの「風采」になり、驚きにほほえみ、楽しんでいるのが見えた。
サンジェルマンは、そこ私の前に立っていた。こうごうしい偉容、宝石で飾られた白いローブ、支配権と威厳を示し証明する、目にきらめく光と愛。
「これが―サンジェルマンは説明しました―かなりの時間、人類の幸福と繁栄のために働くときまとう、からだであり、そのときの仕事に世間とのより近い接触が求められない場合です。求められる場合は、そのとき働いている国民の特徴と衣装をまといます」
「ああ―私は大声を出した―今わかりました。内部意識レベルであのように何度も会いました」
「君―彼は説明した―真の支配力とは実際どんなものかわかりますか。昇天状態の私たちは、陶芸家が粘土を制御するように世界の原子構造を制御できます。宇宙のあらゆる電子と原子は、神のパワーゆえに願望と命令に従います。神のパワーによって原子構造を制御し、そこからディレクターの権利を獲得しました
昇天していない人類は、こういうものにびっくりします。でも言っておきますが、普通の人間がたやすく着替えるのと同様、たやすくからだの外観と活動を変えます。自ら創造した制限に閉じこめる人間の不幸な意識状態とは、理解できないものを恐れるかあざけるかのどちらかの態度を取り、さらに悪いことには無知にも『そんなこと不可能だ』と言う心構えのことです。物事は、人間のある状況下では起こりそうにないかもしれませんが、偉大な『光』である神我は、あらゆる状況を変えることができ、そのため不可能なことは何もありません。
各人は自分の中に生命の神聖な炎を宿し、宇宙のどこに移動しても、その人の神の部分は支配権を持ちます。自分自身の無気力や不精ゆえに、心身の大昔からの習癖を再び整えるために必要な努力をしなければ、自ら鍛えてつくった鎖に縛られたままです。自分自身の中の神を知る決心をし、あえてあの神我に外部活動をいっさいコントロールさせるなら、最初から自分のものだったあらゆる物質を支配する知識をもう一度受け取るでしょう。
人類の多くが急速に目覚めつつある時が来たので、毎回新しい肉体で何回も、数百回、時には数千回もの生を生きてきたことを何らかの方法で理解させねばなりません。
生まれ変わりの法則は人間の成長活動であり、均衡を意識的に崩した状況で均衡を再びとる機会を与えてくれます。つぐないの法則、因果の法則またはどう呼ぼうと構いませんが、その一活動にすぎず、宇宙のいたるところであらゆる力を支配する、自動的に均衡を保つ過程です。この法則を正しく理解するなら数々の体験状況の説明がつき、理解しないならまったく不公平に見えます。人間の巻き起こす無限に複雑な物事と体験に対する唯一の論理的説明であり、操作といっさいの表現を支える法則とを明らかしてくれます。そのことから偶然とか事故のようなものはないことがわかります。すべては、じきじきの厳格完全な法則のもとにあります。あらゆる意識体験には先立つ原因があり、あらゆることが同時に未来の結果の原因なのです。
男性が一回の生で女性を傷つけたら、きっと女性のからだに生まれ変わって、相手の女性に辛抱させたことを悟り体験するまで同じような体験をします。もし女性が不貞であるか男性を傷つけるなら同じことが当てはまります。この方法によってのみ、おのれが世界に引き起こした、あらゆる物事の原因と結果をどちらも体験せざるをえない、いや、むしろ自らに体験をしいるのです。自分自身の世界で望むことを何でも創造し、体験することができますが、他人に不調和を体験させることをする気なら、自分自身の創造の結果が残りの宇宙生命に及ぼした影響を理解するまで、同じような状況を強制的に自分に体験させます。
私と来なさい。君がフランスで女性のからだをまとった前世を回想しましょう。そこでは張りのあるたぐいまれな美声で大成功をおさめた歌手でした」
直ちに私のほうはいとも簡単に肉体の外に立って、肉体が地面に横たわっているのがはっきりと見えた。そこ山腹は安全だろうか、私の考えにサンジェルマンは答えて言った。
「安心しなさい。離れている間、何ひとつ害を与えることはできません。見なさい」
そのとたん肉体が、直径約一五メートルの輪を形成する白炎で囲まれるのが見えた。
サンジェルマンは私のからだに右腕をまわし、地面から急上昇しているのが見えたが、まもなく彼の振動機能に適応した。はっきりした空間移動感覚はなかったが、やがてフランス南部の村を見下ろし、話をつづけた。
「ここで君は美女のひとり娘として生まれ、その生涯は当時の大多数の人よりはるかに進んだ理想主義の典型でした。父は大変献身的な夫、高度な教養があり、初期のキリスト教精神で霊感を受けました。
あらゆる環境のエーテルは、その地にかつて起こった出来事をすべて記録します。このエテリック・レコードをよみがえらせましょう。生涯の詳細をことごとく示す活人画が見えるでしょう。
この村の教会で歌い、ひとりの先生について勉強しましたが、練習させるよう先生は両親を説得しました。あっという間に上達して、さらに大きな利点を握り、そのときパリに引っ越しました。集中的に勉強して一年後にはフランス女王の前で歌う機会が訪れ、その後援により女王のサロンの多くに出演しました。これで音楽家としての成功は確実になりました。フランスと成功が翌五年間、贈り物を惜しまず与えてくれ、富をたくさん蓄えました。
突然、両親が死と呼ばれる変化を通り、受けたショックがきわめて大きく、何週間も重病に伏せました。回復して再びコンサートの仕事に復帰したとき、思いやりのある新しい音色が、最近の悲しみの体験を通じて声に加わりました。
ひとりの男性が音楽の勉強を大いに指導し、君の公的仕事のディレクターになり、信頼に値する人物として彼を頼るようになりました。それから一四年大成功がつづき、それが終わると急病にかかり、一週間以内に他界しました。宝石と富は人助けのため、ある終生の計画を実現させるため使うようディレクター気付で残されました。最後の葬式が終わったとたん、まったく心変わりしました。貪欲に完全に取りつかれたのです。今生ここアメリカで数年前会った男性を今、見せましょう。仕事上の出来事、きっと間違いなく鮮明に覚えています」
ここでサンジェルマンは商業組合を示した。ベルギー政府代表に関連して約一〇年前、西ヨーロッパにいたとき、私はその組合で数名の人々を助けようとした。
「あの男性には―彼は話をつづけた―フランスで犯した悪事をつぐなうため、ここでチャンスが与えられたのです。状況が示され、彼はその状況を十分承知していました。私たちが示したからですが、正義の偉大な宇宙法のために働く機会を得て、あの借金を清算するほどまだ十分強くありませんでした。本人の自由意志でそうしていたら多くの点で自由が与えられ、この生まれ変わりではるかに速く進歩できたのですが」
このように、神のプランつまり愛、平和、神の天地創造に対する完全さだけに応えるよう、「内なるキリストの光」に私たちを照らして浄化してもらうまで、外面生活は個人を困窮、再生、あい変わらずつづく争い、苦痛の輪に縛りつづける。客観的教えはビジョンにもマインドにも体験を記録するので、これは決して忘れない教訓のたぐいである。視覚による記録はより深いものであり、外部の知力活動から注意をもっと多く必然的に受ける
一緒に観察したときと同じくらいまざまざと、今日までその詳細をひとつひとつ思い出せるので、久しく忘れていたあの体験の肝心な点は、疑いなく記憶に永久に焼きついた。
「では―サンジェルマンはつづけた―もうひとつのエジプトでの生まれ変わりを思い出しましょう」
私たちは地面から上昇し、前へ高速移動した。美しい海の上空を通過しながら私は地中海をとても意識した。さらにカルナックとルクソールへ進み、それから再び着地した。
「じっと見ていなさい―サンジェルマンは言った―この記録は大昔のルクソール神殿のもので、考古学者が今日調査している遺跡の中にはなく、これまで発見された遺跡のどれよりも古いものです。どこを発掘したらいいのか知ったら、考古学者はほとんど完全保存状態の壮大な神殿を発見するでしょう」
遺跡だらけのある地点、旅行者が今日目にすることのできるものすべてを指さすと、景色がエーテルにおける活動に代わった。まさに美しさと豪華さにおいて、現世代の思いつくどのイメージよりもはるかにすばらしい元の姿のままである。
庭と小池は、白大理石とローズ御影石の大きな柱で囲まれていた。場所全体が生き生きとリアル、鮮やかになり、今日地球上にある物質界のどの都市ともちょうど同じくらい手でさわれるようになった。あまりにも完璧に自然で正常なので、どうやってこの体験をそんなになまなましくするのか尋ねた。
「人間とその創造物は―彼は答えた―自然と同様エーテルの対応物、原型があり、それが、どこへ行こうと周囲の雰囲気に不滅の印象を刻むのです。個人の活動と生活体験の原型は、いついかなるときも自身のオーラ内にずっとあります。同じような記録は、あらゆる場所のオーラに存在します。前の活動の個人記録を復活させたい、つまり物質で再びおおいたいなら、どこにいようと昇天マスターは可能です。マスターが原子構造を合体させる原型は、あの個人のオーラにつねにあるからです。マスターが場所の記録を物質で再びおおうとき、同じ特定の場所でそれをせねばなりません。そんな記録が物質で再びおおわれるとき、物質で最初つくられたときと同じ生き生きした形と構造になるからです。
なんらかのよい目的を達するため昇天マスターがそう望むとき、このように建物全体とその周囲の物質構造を再合体させることができます。この神の与えし支配力を獲得したとき、学徒その他の人々の教育と利益のため可視化したい、どんなエテリック・レコードも物質で再びおおい、生き返らせることができます。
これを行うとき現実そのものと同じくらいリアルになり、物質で再びおおわれた物体は写真撮影でき、観察者の肉体感覚にとって手を触れ、物理的にさわれるようになります。
気づきなさい―サンジェルマンは注意した―君はより微細なからだでこの活動を体験していますが、それでもそのためリアルです。肉体とは君、自意識、思考し体験している個人のまとう衣服にすぎないからです。冬の寒い環境で重いオーバーを着て、夏の猛暑日に一着の軽い服だけを着るのと同じです。軽装での体験が重いオーバーを着ての体験と同様にリアルなのは確かでしょう。より完全な、より制限の少ない生命活動を理解するよう、このことに君の注意を促します」私たちは土地、周囲の国土、建築様式を調べた。
「来なさい、中に入りましょう」と彼は言った。話しながら前進し、正面入口を通りすぎ、神殿そのものに入った。私たちはそれから生きた俳優になると同時に次の体験の観察者になった。神殿の主要部分に進み、内陣に向かって行った。大神官がまっすぐ私たちのすぐそばまでやって来て、私を知っているように見えた。
「古代のこの神官は―サンジェルマンは説明した―今日の君の息子です」ひとりの小神官が現れたが、知っているとすぐに感じ、「神官補佐は君自身です」と言った。内陣に入ると、聖火を守っている巫子が見えた。今私の見た処女がロートス、数年前出会って結婚した、わが愛する双子光線、息子の母である。
場面が変わり、遠い州から王子が訪問しているのが見えた。巫子を捕らえて、花嫁にするつもりである。今まさに起ころうとしている未来を大神官が幻視するまで、万事順調に見えた。大神官は不安になったが、自分の考えを他に漏らさなかった。
番をし、王子の奴隷たちが入ってくるや至聖所に近づくのを見守っていた。近づいてくるので前へ進み、「やめなさい」とひとことだけ言った。
他よりも勇敢なひとりの奴隷がやってきた。下がるよう大神官は警告したが、それでも近づいてきた。祭壇から出る、ある神聖な力の円にたどり着くと、神官はもはやためらわなかった。防御の光の外端部に行き、右手をあげて、まっすぐ奴隷を指し示した。
炎が稲光のようにボッと噴き出て、奴隷はばったりと床に倒れ、息絶えた。じっと見ていた王子は、狂ったように激怒して進み出た。
「やめなさい」神官は雷声で再び命じた。王子はちょっとの間ためらい、まさにその言葉のパワーで呆然とした。神官は、つづけた。
「聞きなさい。生命の神殿への神の最高の贈り物を汚させまい。立ち去れ。あまりにも厚かましい、間違った指示を受けた奴隷の二の舞を踏む前に」
立って王子を見守っている間、大神官は自分の行使できるパワーを十分自覚していた。まさに自制心の権化、意識的に意志に従わせた無限の力の化身そのものだった。永遠のパワーで栄誉を授かった王者。
王子の意志も強大だったが自制心はなく、見境のない激怒の第二波に襲われながら自分が再び抵抗して、色欲を十分さらけ出しているのがわかったとき突進した。
神官は電光石火のごとく手をあげた。炎がたちまちボッと出て、王子は先ほどの奴隷と同じ運命をたどった。
サンジェルマンは私の方を振り向いて、そのうえさらに体験を説明した。
「いいですか―話を始めた―そういうふうに、あらゆる力の質は力を放つ者に作用します。王子と奴隷は、感情の中に憎しみや利己主義、腐敗の質を抱いてやって来たのですが、神官は力を持つマスターであり、力を彼らに向けたとき、力がオーラに触れた瞬間、彼らの質をおびました。神官は単に彼ら自身の感情と利己主義を元に戻しただけでした。もうひとりを守るため利他的努力をする神官自身も守られたのです」
小事件は幕を閉じ、華麗な光景は消え、私たちは再び神殿の廃墟のまんなかに立っていた。サンジェルマンは、さらにもっと明かしてくれたが、ここに記録できない。
「転生に欠かせない因果の宇宙の輪を避ける方法が―彼は話をつづけた―ひとつだけあり、それが生命の法を理解しようとする意識的努力です。人は外面生活のあらゆる状況にあって内なる神を真剣に求め、いつも『内なる自己』と意識的に交信し、その交信をしっかり維持せねばなりません。君にさらに多くのことを教えるのは喜びと栄誉でしょうが、しかし、それは君自身とその他の人たちに対する教育のためだけに行います。来なさい。もう戻らねばなりません」肉体に近づくにつれて再び命じた。
「白炎の輪が消滅するのを見ていなさい」輪が消えるのを見た瞬間、肉体に戻った。日は沈みつつあり、家に着くころにはほとんど午前〇時になるのがわかった。
「腕を私の肩にまわして―サンジェルマンは言った―目を閉じなさい」からだが地面から持ち上がるのを感じたが、特に前へ移動するのを意識しなかった。直ちに足が地面に触れ、目を開けるとロッジに立っていた。周囲の人々の注意を引かずにどうやってこのように戻れるのか尋ねると、サンジェルマンはひどくおかしそうに答えた。
「肉体で人々の間を移動するとき、何度もからだの周囲に不可視のマントを描きます」次の瞬間、彼は行ってしまった。
どこにでもテレポートして姿を現し、または使いたいものを何でも宇宙供給源から直接取り出して目に見えるようにすることのできる、偉大な昇天マスターのうわさは耳にしてきた。しかし、その中のひとりと現実に接触する体験は、まったく異なり、私は体験の驚異を全部はっきり理解しようとした。サンジェルマンにとっては、明らかにごく普通の出来事だったのである。
腰かけて長時間静かに黙想し、深く深く感謝しながら願望に関する「法」の説明を理解し、十分悟ろうとしていた。しいて各人の生命の中で意識を拡大させながら、新しいアイデアを推し進めるため、サンジェルマンは宇宙の原動力として願望の重要性と活動を強調した。こう言って説明した。
「建設的願望は生命の中に拡大する活動です。このようにしてはじめてすばらしいアイデアや活動、達成が、ますます物質と形態の外界での表現に推し進められるからです。あらゆる正しい願望の中に、それをかなえるパワーがあります。人間は神の子です。生命エネルギーをどのように導くのか、また実現した願望をどんな質で表現したいのか選ぶよう父は命じます。自由意志は生まれながらに持つ権利なので、この権利を人間は行使せねばなりません。
あらゆる拡大を建設的方向に導くことは知力の外部活動機能です。これが外部の自我の目的と義務です。人類の大部分の習慣にとっては、感覚の充足のためにのみ大生命すなわち神のエネルギーを使用できたら都合がいいのですが、それは破壊的使用であり、例外なくつねに不調和、弱さ、失敗、破壊があとに続きます。
願望を建設的に用いることは、この無限の神のエネルギーを知恵によって意識的に方向づけることであり、知恵によって方向づけたあらゆる願望は、ある種の祝福を残りの創造物にもたらします。内なる神の方向づけたどんな願望も愛の感情と共に出て行き、つねに恵みを与えます」それから二、三日間は、この体験記録を書きとめることに費やした。その後、ある朝、目覚めるとソファーのそばのテーブルの上にゴールドカードを見つけた。一枚の金のようであり、見事な紫色の美しい影付き文字でたった一短文こう書いてある。
「朝七時、山の待ち合わせ場所にいなさい。サンジェルマン」
このカードを注意深くしまい、その時を今か今かと待ちこがれた。期待はそれほど大きかった。翌朝早くランチを用意している間、何も携帯して行かないように、というはっきりしたテレパシーが届いた。言うとおりにし、必要なものは宇宙供給源から直接支給されると信じることにする。
まもなく途中で浮き浮きとし、許されるならどんな質問の機会も失わないことに決めた。約束の場所に近づくにつれて、からだがますます軽くなり、ついに四〇〇メートル以内になったときには、ほとんど足が地面に触れていないほどだった。誰も視界にいなかったので丸太に腰かけて、サンジェルマンを待つことにした。約一六キロのハイキングだったのに、いかなる疲労も感じていない。
わが身に訪れたすばらしい名誉と天恵についてじっくり考えていると、小枝がパキッと折れる音が聞こえたので、会えるのを期待して、あたりを見まわした。一五メートルと離れていないところで、パンサーがそろりそろりと近づいてくるのを見たときの私の驚きを想像してほしい。髪は逆立ったに違いない。走り、叫びたかった―何でもよかった―私の中の恐怖の感情は、それほど激しかった。パンサーが一度飛びかかったら私などひとたまりもないので、じたばたしても無駄だったろう。
頭はあまりの恐怖で混乱したが、ひとつのアイデアがはっきり浮かび、しっかりと注意を引いた。力ある「神的存在」をおのれの中に宿し、この「存在」はまったくの愛そのものであることを悟ったのである。この美しい動物も神の生命の一部であり、目を直視するようにした。それから神の一部はもう一部を傷つけられないという考えが浮かび、この事実のみを意識した。
愛の感情がこみ上げてきて、まっすぐ一条の光線のようにパンサーに向かって歩き、それと共に恐怖は消えた。忍び足は止まり、神の愛で共にみたされるのを感じながらパンサーに向かってゆっくりと進む。獰猛な鋭い目つきはやわらかくなり、からだをまっすぐにし、そろりとやって来て、肩を私の脚にこすりつける。私は身をかがめて、頭をなでた。ちょっとの間私の目を見上げ、それから横たわって、子猫がじゃれるように転がった。毛皮は美しく赤褐色、からだは長く、しなやかで、たくましい。あいかわらずたわむれていて、ふと見上げると、そばにサンジェルマンが立っていた。
「やあ―彼は言った―君の中に偉大な力が見えました。そうでないと私はこれほど大きな試練を許さなかったでしょう。恐怖を克服したのです。おめでとう。外部の自我を克服しなかったとしても、パンサーが危害を加えるのを許しませんでしたが、私たちの交際は一時中断したでしょう。
私はそこにいるパンサーとは無関係でした。新たに見つけた友との関係が終わる前にわかるでしょうが、これは偉大なる法の内部作用の一部でした。勇気の試練に合格した今、はるかに大きな援助を与えることができます。日に日に強く、幸福になり、さらにいっそう自由を表現するでしょう」
彼が手を伸ばした瞬間、約五センチ角の美しい琥珀色の小さなケーキが四切れそこに現れた。指示に従い、さし出されたケーキを口にした。ものすごくおいしい。いきなり、元気になり、うずうずする感覚が全身に広がるのを味わった。新しい強壮感と頭脳明晰感。サンジェルマンはそばに腰をおろし、教育が始まった。
第2章
「この前の体験のように肉体から出て行くかわりに、今日は『意識投射』を利用しましょう」右手の親指を私の両目の間に、残り四本の指を脳天に置きながらサンジェルマンはそう言った。強力な電流が全身を横切っていくような感じ。手を離して話をつづけた。
「しっかりとマインドを不動にし、君に説明して使い方を教える諸法則は、地上のあらゆる力と物事を意識的に支配する状況をもたらすことになるという事実を、黙想のためにたびたび思い出してほしいのです。これはつまり、どんな体験をしていても、いつもつねに君自身の心身を意識的に完全コントロールしていて、いつでも君自身の自由意志を用いることができるということです。
この意識投射の状態で君はまったく意識があり、全機能をたえず完全支配します。この教育とその利用のどれに関しても、どんなときもトランス状態も催眠状態も何もありません。どちらの状態でも体験者の意識的意志は機能しておらず、心身にそれを許すどんな人にとっても、きわめて危険な破滅的活動だからです。
トランス状態にも催眠にも意識的な支配力や制御はなく、そんな実践を認める人の霊の成長にとって最も不安定で危険です。この地上の力と物事の意識的なコントロールや支配、利用は、心身両方のあらゆる外部機能をあの内なる指揮に完全に協力服従させることによって、いつも君の内なる神我の管理下にあるべきです。どうかこのことを徹底的に理解してください。
これなくして支配力のようなものはなく、昇天マスターとして知られる者は、決して決して神が個人に与えた自由意志の特権を侵害しません。
二か所以上の場所で同時に起こっている出来事を体験するよう、昇天マスターが学徒の意識を一時的に拡大しようと決めるなら、投射体験を授けるかもしれません。そんな状態では学徒の機能は、たえず完全に自分自身の自由意志の管理指揮下にあります。学徒は肉体のある場所ならどこでも、また昇天マスターが教育のため学徒の注意を向けたいと思う場所でも十分意識があり、活動しています。
昇天マスターが一時的に学徒の意識を高める理由は、どうやってこれと同じことが自分で、自分自身の努力によって、意志的に、思うままにできるのか示すためです。
意識投射とは、学徒の心身両面における原子構造の振動率を上昇させることにすぎません。これは昇天マスターのエネルギー放射によってなされ、体験のための指定主音まで振動率を増す「光」の一活動です。人間の可視聴範囲外の次のオクターブ、領域へと拡大する点を除けば、ちょうど日常生活で用いるように、より高い振動率で視聴覚機能を用います。
まったく同時に近くのものと遠くのものを認識できるので、感覚のそんな使用は、覚醒状態で一瞬一瞬体験するものと同じです。意識の拡大収縮は完全に思うままです。これはつねに学徒の自由意志と意識的命令に従います。
自分で選んで庭の一本の木か、あるいは庭全体を意識していることは可能です。両方を観察するため同じ視覚機能を、まったく同じように用います。庭全体を見たいときは、望むものをすべてとらえるまで視覚活動を広げます。より大きな拡大は、より小さな拡大をそれでもやはり含むので、ほら、同時に両方の場所で全機能の完全コントロールを意識せねばなりません。起こる活動は実際には、視覚の働く力場の拡大なのです。
視神経の振動率が上昇することによって、この意識投射つまり意識拡大で視覚機能を使用できるのです。全過程は、場つまり海洋望遠鏡を使うとき起こることに対応します。
普通の体験では人間の意識は、ある領域内つまり力場内でのみ機能を使うことに慣れてしまい、この証拠に、物理的に部屋にいて自分に話しかける人の音声を聴けますし、またまったく同時に家のどこか他の場所で電話の呼び鈴が鳴るのも聴けます。外部活動の全機能は融通がききます。もっぱら個人の望みと意志次第であり、顕微鏡か望遠鏡のどちらかに使えます。
肉体の位置する部屋の音を意識し、二、三室向こうの音も認識できるなら、ちょうど同じ過程によって、この機能をさらにもっと遠くへ拡大することで、もっと遠い場所の音を聴けます。これを行うには、もっと遠い領域に達するまで振動率を増やさないといけません。
この偉大な内なる神の活動をじっと見つめるとき、いかに完全かつ容易に外部感覚が内部感覚に吸収され、二つだったものが一つになるのかわかります。
この意識活動は、視聴覚ばかりか他の全感覚に適用できます。そんな上昇過程は自然、普通、調和的であり、望む波長にラジオを合わせるのと同じくらい簡単です。ラジオの波長と視聴覚は同じ活動の一部です。音は色を含み、色は音を含みます。人間は十分じっとしているとき普通の日常体験でいつも色を聴き、音を見ることができます。
あるオクターブ内、領域内で振動は視神経に記録され、その所産がいわゆる視覚であり、また聴神経に記録されるものもあり、その所産がいわゆる聴覚なのです。赤外線より下、紫外線より上の可視範囲外は見えないので、平均的な人の目は、振動率がこの一オクターブ内にある物体しか見えません。昇天マスターのエネルギー放射によって脳と目の原子構造は十分速く振動し、人間の可視範囲外の次のオクターブに拡大します。
マスターのエネルギー放射か個人の内なる神我の命令のどちらかによって、この同じ活動を数オクターブに拡大できます。大勢の人が思わず知らずそんな体験をしますが、その意味するところも、どうやって起こるのかもめったに理解できません。超越意識に入るか高度な霊感を受けるひととき、これが起こったケースもあります。もっとも与えられた援助をまれにしか認識しませんが。
意識投射やビジョンは、他人のマインドにしか存在しない暗示で生じたイメージとは何の関係もありません。暗示をかける人は、他人のマインドにそんな考えやイメージを直接ぱっと伝えるだけです。太陽の像を鏡に映してから壁にそらすとき起こるその活動です。
暗示が意識投射と異なるように、ある場所について考えるのは肉体でそこにいるのと異なります。投射は君の内なる神我の働きなので、君の肉体が体験しているときのように鮮やかで、なまなましく現実です。昇天マスターは、その神我、至高我と合一しています」
サンジェルマンと私は、それから大昔の場面の観察者になり、また俳優にもなった。再び私は、思考や感情、行動において示された体験をしているのを外面的に意識していた。全作業は呼吸のように自然普通であり、唯一異常な感覚は支配感と、より大きな解放感だった。二人ともしばらく微動だにせず、その間サンジェルマンはエテリック・レコードを復活させ、教育が始まった。
「ここはサハラ砂漠―彼は言った―当時、亜熱帯気候の肥沃な国土でした」
土地のいたるところに豊かな湿りを運ぶ水流が数多くあった。この帝国のまんなかに首都が位置し、その栄光は世界中で有名だった。行政府ビルが都心のわずかな高台に置かれ、これらのビルから都市そのものが等しく放射状に広がっていた。
「この文明は―彼は話をつづけた―七万年前、頂点に上りつめました」
都市に入ると、歩きながら異常でリズミカルな活動を感じ、奇妙な軽量感がした。人々はみな大変ゆったりと優雅に動きまわっていたのである。この理由をサンジェルマンに尋ねると、こう答えた。
「この人々はおのれの起源を覚えていて、自分は神の子だと知り、それゆえにパワーと知恵の持ち主であり、それらを操りましたが、君には不思議で超人的に見えるかもしれません。実を言うと不思議なことはありません。万事、法に従い、人類の今日の考えにとって不思議に思えるものは法則の産物にすぎないからです。しかし人類の今日の意識は法則に不慣れで、それで不思議で異常に見えるのです。
生命の現実を正しく理解するとき、君の今の意識に不思議に思えるあらゆる表現は、アルファベットの使い方を習った者にとっての言葉の形成とまさに同程度、自然で正常な体験だとわかります。まさにそれは、いつも拡大進歩する生命の形態への表現活動にすぎず、愛と平和のうちにつねに秩序正しい法の過程を通して起こります。
体験が人類の今の精神状態にとっていかに不思議、異常、不可能に見えても、より偉大なる法とより賢明な知性が存在しないという証拠ではありません。それらの法と知性は、創造のより偉大な驚異を引き起こすため作用し、ずっと私たち全員を取り囲んでいます。
今日の外界における人類最高のマインドの知識とこの偉大な内なる知恵およびパワーとの関係は、小さな子の理解と微積分学の研究との関係に等しいです」
中央ビル群のひとつで、室内装飾と調和する、まばゆい落ち着いた色彩の大変な豪華衣装の案内係を見つけた。この中のひとりがガイド役をつとめて中央ビルに私たちを連れて行き、そこでこの偉大な帝国民の王に紹介してくれた。王はサンジェルマンだとわかった。
王のそばに若い超美少女が立っていた。ほとんど床にたれる金糸のような髪、射すくめるような青紫色の目。少女の態度全体が、慈愛に満ちた命令のひとつだった。探るような目つきでサンジェルマンを見て、一体誰だろうと尋ねると「ロートス」と答えた。
少女のそばに二十歳ぐらいの若い男性がひとり、たぶん一四歳の少年がひとり立っていた。若い男性はルクソール神殿で大神官として目にした人物、少年は小神官だった。この二人は王子で、再び私たち四人は一緒に働いていた。
「このように前世をかいま見て―彼は言った―神の祝福を受けたあの帝国民の活動に立ち入りましょう。私は考えがあって『祝福を受けた』と言いますが、すぐにその理由がわかるでしょう。おのれの起源と継承物を知りつくしながら、彼らの大多数は、まだ神の子として知恵とパワーをすべて意識的に十分使用し、ほとんど限りなくこれを行使しました。
外部のものは、あるべきように神我の道具にすぎず、創造された目的のみを遂行することが許されました。当然、偉大な内なる自己は縛られず自由にふるまうことができ、もちろんあの時代の完全さと活動は見事な成果のひとつでした」
この古代文明の時代、帝国全土はすばらしい平和と幸福と繁栄でみたされた。国王兼帝王は「古代知恵のマスター」にして「光の真の酌人」であり、あの「光」で統治された帝国は完全さの生きた手本だった。
「数百年間―サンジェルマンはつづけた―この完全さは、いかなるたぐいの軍隊も海軍もなしに維持されました。七つの光線のひとつひとつに二人ずつ取り組み、一四人の光の昇天マスターの担当で帝国民は支配されました。このように彼らは焦点をなして、力ある神の活動は目に見えるようになりました。この一四人の光の存在の下に一四人の小マスターがいて、科学、産業、芸術活動を管理する七つの省の大臣をなしました。各大臣は、自身のうちで神と意識的に直接交信することにより担当する仕事を進めました。このゆえに起源から直接いっさいの教えと指示が、彼らのもとに来ました。ですから神の完全さは、何も人間の干渉なしにたえず流れていたのです。
この政体はあらゆる点で大変すぐれ、成功し、満足のいくものでした。あれ以来、地上でそんな高みに近づいた文明は一度もなかったのです。今日に伝わった古記録で、この古代文明はいつも黄金時代として触れられ、あらゆる生命活動でそうでした。
君の最愛なるアメリカに、それほど遠くない未来、真の内なる自己の同じような認識が表れ、アメリカ国民はこれを表現して、高みに到達するでしょう。アメリカは光の国であり、その光は地球の諸国家の間で真昼の太陽のようにギラギラ輝くでしょう。ずいぶん昔、偉大な光の国でしたし、何ものも邪魔できないので再び精神的遺産を受けつぐでしょう。心身の中が強く、君の思う以上に強く、そびえ立って、あの力を行使し、国境から国境へ今の重荷をすべてかなぐり捨てるでしょう。
アメリカは他国に対しきわめて重要な運命を負い、数百年間アメリカを見張ってきた者たちは今もなお見張ります。私たちの保護と愛によってアメリカのあの運命を成就させるでしょう。アメリカよ、われら光の昇天軍はおまえを愛し、守ります。アメリカよ、われらはおまえを愛します。
菌類のように漂って吸血鬼のように力を奪う、ある活動を捨てたとき、似たような完全な政体が後世に表れるでしょう。アメリカの最愛の者たちよ、見せかけの暗雲が垂れこめるとき失望してはいけません。暗雲のすべての裏が金色に光っていることを、おまえたちに教えましょう。暗雲の後ろには、アメリカとその政府、国民を見張っている『神とその使者、愛と保護の昇天マスターたちの純粋で透きとおった光』があります。今いちど私はこう言います。アメリカよ、われらはおまえを愛します。
目覚めた偉大な霊が一体ずつ出現しつつあり、おのれの本来の強大な神のパワーをはっきりと意識し、政府の公職につくでしょう。彼らは自身の個人的野心や私財よりもアメリカの福祉に興味があるので、もうひとつの黄金時代が地上を統治し、一永劫の間続くでしょう。
今体験してきたこの時代より前の時代、国民の大部分は輸送目的で大飛行船を利用していました。さらにいっそう高度な発展段階に到達したとき、僻地以外その必要性はほとんどなくなりました。役人階級はみなあの人種の中で精神的にさらに進歩した霊だったので、先日のルクソールでの体験と同じように、より微細なからだであちこちに行き、好きなことを何でもすることができました。重力征服のための能力使用は君の呼吸と同じくらい自然だったので、意のままに肉体を運ぶこともできました。
金の自然放射は、バランスを保たせ清浄化、活性化するエネルギーや力なので、すべての『黄金時代』のようにこの時代、金は価値ある共有品でした。それは『創造主方』が地球内部に置いたものです。あの『光と愛の偉大な存在方』は諸天体とその系を創造管理し、そこに住む生物の進化を導きます。
人類の外部マインドとか知的な知識では、この惑星に金が存在する本当の目的をほとんど、ほとんどまったく理解できません。金は地中で植物のように成長し、自然の発展と呼吸する空気のみならず私たちの歩くまさにその大地に、バランスを保たせ清浄化、活性化するエネルギー流が、金を通してたえず注がれているのです。
金はいろいろな用途のためにこの惑星に置かれ、その最も取るに足らない、つまらない二つの用途は両替手段と装飾です。地上と地中におけるはるかにすばらしい活動と目的は、清浄化、活性化し、世界の原子構造のバランスを保たせる、それ自体の固有の特質とエネルギーの解放です。
今日の科学界は、この活動をまだ少しも知りません。けれども地球にとって家庭用暖房装置と同じ目的にかないます。金は、太陽からやって来るエネルギーを地球内部に供給して、活動バランスを保つ最重要手段のひとつです。このエネルギーの運び手として私たちの世界の物理的物質にも、そこで進化する生命にも太陽力を入れる変圧器の役をします。金の中のエネルギーは実際、太陽から放射される電子力であり、下等オクターブで作用します。金は『物質化した太陽光線』と呼ばれることがときどきあります。
金の中のエネルギーは極端に高い振動率なので吸収作用によって、より微細、精妙な生命表現にのみ作用できます。あらゆる『黄金時代』、人々の大部分はこの金属を普通にたくさん使い、そんな状況が起こるたびに、あの人々の精神的発展はきわめて高い状態に達します。こういう時代では金は決して貯蔵されず、そのかわりとして大衆用に広く配給され、人々はその浄化エネルギーを吸収し、さらに偉大な完全さに上昇します。金の正しい使用はそういうものであり、この法を意識的に理解して、従うとき、あの法の利用によって望むだけの量を自分に引き寄せることができます。
あらゆる連山にある金の鉱床ゆえに山で生命の健康と活力を見いだし、山以外、地上の他のどこにも見いだせません。有害な影響が純金にたえず手を触れている者に出ることを、誰も聞いたことがありません。純粋状態では金はやわらかく、簡単に磨滅しますが、それでもまさにその特性は私の話したこの目的にかないます。
この帝国民の中で最も進歩した者は、宇宙供給源から直接物質化することによって金をたくさん作りました。多くの建物の丸屋根は純金の板でおおわれ、室内は奇妙なのに素敵なデザインの光り輝く宝石で飾られていました。この宝石も永遠なる唯一の物質から直接物質化されたものです。
全部で幾時代が過ぎたとき、偉大な神我のさらに大きな創造プランよりも感覚の一時的快楽に興味を抱く、一部の帝国民がいました。このため神のパワーの意識が国中で失われ、ついに依然として活動しているのは、ほとんど都そこだけになりました。首都は『太陽の都』と呼ばれました。
統治者たちは身を引いて、あらゆる幸福とよいものは内なる神の崇拝から生じ、幸福になりたければ『光』に戻らねばならないことを、辛い経験によって帝国民に学ばせねばならないと悟りました」
国王兼皇帝は、帝国民がさらにいっそう深く感覚の満足にはまっているのを見て、もはや王国をそれ以上維持するのは神のプランではないことを内なる知恵によって悟った。宴会を催して、引退決心を発表し、このように臣下に別れを告げるよう自分より大きな精神的権威者たちに指示を受けたのである。
国王は顧問官を呼び寄せて、宴会を指示し、王宮の宝石の間として知られる帝国一豪華な場所で催すよう命じた。この部屋には、きらめく白光を放つ自発光電球の明かりがついていて、電球は水晶のチェーンで天井からつるされていた。中の光が激しく輝いていたが、光に当たると大きな安堵感と平静感を与え、からだに対するすばらしい鎮静効果があった。中央の電球の光は、天井のまんなかに大メダリオンを形成する日輪型デザインで宝石を輝かせた。
大宴会ホールは入念に装飾され、二四台の白縞瑪瑙テーブルが配置され、各テーブルには二四名の賓客がすわれた。国王の顧問官とその職員が全員同時に賓客になるのは、これがはじめての機会である。宴会の公表と共に、めいめいが隣人と徹底的に論じ、その人々の間でさまざまなうわさが広がったが、誰にもその目的がわからなかったので全員にとって不可解なままだった。
とうとう催しの夕べが来た。誰も気高い統治者の心中の悲しみを察する者はいず、すぐあとに来る激変を夢にも思わなかった。時間になり、賓客が集まり、みな謎だとささやいた。
宴会ホールの大きな青銅製スイングドアが荘厳に開くと、まるで不可視世界での巨大な交響曲の演奏のように超越音楽が一気に鳴りだし、崇拝する帝王の途方もないパワーを知る者さえ驚いた。帝国民はほとんど神のように見上げていたが、国王がたえず注いだ知恵や援助への愛と称賛とはそれほど絶大だったのである。
凱旋音楽がやむと国王は子供たちを連れて入場した。少女は、この世のものとは思えないほどかわいらしい。現代世界のいかなる生地とも異なる柔らかい金地のガウンを着ている。からだのひとつひとつの動きと共に光点がきらきら輝くため、オーバードレープはダイヤモンドでおおわれているように見えた。肩にたれる金髪は二個のエメラルドの留め具でまとめられ、額にはダイヤモンドのいくつかついた白色合金の一重バンド。真ん中には一個の大きなダイヤモンドに見えるものがあるが、実際一個の「光」の焦点となる強力な凝縮物であり、父がそこに維持していた。
国王は、そんな超越的パワーをゆだねられた全帝国唯一の人物だった。王家は決してこの「光」の宝石をあの夜まで世間との接触で用いなかった。このパワーのそんな使用は、偉大なる神我の私的崇拝でのみ許され、その「至高なる」存在を王家はたえず強烈に認識していたのである。
統治者と二人の王子は、からだにぴったりの、王女と同じ柔らかい金地の衣服を着ていた。この織物は革と同じくらいしなやかだったが、メタリックゴールド製であり、宝石でできた偉大な太陽のような胸当てがついていた。やはり宝石のついた同じ材料のサンダルをはき、それぞれの額にすばらしい「光」の宝石が載っていた。
国王の合図と共に、集まった賓客は着席。堂々とした力強い声で、あの「無限の至高神」への心の底からの祈りが、どっと国王の口をついて出てきた。
「おー御身、力強き遍在する起源、宇宙を統べる御身、各人の心の炎よ。われらは、万物にある御身自身の生命と光と愛ゆえに御身に愛と賛美と感謝を捧げる。われらは御身をあがめ、御身のみに目を向ける。可視と不可視の、進化し、また進化しない万物に宿る『存在』、こんこんと生命流のわき出る御身、自身を永遠に森羅万象に注ぐ者、すべてに宿る唯一の自己よ。
危険に対してこのわが民の目を覚まさせるよう、かつてないほどわが心は御身に呼びかける。近ごろ御身への無関心が毒気のようにしだいに広がり、霊を眠らせ、『御身の輝く存在』をしめ出すベールをかけるがゆえに。
民が外部の自我の不純物と雲を消滅させ、焼きつくす体験をせねばならないなら、そのときは支援し、ついに永遠の完全さのうちに民を生み出したまえ。われは御身に呼びかける。御身、宇宙創造主、御身、全能なる至高神よ」
国王は着席し、全員が暗黙の期待のうちに待った。やがて各人の給仕がひとりずつ前に現れ、次々と食事がふるまわれた。まるで見えない手によって、宝石で飾られたすばらしい水晶皿に食事が現れ、食べ終わったとたん消え、次の品がすぐに用意された。ついに帝国でかつて知られた最も手のこんだ宴会が終了した。まるでかたずをのんで、何かとても異常な出来事を予期するかのように全員が再び沈黙した。
国王は起立し、しばらく静かに待った。すぐに水晶ゴブレットが各賓客の右手に現れた。ゴブレットには純粋な電子エキスの凝縮物がなみなみとついであり、飲む者は全員どれだけ時代を下って生の流れを継続しても、どれだけいろいろな体験をしても「内なる神我」を決して完全には忘れられない。この霊の保護は内なる神や国王、帝国への信頼と忠誠のほうびとして宴会で与えられた。顧問官や出席者は帝国のためにたえず心から仕えてきて、それゆえ霊の保護が幾世紀を通じて与えられたのである。
めいめいがゴブレットをかかげ、「内なる神」、おのれの「生ける至高我の炎」のために乾杯した。宴会の一連の出来事は、今日のラジオに似た装置を通して全帝国民に放送された。大皿ほど大きくないが、地上のどの場所でも実況受信できるほど強力な装置である。
各人の神我への挨拶後、全員が微動だにせず、空気そのものが完全に静止するように見えた。すぐに驚異の「存在」が国王の前でゆっくり可視化した。
「偉大な沈黙」から出現した「宇宙マスター」である。うわさを幾世紀間、聞いたことはあったが、その可視の「存在」を誰もかつて見たことがなかった。びっくりして、そのひとりを認めるにつれ、畏怖と驚きのざわめきが集まった賓客に起こった。右手を上げて、それらの出席者と帝国内の全住人に話しかけた。
「おお地球の子、大きな危機を迎えて私はあなたたちにひどく重大な警告を与えます。あなたたちを飲みこみつつある感覚の誘惑から目を覚ましなさい。遅すぎる前に昏睡から目覚めなさい。このわが『光の兄弟』は引退し、あなたたちの選んだ体験をさせなければなりません。その体験にそそのかされて、ゆっくりと数多くの思わぬ危険に陥りつつあります。外部の自我の野放しの無知と感情に自分自身を開放してしまいました。
あなたたちの『起源』、至高者、力ある者、光り輝く者、威厳ある者、万物の果てしない原因、すべての世界を創造維持する神に、あなたたちはほとんど注意を向けず、まして崇拝しません。あなたたちを存在させるまさにその生命ゆえに『栄光の偉大な存在』『愛の主』に感謝しません。
ああ、それほど惜しみなく自然の注ぐ恵み、あなたたち自身の賢明で利他的な統治者からこの公正な国を通ってあなたたちに届く豊かさに、なぜ感謝さえしないのですか。親切行為には感謝しあいますが、それはあまりにもはかない感覚と形態の物事であり、移り変わり、それからもはや存在しないのです。それなのになぜ、ああ、なぜあらゆる生命、愛、知性、パワーの『起源』を忘れるのですか。
民よ、ああ民よ、愛に対する、刻々、毎時、毎日、毎年味わう壮大な体験に対する生命への感謝はどこにあるのですか。これをすべてあなたたち自身のものと言いますが、それは生命、光、愛、あらゆるよいものの唯一の偉大な起源、神、至高者、崇拝すべき者、遍在する絶対者につねに属しましたし、今もいつまでも属します。
この遍在する絶対者は純粋、完全、清浄な生命エネルギーをあなたたちにたえず降り注ぎますが、あなたたち自身の誤用によってあまりにも破壊的な痛々しい状況を創造してしまったため、もう耐えられず、絶望し苦しみもだえるか反抗するかのどちらかの態度をとり、苦しみと不幸を取り去ってくれるよう神に求めます。あの絶えまない完全さを至高の愛のうちに与えつづけるというのに。これが、その見返りに対する『あらゆるよいものの贈り主』への供物なのです。『唯一の偉大な自己』がすべてを与える唯一の条件は、その正しい利用であり、それは無限の喜びと調和と活動で他の創造物に恵みを与えるためです。
深い苦しみと不幸の中であなたたちが再び起源に目を向けるとき、悪事をなくしてくれるよう絶望のあまり叫ぶか、反抗的なら、いわゆる不正と間違った状況があなたたちとその世界に存在するのを許すよう、生命とあらゆるよいものの起源とを非難するかのどちらかです。
生命に対して不正を働くのはあなたたち、取るに足らない個我なのです。不当なのは、地上の不幸と苦しみを創造するのはあなたたちなのです。なぜなら人類のみが好きなように、ひとりひとり自分自身の思考と感情によって創造する自由意志を持つからです。地上に表現する不調和や不幸、ゆがみをあえて存在させるのは人類だけです。これは創造と、永遠なる歌の偉大な宇宙メロディーにいつまでも揺れ動く完全さとに対する障害です。
他のものはすべて『愛、生命、調和、光の法』に従って生き、行動するので、人類だけが天球の音楽に不調和をもたらす罪を犯すのです。他のものはすべて、調和のとれた統一体、『すべてを愛する無限の絶対者のからだ』に溶けこみます。
『生命と光』の他のすべての領域は、まったくの完全さに支えられる基本原理に従って動き、創造します。あの原理は愛です。あなたたちの統治者のような『偉大な利他的な者たち』、存在のまさにその基調が愛である昇天マスターの大軍がいなければ、人類と人類の存在するまさにその惑星は、とうの昔に滅びていたでしょう。
自然の状況で神は人間の子を創造し、『愛すること』という神命に従いながら表現するのを期待しましたが、愛と光の壮大な超越的活動は自然の状況なのです。宇宙のどこにも超自然的状況のようなものはありません。超越的で美しい完全なものはすべて自然であり、『愛の法』に従っています。それ以外のものはどれも自然以下です。昇天マスター軍の日常体験は完全であり、神の子は完璧につねに生きることになっていました。地球の子は、『黄金時代』である前周期でこの完全さを一度も表現しませんでした。
あの先文明、あの太古の完全さはあなたたちが夢想するより、信じるより古いのです。当時の全人類は、昇天マスターと似たような超越状態で生きていましたが、ひどく惨めな状態が起こり、あのとき以来時代を下ってずっと続きました。なぜなら生活指針となるべき設計図のような愛、『起源』から目をそむける方を選んだからです。
地球の子が愛から目をそむけるとき、わざと意識的に混沌の体験を選んでいるのです。愛なしに存在しようとする者は、みな宇宙のどこにも長くは生き延びられません。そんな努力は必ず失敗、不幸、苦しみ、崩壊、破滅をもたらします。愛と協力してもう一度はじめから使われ、このように新しい形態を生みだすよう、この者はまさにその状況で混沌、無形に戻らねばなりません。
これは『個人的生命の法』だけでなく『宇宙生命の法』でもあります。この法は永遠不変で変更できませんが、慈悲深いです。なぜなら神が愛を注ぐものがあり、それゆえ活動して表現するため形態の創造があるからです。これは他のすべてのものを生み出す『力ある絶対者の法』です。『永遠の命令』であり、あの完全無欠の広大さと光輝は言葉で言い表せません。
人間の描写をはるかに超越する、この現実の真の永続する完全な生命状態と体験がなければ、生は宇宙中に永久に揺れ動く巨大な生命活動のパロディーにすぎなかったでしょう。それらの調和的、超越的な高等領域、個人と宇宙の活動と意識の世界があり、そこでは創造が喜び、愛、自由、完全さのうちに断続的に続きます。
この高等領域は現実、リアル、実在であり、あなたたちの周囲の物質界にある建物や肉体よりもはるかに永続します。この生命領域は愛にそれほど満ちた物質で創造されるので、不調和、不完全、崩壊の特質や活動が、そこに押しかけることも記録されることも決してありえないのです。その生命領域は愛にもとづくからですし、そんな表現の完全さは永遠に維持され、いつまでも活動拡大し、いつまでも森羅万象の喜びを授けます。
あなたたちは自分自身に苦悩をもたらし、そのため感覚の無知、人間的欲望、外部の自我の願望にとらわれ何度も生まれ変わるようになるのです。人類の感じやすい本性にあるこういう欲望は、本質的には、思考と感情によって何らかの特質を受けた蓄積エネルギーにすぎません。特定の限られた形に間違って修正されたこのエネルギーは、人間らしい表現によって勢いを得、習癖になります。習癖とは、少しの間ひとつの目的に焦点を合わせて特別に修正されたエネルギーにすぎません。
前世の感覚的欲望は来世の推進力と習癖になり、あなたたちを奴隷にしつづけて、不調和と欠乏と貧困の戦車の車輪に縛りつけます。そのため自らつくり出した迷路のように複雑な人間的な問題や体験を次々と通って、『絶対者の法』『愛』を学び、それに従わざるをえなくなります。
あなたたち自身の間違った創造物は、進んで生命を理解し、生命の唯一の法である愛に従うまで、どんどん厳しく訓練します。『愛の法』を実践できるようになるまで、不調和につぐ不調和を体験しながら次々と生をめぐります。
これは誰も逃れることのできない強制活動であり、外部の自我が不幸や苦しみの理由を尋ね、『愛の法』に従うことによってはじめて苦しみの体験から逃れられることを理解するまで続きます。まず感情における平静や安らぎや穏やかさとして、そのように従いはじめます。感情中枢のある心臓は、『内なる感情』を介して外界と接触せねばなりません。
愛はマインド活動ではなく、マインドを創造する「純粋な輝く本質」です。『偉大な神の炎』から生じたこの本質は物質に流れこみ、形態と作用において完全なものとしてたえず流れ出ます。愛は明らかに完全です。愛は無条件で平和、喜び、万物へのあふれんばかりのそういう感情だけを表現できます。愛は永遠に自己創造し、『至高者』の心臓の鼓動でありつづけるので、それ自身のために何も求めません。愛はすべてを所持し、完全プランを全部実行に移すことだけに関心を持ちます。そのように愛はそれ自体の絶えまない注ぎ出しです。愛は今まで与えられてきたものを考慮に入れず、その喜びを受け取り、愛そのものの断続的な流出によってバランスを保ちます。この完全さは愛の中にあり、永遠に流れ出て、愛以外何も記録できないからです。
『愛』はそれだけで調和の基礎であり、あらゆる生命エネルギーを正しく使用することです。人間味のある体験で、これは残りの創造物に個人の平和と調和のすべてを惜しみなくどんどん与える願望に成長します。
民よ、おお民よ、永久に幾時代を通じて十分な愛のみが、かつて知り暮らした天国にあなたたちを戻せるのです。愛によってすべてを与える豊かな『偉大な光』を、ここでもう一度喜んで受け入れるでしょう。
ひとりの王子が来訪し、国境に接近します。この都市に入り、王女を捜すでしょう。あなたたちはこの王子の支配下におさまりますが、自分たちの間違いを認めても無駄でしょう。何をしても役立ちません。王家は、神のパワーと権威を持つ者たちの保護と世話のもとに引き寄せられ、人間の願望は決して彼らに打ち勝つことはできないからです。この者たちは光の偉大な昇天マスターであり、この国の真上にあるエーテル黄金都市の出身です。ここであなたたちの統治者とその最愛の子供たちは、一周期の間暮らすことになります」宇宙マスターは国王のほうを振り向いて、こう話しかけた。
「祝福します、わが高貴な忍耐強い兄弟。民への奉仕はずっと愛に満ち、利他的でした。至高なる絶対者、森羅万象の起源へのあなたの献身は深く永遠です。エーテル黄金都市があなたと子供たちを待ち、喜んで歓迎します。
この民が『愛の法』に従うことで自らを救うまで、そこの住人から永遠に流れ出ている光線を通して奉仕しながら、黄金都市の輝きの中であなたたちは暮らすのです。
この『光の帝国』は、あなたたちがそれほど深く愛してきた国の真上に存在します。自発光するエーテル物質からできていて、物理的な首都より高い所にあります。『光』は破壊できず、黄金都市は『光』でできているのでリアル、実にリアルで、地上のいかなる都市よりもはるかに永続します。不調和な思考も、いかなるたぐいの混乱状態も、そこに決して入れません。
あなたと子供たちを『光の都市』に連れて行くため、私は一週間後戻ります。そこで私たちは人類の進歩を見守り、自分を鍛えて準備を整える者全員を『光』に引き寄せます。無敵の電子力ベルトが都市を取り囲んでいて、招かれていないものは何も通れません」
話し終えると宇宙マスターは王家や賓客、帝国を祝福し、しばしの沈黙後マスターの光とその中のからだの輪郭は、だんだんぼやけていき、ついに跡かたもなく消えた。
ざわめきが大宴会ホールじゅうに起こり、みなが国王の方を見ると、国王は恭しい沈黙のうちに会釈した。それからゆっくりと立ち上がって、賓客に別れの挨拶をした。
一週間後「沈黙から出て来た兄弟」が戻り、国王と子供たちを自身の輝くオーラで包み、「光のエーテル黄金都市」へ引きあげた。
翌日、来訪客の王子が到着して帝国のありさまを知り、まだ国民がうろたえていることに気づいた。統治者になろうとすぐに画策し、抵抗もなくうまくいった。二千年後あの帝国のほとんどが不毛の地となってしまい、川は干上がり、荒廃がいたるところに広がった。人類の不調和と利己主義および葉枯れ病の全結果が、自然の植物生命の成長に悪影響をおよぼす。この王国はアフリカの全幅を東に拡大し、ついにヒマラヤ山脈まで達した。
それから大洪水が起こり、全土が沈んだ。あの激変で今日のサハラ砂漠の地に内陸海ができた。約一万二千年前に起こったもうひとつの地球の変化で、この内陸海が干上がり、後にその一部が今日のサハラ砂漠になった。今日あるようなナイル川は、あの久しく忘れられた時代の美しい川にそっくりである。
このように、あの太古の光景の観察が終わった。私は自分の感覚をほとんど信じられなかった。過去の体験を復活させる方法にそれほどびっくりしたのである。三次元立体映像や太古の帝国民の演じる活動。
そんな活動にひどく驚き、不慣れなのに気づいたサンジェルマンは、あの時代とその民の物理的記録のところに連れて行き、彼の作りあげた幻ではない物理的証拠を提示すると約束してくれた。
私たちのすわっている丸太の周囲をすばやく見回すと、パンサーが近くで寝そべって熟睡しているのが見えた。感覚界の物事に対して、本来備わっている自らの支配権をふるうために高等法則を適用するが、サンジェルマンはそのことに関する重要面をいくつも再び説明しはじめた。そして人類の歳月の数え方によるとあまりにも年を取ったからだで、どうやってそんな若さと完全さを表現できるのかという話になった。
「永遠の若さは―彼は説明した―人体に宿っている神の炎であり、父自らの創造物への贈り物なのです。不調和を締め出せるほど十分強い者だけが、心身両方の若さと美しさをいつまでも保つことができ、それをする者は誰でも完全さを表現維持できますし、表現維持するでしょう。
平和と愛と光が人間の思考と感情の中にないところで、どれだけ肉体的努力をしようとも、外部の自我はとても若さと美しさを表現しつづけることはできません。この若さと美しさは、各人の神我である神の炎の中に永遠に存在します。いかなる不調和が思考と感情をさっと通過するのを外部の自我が許しても、その瞬間、肉体の肉に深く刻まれます。永遠の若さと美しさは、各人に宿る神の生命の炎の中に自ら創造したものであり、いつまでも自立自存します。これは自らの完全さを形態の世界に表現し、いつまでもそれを維持するための神のプランです。
若さと美しさと完全さは、神の原理がその創造物に断続的に注いでいる愛の属性です。つねに拡大するあの完全な創造活動を維持増進するためのパワーと手段は、各人の中に置いてあります。
達成するパワーとは、この世に誕生するひとりひとりの神我のエネルギーであり、君の心身と世界において一瞬一瞬つねに活動しています。この強力なエネルギーが全員に流れていない瞬間はありません。望めば君自身の自由意志の命令で意識的に思考と感情を方向づけることにより、神我のエネルギーを修正する特権が与えられています。
思考とは振動を創造できる宇宙で唯一のものであり、君の人生と世界に表現したいどんな願望によっても、つねに流れるこのエネルギーを振動で修正します。この知性ある無限の輻射エネルギーは、休みなく君の神経系を流れていて、血管をめぐる血流に宿る永遠の生命と活力なのです。それは自由意志によって意識的に導くよう父、生命原理である神が君に与える全能遍在の知性活動です。何でも建設的に使う真の知性は神の原理、生命の炎だけから生じ、単なる知力活動ではありません。真の知性は知恵すなわち神の知識であり、これは間違った考えをしませんし、できないのです。間違った考えは、外界が知力に刻む印象だけから生じます。自分自身の神の炎の中から生じる自分自身の考えと、他人の知力の提案や思いつき、および見かけのみを考慮する感覚の形跡とを正しく区別するなら、経験界で不調和な活動と状況をすべて避けることができるでしょう。
自分自身の中から生じる光、神の炎は完全さの標準、すなわち五感を通して到達するあらゆる思考と感情の検査基準です。あの質と完全さは神の炎の中にのみ宿るので、『完全無欠の起源』に行かないかぎり、誰も感情と思考を完全さで修正しておくことはできません。
これが自分自身の中にある神の光の瞑想、および神の光との交流に必要なものです。純粋な生命の本質は、永遠の若さと美をからだに与えて保つばかりでなく、神我と外部の自我つまり個我との完全な均衡を維持できるようにするでしょう。事実上この純粋な生命エネルギーは、神の起源、神我との関係をつづけるため外部の自我の用いるパワーです。知力すなわち外部のマインド活動、感覚意識が不完全や不調和、未完成を受け入れる、つまり自分自身を遍在する唯一の生命の『存在』から離れた創造物と考えるとき以外は、実際この二つは一体なのです。もし感覚意識が自分自身を神、完全から離れたものと考えるなら、そのときあの状況が感覚意識に確立されます。なぜなら感覚意識が考えて変えようとする世界に、世界は戻るからです。
不完全とか神から離れているという考えが注意を、したがってマインドを占めるのを許すとき、それに対応する状況がからだと世界に表現しだします。このため自分自身を起源から離れた実体だと感じます。自分自身が神から離れていると考えた瞬間、自分の生命や知性、パワーははじめと終わりがあると考えます。
生命はいつもありましたし、今もいつまでもあるでしょう。誰も実際に生命を破壊できません。メンタル界(精神界)と物質界でのさまざまな活動を通して、形態は崩壊か一時的に破壊できますが、個人の意識は不滅であり、創造におけるあらゆるよい物事を『知り、贈り、行う者』として内なる神の生命を認めるとき、表現のいたるところで全物質を支配できます。
あらゆるよいものの唯一の起源、神がいると私が言うとき、君に本当のことを言うのです。外部の自我が何をしていようと、一日二、三回ではなく一日中たえず外部のマインド活動でこの事実を意識的に認識し、受け入れ、これを継続すれば、誰もが神の完全な自由を表現し、人事全般を支配することができるでしょう。
神から離れた生き物だと信じて、あまりにも長い年月生きてきたので、たいていの人々にとって今言ったことは難しく思えます。その一方で、考えるすべての物事に毎日たえず神の生命、神のエネルギー、神の物質を使い、神の活動があるのに、そのことに気づかないのです。けれども個我を通して最高パワーを解き放つには、外部のマインド活動においてこの事実を意識的に認め、建設的に方向づけることが求められます。
神のエネルギーの認識、意識的管理、建設的使用をつねに自分の自我の中で継続することが、いっさいの自然力の意識的コントロールを含めて完全さ、地上のあらゆる物事の征服支配への道です。君にずっと授けている教えを守るなら、あらゆる間違った信念をすっかり消し去るでしょう。達成する速さは、いかに連続的に、根気強く、深く神我を感じ、それと結びつくかによります。
支配力や達人技の獲得において、すべての力の意識的コントロールと物質操作は ①君個人の神我の認識 ②あらゆる環境下での感情の完全な穏やかさ ③パワー悪用のあらゆる誘惑の克服にかかっています。支配力を獲得するつもりなら、意識的意志の命令による感情の穏やかさは不可欠であり、達人にはそれが無条件に求められます。
これは、どんなときでも自我の中における不調和の抑圧を意味するものではなく、学徒の心身の環境がいかなるものであれ感情を落ち着かせ、調和させるということです。ほとんどの西洋人の気質は過敏、感情的、衝動的なため、そんなコントロールは西洋人には簡単なことではありません。この特質は巨大パワーのエネルギーです。コントロールして取っておき、何か建設的なことを達成するため意識的方向づけによってのみ解放せねばなりません。エネルギー浪費をチェックして完全管理するまで永久に進歩できませんし、進歩しないでしょう。
ある段階に達するなら、まだ達成途中なのに、どこでアファメーション(肯定的な宣言)の使用を超越するのか学徒はよく質問します。本当にアファメーションを用いるとき、どんなアファメーションでも、それが真実だと十分認めることになります。アファメーションの使用は、外部マインドの注意をそれほどしっかりと真実に集中させることにすぎず、感情で真実だと十分認めるからです。感情は解放された実在の神のエネルギーであり、アファメーションした真実を表現するためです。
アファメーションを続けて用いると、どんなアファメーションでも真実をそれほど深く感じる段階にいたり、もはやアファメーションとして意識しません。何かを表現したいと望むので、人はアファメーションやマントラや祈りを用います。正しい願望は祈りの最も深い形態です。したがってアファメーションの使用により学徒の外部の自我はそれが真実だと完全に受け入れるようになり、感情を起こし、それによって物事が表現します。集中によって、話した言葉は即座に活動を引き起こしはじめるので、このように深く受け入れることで表現するのです」
受けたすべての恩に対するサンジェルマンへの感謝の念は、深すぎて言葉で言いつくせなかった。書物を読むように私の思考と感情を読んだので二人とも意気投合して、しばらくの間黙ってすわっていた。西天の見事な夕焼けを見るよう、物思いにふける私を目覚めさせた。
山に一晩中いて、日の出を楽しんで朝帰りしたかった。私がその願いを感じたとたん足もとに見たこともない美しい寝袋が置かれていた。手を下にのばして珍しいその生地を調べると、驚いたことに燃えるように温かかった。見上げるとサンジェルマンはほほえんで、ハチミツの粘度ぐらいの金色の飲料でいっぱいになったクリスタルカップをさし出した。彼の最もわずかな願いに従い、飲んだとたん輝く白熱光がからだを通りすぎた。飲み終えるとカップは手から消えた。
「ああ、どうしてこのすばらしい創造物を取っておくことができなかったのですか」驚いて尋ねた。「我慢だよ、君―彼は答えた―ひとつずつ君の願望はかなっているではありませんか。寝袋は夜明けまであり、友のパンサーが夜間守ってくれるでしょう」
軽く会釈をし、まことに礼儀正しく笑みを浮かべて、サンジェルマンのからだは徐々にぼやけていき、それから完全に消えた。すばらしい寝袋にくるまって横になり、すぐにぐっすり眠った。バラ色の夜明けが東の地平線を染めると同時に目覚め、最初の思いは満喫した寝袋に関するものだった。あの思いと共に寝袋は消滅して、源である宇宙構成要素に戻った。
私のところにやって来たパンサーと共に、きびすを返して帰途についた。しばらく歩くと人声が耳にとどいた。獣は空気を吸いこむや突然、私のまん前で止まり、見上げた。私は手を下に伸ばし、なでながら言った。
「もう行っていいよ」獣は飛びはねて、道の右のこんもりした森林区域に入って行った。これと言って何事もなく歩きつづけ、適当な言葉を見つけるのが困難な精神状態で、とうとう正午まもなく宿にたどり着いた。
考え―熟慮し―消化し―まったく新しい一連の考えに順応したかった。四八時間以内に起こったばかりの異常だが実にリアルな体験のため、自分の全世界を再整理しつつあった。天にも昇る心持ちで、まるでもうひとつの宇宙が私の周囲に現れたように思えた。
なるほど確かに外部には、いつもと同じ平凡な古い世界があったが、それは何だったのか。こういうすばらしい体験、この絶大なパワー、それほどまったく知らずにいたあらゆる表現に対する自由と支配とのこの驚くべき啓示が、その中にずっとあった。
生まれてこのかたこういう見せかけの奇跡に囲まれてきたのに、まるでそんなことは創造に存在しないかのように、過去数十年間気づかなかったのである。私は、かつてこれまでの生涯で熟考してきたよりも、ますます深く考えに考えた。
夕食時になっても腹は減っていなかった。しかし、まず手始めにミルクを一杯注文。ミルクが出てきて、すぐ一口飲んだとたん―私の驚きを想像してほしい―サンジェルマンが最初にくれたクリーム状飲料になっているではないか。
食事を終えて帰宅し、就寝前の入浴準備中いきなりおなじみの電気信号が頭から足まで走った。無意識に手を伸ばした二、三秒後、水晶のような平たい小さな固形物質が一個てのひらに出現した。浴槽に入れることが何となくわかり、お湯に落とすとすぐに生きているかのように泡立った。
お湯に入ると、うずうずするような感覚が、からだ中のあらゆる細胞にしみわたった。強力な電流で充電されるのを感じ、生命全体を晴れ晴れさせて強化してくれたのである。入浴が終わって横になり、まもなく夢を見ない眠りに陥った。
第3章
ロイヤルティートン
これと言った出来事もなく四日が経過し、最近の体験のもっと深い意味を十分はっきり理解しようとした。五日目の夕方ちょうど暗くなりつつあったとき、部屋の窓をコツコツたたく音がする。外を見ると、口にとても小さなカードをくわえた雪のように白いハトが窓辺にいた。
行って窓を開けるとハトは中に歩いてきて、静かに待っていた。カードを取って、メッセージを読んだ。前と同じ美しい書体、ただし今回は白いカードに金色のインクである。こう書いてあった。
「朝七時、待ち合わせ場所にいなさい。サンジェルマン」
カードを取ったとたんハトは肩に飛び移り、愛のメッセージを伝えているかのように頭を私の顔にこすりつけ、再び窓に飛んでいき、矢のように行ってしまった。注意深くカードをしまい、なくならないことを祈ったが、翌朝ハイキング出発前に捜したところ消え失せていた。何度も見て、永久保存できることを祈ったので、最初のメッセージの書いてあったゴールドカードは三日なくならなかった。宇宙供給源に戻ってしまったのがわかると心は沈み、ひどくがっかりした。
一六キロのハイキングをして朝七時そこにいるためには、真夜中過ぎに出発せねばならない。早起きして三時に出て、早歩きでちょうど夜明けに森林地帯に到着。それほど遠くに行かないところで悲しげなほえ声が聞こえてきた。それに気づく前に同じトーンで答えたが、私の応答はあまりにも無意識だった。森林を通って何かが突進してくる。わが友パンサーが喜びを全身で表し、飛びかかってきた。パンサーをなでて、一緒に待ち合わせ場所に向かった。
七時きっかりにサンジェルマンは、両手を広げて挨拶しながら虚空から出てきた。今回は透明な発泡性飲料でいっぱいのクリスタルカップを再び渡してくれた。飲むと、かつて物理的に味わったことのないような味で、ほとんどアイス・グレープフルーツジュースのようだったが、発泡性があり、泡立っている。飲んだ瞬間、稲光のような感覚がからだを駆けめぐり、発泡感がすべての血管に伝わった。
サンジェルマンがそれからパンサーに小さなブラウンケーキを一個与えたところ、パクッとひと飲み。たちまち体毛が総毛立ったので、ひとこと言った。
「君の友は二度と鹿を殺めないでしょう。
今日の行き先に肉体を運んでいけるだけの内的能力をまだ引き出していないので、次の体験と教育のため、ここ山腹に肉体を置いていく必要があるでしょう。パンサーは君のために護衛し、特別の用心のため見えなくするマントでまわりを包みます。ロイヤルティートンに行きましょう。来なさい」
自発光する金地の豪華衣装をまとった、より微細なからだで、直ちに外に立っていた。
「まとっている布地を注意深く観察しなさい―彼はつづけた―着ている衣服の構成物質は、ある並はずれた独特の質とパワーを持ち、そのひとつは着用者が物体を持ちあげて運べるというものです。衣服そのものは純粋な電子エネルギーをおび、肉体を通して使う力と同じように物体を動かすのに使えます。これは、光の大マスターたちがこの惑星ではじめて使う許可を与えた現象活動です」
読者のためにはっきりと明言したいが、この体験中、四次元で機能するからだをまとっている間、誰でも自分の肉体でできるのと同じように、そのからだは物質界で固体を感じ、それに手を触れる能力を与えてくれた。今回使ったからだは、ときどきアストラル体とも呼ばれるものではなかった。
合衆国で最も美しい景勝地帯のひとつの上に見張りのようにそびえている、雄大な山の頂にすぐに到着した。広大な森林が眼下に広がり、未採掘の鉱物資源の宝庫の眠る大山脈が、見わたすかぎり続いている。
巨人が戦いで投げあったかのように、大量の石がめちゃくちゃに散らばっている地点に行くと、サンジェルマンは一個の大きな丸石に触れた。直ちに巨塊がもとの位置からたぶん約一二〇センチ外に傾き、ついて来るようにと身ぶりで合図した。中に入ると驚いたことに前方に大きな青銅扉がある。
「これはアトランティス沈没前、一万二千年以上前からずっとここにありました」と説明した。
サンジェルマンは前へ進み、扉を数箇所押した。重さ数トンの青銅の大きな塊は弧を描いてゆっくり開いて、広々とした部屋に通じ、そこから堅固な岩をカットした階段が下につづく。およそ六〇メートル降りて、もうひとつの円形区域に入った。サンジェルマンは部屋を横切って、階段の向こう側の扉のところに行き、右手を押し当てた。開くと私たちは管状エレベーター入口前に立っていた。エレベーター内部はつや消し仕上げした銀のように見え、私の考えに答えて、こう言った。
「そうですが、しかし鋼鉄よりも堅く、丈夫で不滅です」管状エレベーターにピッタリの同じ金属の平らな円盤が、その中を床の高さまで上昇した。乗降円盤はマスターが完全に制御、操作した。彼はその上に立ち、あとに続く。扉が閉まり、下降しだす。急速移動ではなかったが遠くに降りた。乗降円盤は、まったく異なるデザインのもうひとつの青銅扉のところで止まった。
「山の中心部に向かって六〇〇メートル下降しました」管状エレベーターから出るとき解説してくれた。
私たちの立っている場所は奇妙なデザインと配置をしている。東から西へは楕円形をなし、その北東と北西のすみは、ある角度を成してカットされている。ここは外廷つまりレセプションルームだった。管状エレベーターの重い青銅扉が、この北東壁で開いた。
北側には、そっくりの大きな青銅扉が他に二つあり、広大な謁見の間の一部となる。北西壁には、私たちの通った扉のような第四扉がさらにもうひとつあった。向かい側、長く伸びた完全無傷の南壁一面には一枚の巨大なタペストリーが掛かっていた。
生地はきわめて珍しいが、織り方は粗いのに、糸や繊維はラクダの毛と同じ柔らかさ。地はほのかなクリーム色、これを背景にして堂々たる威厳とパワーにみちた神々を表す、等身大の二人の人物が描かれている。右側は男神、左側は女神。両神とも立って、まるで神命に従うよう宇宙力を統御している最中である。
男神像は、濃いサファイアブルーの豪華生地のゆるやかに垂れるローブを着ていて、重厚な金刺しゅうの縞入りである。明らかに礼服あるいは権威の象徴。外のローブの下には、見たところ金属のような金地のチュニックを着ている。
ルビー、ダイヤモンド、サファイア、エメラルドの日輪型ブローチが胸を飾る。腰には宝石で飾られたベルトが巻かれ、そこから約三〇センチの長さのパネルが一枚ぶら下がり、そこにも同種の宝石が重々しくちりばめてある。チュニックは膝に達し、下端には宝石と同色の重厚な絹刺しゅうをした幅約一〇センチのバンドの飾りがある。
衣服がすべて自発光している印象を全効果から受ける。足は、ほとんど膝に届くサンダルのような金革ブーツをはいているが、大変派手で、サファイアブルーのレースがしてある。金髪をたばねる幅約四センチの金バンドが額に巻いてあり、ウェーブのある金髪は肩下約一五センチまで垂れさがる。
顔色は大変色白で、柔らかいピンク色、目は濃青紫色。左手の指は心臓の上にそっと置き、上げた右手はパワーと権威のまばゆい水晶の杖を握る。杖の下端はとがり、てっぺんには直径約八センチの球がのり、きらめく白色光線を発する。
描かれた人物は巨大パワーをふるっている最中であり、強力な宇宙力を操る者であることが間違いなくわかる。容姿全体からあふれるばかりの若さが頭に浮かぶが、年の功の知恵はいにしえの目を通して物語る。
女神像の権威あるローブは濃紫色、伴侶のローブと同様に金刺しゅうの縞入りである。アンダードレスは、ちらちら光る柔らかい金地で、ほとんど床に垂れる。衣服を表現するためタペストリーに使われた糸は、オリジナル衣料の生地を実際に構成した糸と同一のものだったに違いない。この女神は宝石で飾られたベルトを巻き、男神像の宝石と同種のものをちりばめた、膝下約五センチまで達するパネルがベルトについている。
右のサンダルのつま先はドレスのふちの下にちょうど見えていて、金革製である。頭飾りは男神とまったく同じような、模様のない金バンドで、目は同じ青紫色だが、色あいがより薄く、金髪は膝に垂れている。
胸には金の鎖からつるされた大きな七芒星がかかっているが、それはたった一個のカットダイヤである。左手に直径約一五センチの水晶球を握り、男神像のように上げた右手には大変奇妙なデザインの笏がある。下部の約三分の二は金製で槍のように先がとがっていて、上部三分の一はさんさんと輝く水晶のような物質からできている。これが、てっぺんではゆり紋章に似たデザインになる。ゆり紋章との違いは、中間点がはるかに長く、四つの切子面でできた細長い先端に向かって先細になっている点である。
中心部の右の曲がった葉は美しいピンク、左の葉はディープサファイアブルー、しかし真ん中はクリスタルホワイトである。どれも透明で光り輝いている。二つの物質の間に境界線がないので、金と水晶のような部分はたがいに完全に混ざりあっている。笏は創造力の三つの活動を象徴する。
左手の水晶玉は、宇宙活動の未来のまだ表現していない完全さを示す。杖と笏は、特別に表現するため創造力を注いで、宇宙物質を引き寄せるのを意味する。タペストリーでさえ光り輝き、美しいのだから、実物はこうだったに違いないと私はただ自問できるだけだった。全概念を研究する間サンジェルマンは根気強く立って待っていたが、それほど私は作品全体のすばらしさに心を奪われたのである。
私たちが振り向くとき「この偉大な両神は、この隠れ家の創立者でした」とそうひとこと述べ、右の青銅扉を通ると、ある種の尊い公用のための大会議場だと直ちにわかる大部屋に入った。
全体の雰囲気は豪華で美しかった。私の目がとらえ感情が味わったものは言葉ではまったく伝わらない。周囲の豪華な目もくらむばかりの光景と輝きに慣れるのにしばらくかかった。
この部屋は少なくとも長さ六〇メートル、幅三〇メートル、天井の高さは約一五メートル。サンジェルマンの説明によると柔らかい白光は偉大な者たちが光、熱、パワーのため常用する遍在する力だそうで、その部屋全体に氾濫していた。約六メートルの側壁と部屋の向こう側の端は白縞瑪瑙でできていた。
この層が終わるところで建造者は、幅六〇センチ以上の天然のままの大金脈を切った。
両側壁の主要範囲は薄いブルー御影石だったが、私たちの入った端の近くで自然構造は極上のローズ御影石に変わった。壁面と天井と床は、どうやら驚くべき過程ですばらしく磨いてある。
側壁より約三メートル高いアーチ天井は、実に独特なデザインで象眼してあり、まん真ん中に少なくとも直径三・七メートルの金の円盤があった。もっぱらイエローダイヤモンドからなる七芒星が、円盤にぴったりおさまって頂点が円周に触れ、きらめいた。イエローダイヤモンドは、さんさんと輝く金色の光のびっしりとつまった塊である。
この中心太陽から、おのおの幅約三〇センチの二つの色輪が発し、星の周囲にはっきりした光帯を形成し、このうち内帯はローズピンク、外帯はどぎついスミレ色。この星の背景は、つや消し仕上げした金のように見え、星自体が、かすかに光る長い透明光線を発していた。
このデザインのまわりに、おのおの直径約六〇センチの小円盤が七個配置されたが、それは太陽系惑星と白光スペクトル内の七色光線を表す。各円盤の表面はビロードのように柔らかく、各色の中で最も純粋で、最も濃く、最も明るい色あいのみが使われた。
私が後に学んだように定刻に特別の目的のため、宇宙の偉大な存在たちはこの円盤を通して強大な力の流れを注ぐ。ここでは、光の昇天マスターとして知られる利他的な大覚者たちが力を受け取り、それを再び地球人類に放出する。この放射は、いっさいの動植物生命ばかりでなく、地球上のひとつひとつの人体内の七つの神経中枢にも影響する。天井全体の背景は、こうこうたる月夜のすみきった夜空の色だが、表面は大いに屈折していた。
大会議場の向こう側の端の真ん中、床上約一一メートルの壁自体に、少なくともさしわたし六〇センチの大きな目がひとつあった。これは「万物を見通す創造主の目」を表し、永遠に創造物を見守り、何ものも隠れることはできない。
途方もないパワーが、特別の結果を達成するため定刻にこの目を通して集中された。あのパワーが十分作用するのを見ることができるなら、私はどんな感じがするのだろうか。目を見つめながら、ただただ不思議に思うばかりだった。
東壁の向こう側の端からたぶん一二メートル、長さ約二一メートル、高さ九メートルにおよぶ、物質化した材料からなるパネルがあった。パネルは床上一・五メートル余りに掛けられ、深さ五センチ側壁に沈み、ふち全体を取り囲むように凹面をなしていた。
その構成物質は濃藍色の美しいビロードのように見えるが、いかなるたぐいの生地でもなかった。それと比較しうる最も近い物質的材料は鉱材だろう。この物質は人類の外界のどこにも用いられていないが、偉大な光の昇天マスターのみが特別な目的のためにときどき物質化できるし、物質化する。
サンジェルマンの説明によると、パネルは物質化されたものであり、万能鏡としてイニシエイトと高度進化した上級団員の教育に役立つという。この偉大な者たちは休みなく働き、地球人類が完全な人間になり、イエス・キリストと同じ偉大な完全さと支配権を外面生活に表現できるよう援助する。
この完全な存在の外部団体はない。人間的欠点を自ら取り除き、神聖な内なる自己を十分あがめることを通じて、この完全さを生き、表現する。そうすることによってはじめて、この高い達成レベルで働く者の仲間に加わることができる。
「このパネルには―サンジェルマンは言った―あの教育者が学徒の目に見えるようにしたい地球の光景、エーテル映像つまりアカシック・レコード、金星その他の場所で起こる活動が映し出されます。そんな光景は過去と現在の映像だけでなく、遠い未来の活動も映し出すことができるのです。後で見せてあげましょう」
私たちは右の最後の扉を通って、部屋に入った。大きさは長さ約二四メートル、幅一二メートル、高さ六メートル、さっきいた大ホールと似たアーチ天井だった。
「この部屋の内面全体は、つや消し仕上げした金からできていて、壁の上に浮き出たように見える紫と緑の縞模様は物質化したものです」彼はそう話をつづけた。
右側壁の向こう側の端には、つや消し仕上げした銀のように見える白色合金の棚があり、床から天井まで達していた。ローラーベアリングの上に載っているこの棚には、同じ金属からできた容器がいくつかあった。内容は、容器の蓋の浮き出し模様の象形文字で分類され、各容器内の四つの心棒に記録されている。
心棒は少なくとも長さ二五センチあり、各心棒のまわりに幅約二〇センチのプレス加工した金合金のリボンが巻きついていた。この金合金は金を頑丈、柔軟にするが、普通の一枚の便箋ほど厚くはない。心棒に巻きついた金のリボンは長さ二メートルから一五メートルまでいろいろあり、各リボンの上に文字が記され、まるで尖筆のようなもので金に彫られたようだった。この文字は完璧に彫られ、全体が手書きのように見えるほどだった。
「この記録で君への約束を果たしました」側壁の向こう側の端にある特定区画を指さしながらサンジェルマンは言った。「君が私の息子で、私があの古代帝国の統治者だった当時、今日のサハラ砂漠の地にかつて存在した都市や国、文明が記されています。この部屋には諸文明の興亡と諸国の記録がおさめられています」サンジェルマンが心棒のひとつを手に取って、締め具をほどくと、驚いたことに私にもその内容を読めることがわかった。
「一時的に君の意識を引きあげ―彼はつづけた―隠れた記憶、かつて生きたこれらの体験の前世記録を引き出すことによって、これを可能にしているのです。神とその宇宙を知るという問題は、各形態における生命記録に触れることにすぎないのです。あらゆる形態は生命を含み、各形態の光放射の中にその全過去が記録されています。いとわず必要な自己修練に注意と時間を注ぎ、日常生活の外部活動の混乱を静めるのであれば、誰でもその全過去を発見し理解するため訓練できます。万物の中にあるこの永遠の記録は、最初から存在していました。
過去の時代、人類はあらゆる点で完全さを表現しました。人類のいにしえのこの状態は、エデンの園として歴史家によって記録にとどめられました。エデンつまりエ・ドンとは神の知恵を意味します。外部のマインド活動の意識的注意が肉体感覚の世界によりかかるのを許すにつれて、『神の知恵』、全知の意識活動は曇るか、おおい隠され、個人的生命の『神の宇宙プラン』は消え失せました。完全さと人類によるあらゆる形態に対する意識的コントロールとは、それと共に見えなくなり、忘れられたのです。
人間は神意識のかわりに感覚意識になり、注意を向けて最もよく考えるものをあまりにも表現したのです。父が最初に授けた完全さと支配権にわざと意識的に背を向け、自らのありとあらゆる欠乏や制限、不調和の体験を引き起こしました。全体のかわりに部分と一体感を抱き、その結果もちろん不完全さが生じました。
全人類が制限されているのは、神の属性である自由意志を個人自らが悪用した結果なのです。外部のマインド活動の直接の意志によって再び意識的におのれの高貴な起こり、神、万物の偉大な起源を振り返るときまで、自分自身の創造物の中で生きなければなりません。これが起こるとき、もう一度自分自身の『偉大な宇宙的青写真』を見たいと思うたびに、以前の自分、元の自分を人間は思い出しはじめるでしょう。
今読めた記録には、七万年前の出来事が起こっているところを見たとおりに生命と人々が記されました。君は、まだ明らかになっていない多生で、この記録をする仕事と大いに関わっていたのです」
会議場を横切って向こう側の扉から入ると、今出たのと同じ大きさの部屋があり、北壁には隣りあう小部屋が二つあった。ほとんど壁面全体におよぶ大きい方の部屋には、金属製棚がもっとたくさんあり、そこには別室のとそっくりの容器がいっぱいおさまっていた。
「これらの部屋には―サンジェルマンはつづけた―金と宝石だけがあり、特別の目的のため使われることになっていて、人類が野放しの利己主義を超越したとき全世界の恵みとなるでしょう」ここで彼は金貨のつまった容器を引き出して、説明をつづけた。「これは海で失われたスペインの金ですが、他の手段では取り出せないのがわかったので、私たちの支配するある力を働かせて、ここに持ってきました。後に、来たるべき時に、外界で使用されるよう再び送り出されるでしょう。
この容器の金は―彼は別区画を示しながら―失われたムー大陸やアトランティス大陸、ゴビ・サハラ砂漠、エジプト、カルデア、バビロニア、ギリシア、ローマその他の古代文明から蓄えられました。もしこの金がすべて世界の外部活動に解放されることにでもなれば、人間の体験のあらゆる局面で急な再調整が強いられるでしょう。目下それは知恵の一部ではないでしょう。人類が地上にはじめて出現して以来、その守護者だったあの偉大な宇宙マスターたちの無限の知恵とパワーは、人知をほとんど超えています。
この世で莫大な富を蓄積した者は必ず、ある昇天マスターの援助と放射を受けました。特定の目的のため個人を巨富の焦点として使える場合があり、そんなときには大いにパワーを追加して彼らに放射します。それによって個人的援助を受けられるからです。そんな体験は彼らの成長にとって試金石であり、またチャンスでもあります。人間の活動におけるあらゆる並はずれた偉業は、特定のチャンネルがどうであれ、昇天マスターからの超人的な愛と知恵、パワーの援助によってつねに成しとげられます。マスターは物質界のあらゆる限界を超越してしまったからです。こういうわけで並はずれた成功は、放射を通じたマスターのより偉大なパワーによります。
一八八七年、富を悪用した者を教育して、間違いの結果を十分明らかにするという特定の目的のため、昇天マスター軍は学校をひとつ内界に創立しました。このような者を入学させて、いっさいの富を支配する宇宙法と、他人をしいて、間違った考えとミスをいつまでも続けさせることの結果とに関する真実を語ります。提出された証拠を受け入れるか拒絶するか完全な自由が与えられます。彼らはつねに受け入れ、与えられた教育を甘受します」
私たちは次により小さな二つの部屋に入り、そこにもやはり同種の容器だけが備わっていたが、さっきの部屋ほど大きくなかった。この容器は種類と量で分類されたありとあらゆる宝石つまりダイヤモンド、ルビー、真珠、エメラルド、サファイアでいっぱいだった。にこにこと彼はこっちを見て言った。「偉大な神我があらゆる富の唯一の真の所有者にして管理者であることを、今や君は知り、理解しています。あの『存在』は光、知恵、物質、物質的財宝であれ生命の各界層に管財人を任命します。活動のこの局面を観察している間、君は平静で落ち着きを保っているのが見てとれ、それは結構なことです。外見上、準備ができるや、今まさに達成しようとしていることをするための内なる強さと能力を物語ります。
世界の富を実際支配し、個人の霊の強さをためす試験としてのみ使うのは私たちであり、その証拠を君に示しました。世界の富はつねに、ただ建設的に使えるほど十分強くあるべき者が預かる委託物ですが、今日の全世界に存在する誘惑のもとで実際あの試験に合格する者は少ししかいない、ほとんどいないのです。その気になれば私たちは神の子の中で最も謙虚な、十分心構えのある者を富、権力、目立つ場所に引きあげることができます。そうすることによって、そんな偉業によってその他大勢に援助を与えられるなら」
さらに多くの宝石でいっぱいの他の容器を調べた後、私たちは振り返って会議場に再び入った。最初来た入口の方を見ると、昇天マスターのひとりが預かるわが愛する家族、ロートスと息子が見えた。サンジェルマンによれば、そのマスターはアメン・ベイとして知られるという。挨拶を交わした後、私たちは東壁パネル前の座席に導かれた。三人から一二人のグループに分かれて昇天軍の聖人がやって来て、ついに彼ら七〇人が着席した。
会衆全員がしんと静まりかえり、しばらくそよともせず成り行きを待つ。柔らかな白光球がパネル前にできはじめ、急速に大きさと輝きが増し、少なくとも高さ二メートルの卵形になる。まるで光自体の中から誕生するように、背の高い威厳ある強大な栄光の存在が一歩踏み出す。彼は有限と無限を結びつけるサインをつくり、心身の原子をひとつ残らず振動させる声で、全員に用意がいいか尋ねた。
強烈な光がパネルの構成物質からピカッと発し、生きた光の鏡のように見えた。たちまち澄んだ透明な雰囲気に変わり、それからあらゆる次元の生きた映像を映写しうる宇宙スクリーンになり、果てしない宇宙空間が観察できた。監督する知性がそう願うなら、無限の過去か起こるかもしれない未来永劫のすべてを、このスクリーンに可視化できたのは自明である。
最初に映写された光景は「ムー」大陸、その人々の活動や業績、あの文明の到達した高みだった。これは数千年間におよんだ。それからあの国の住人にとって、きっと恐怖の支配に違いない出来事が起こった。地表を引き裂く大異変が起こり、ついに何もかも内部陥没した。古代ムーの国土は波の下に沈んで、今日の太平洋となり、まだあたり一面水におおわれているが、浮上し、物質太陽の生命と光をもう一度吸収するだろう。
次に、今日の大西洋の大部分をおおう巨大大陸アトランティスの美と知恵、パワーの成長が映写された。当時、中米と今日のヨーロッパの間に陸地が存在した。途方もない偉業を成しとげたが、再び強大な神のエネルギーの悪用が人々を押しつぶし、バランスをだんだん失ったため、大異変によって地表は再び分裂した。
アトランティスの小さな名残として絶海の孤島が残ったにすぎず、残りの文明世界との親密な関係を断った。島の東西の部分は大西洋の下に沈んでしまい、ポセイドニスという島だけが残ったのである。当時知られた文明世界の中心であり、中心地としてその最重要活動を保存保護するための、ある未完成の仕事を推進するための準備がなされた。当時、精神面と物質面の両方ですばらしい大偉業が成しとげられた。
この周期の機械の進歩は、きわめて高い達成状態に達し、その最も注目すべき表現は完璧なまでの航空術だった。当時のアトランティスのものと比較すれば、現代生活の空輸は今のところはまだきわめて幼稚で原始的である。光と知恵の大マスターは人間活動のあらゆる面で霊感を与え、教育、保護し、きわめて高度な知識を明かしたので、ポセイドニスの人々はこの機械の進歩が可能になった。
この人々の大部分は個人の内なる偉大な神のパワーに気づいたが、以前のとおり本性の人間面や外部活動は再び偉大なエネルギーを奪った。利己主義とこの超越的な知恵やパワーの悪用は、以前にもはるかに増した。人々がまた破壊的な勢いを増しつつあり、三回目の大異変がさし迫っているのを知った古代知恵のマスターは、以前のように何度も住人に警告したが、「光」のために働く者だけが心に留めたにすぎない。
巨大建造物が不滅の材料で建設され、そこに記録が置かれ、幾時代を通して保管されてきた。現在、完全保存状態のまま密封されて大西洋の海底に眠っているが、その準備を指揮し、保護管理した偉大な者たちのおかげで日の目を見るだろう。
そこには当時の人類の進歩と業績が記録されているので、アトランティス文明の活動が人類から永久に失われることはなかった。そんな記録の保管に加えて巨富、主として金と宝石は、そのとき別の安全な場所に運ばれた。この巨富は幾世紀にわたって守られてきたし、守られつづけ、まだ誕生していない世代の進歩向上のため未来に使われるだろう。
最後の大異変がおさまり、かつての世界帝国の残片が今日の大西洋の下に沈み、幾世紀にもわたる浄化のため眠りについた。アトランティスとその国民の記憶は幾世紀もの間ずっと、多くの方法で記録されたので、ムー大陸と違い、完全に忘れられることも人類史で抹消されることもなかった。沈没してから一万二千年たってもアトランティスに関する情報の断片は、実に意外なルートから今なお私たちのもとにたどり着く。アトランティスに関する神話伝説は数多くあり、この二つは、いずれかの時代に地球で実際に起こったある状況を人類のために保存する手段である。時がたつにつれアトランティスの存在とその到達した高みの動かぬ証拠が、海洋学や地質学その他の科学的データによって明るみに出るだろう。
それから眼前に古代ゴビ・サハラ砂漠文明の主要活動の盛衰が映され、通りすぎていった。この活動のひとつひとつが衰退したのは、今回は大異変の作用のためではなく、あの周期に生まれ変わった原始的霊の大群が荒らしまわったためである。
次にエジプト、その興亡の映像になったが、滅亡は、あの国に生まれ変わったおびただしい数の人類が、知識とパワーを意図的に悪用したためである。彼らの顕著な性質は、知的教養の誇りと低級本性の抑制への反抗だった。
エジプトは、知識とパワーを正しく用いることにより絶頂をきわめた。破滅を避けたいなら、この知識とパワーは、そんな贈り物を求める側に神我への謙虚さ、従順、人間的本性つまり低級本性の絶対的無条件コントロールをつねに要求する。エジプトに生まれ変わった霊はゴビ・サハラ砂漠文明の者とは異なり、衰退する間、発展した。それどころか知識とパワーを意識的に利用し、悪用する方を意図的に選んだ。あの女神からの贈り物を永久に相続する者は、知識とパワーの悪用へのあらゆる誘惑をいつまでも無視せねばならないので、この活動はいずれにしても知恵と無関係である。知恵とは表現するものすべてを正しく用いることであり、この自明不変の真理を悟る者は、創造のすべてのよいものを送り出す開放扉となる。
闇の国としてのエジプトへの言及は大間違いである。初期の周期のエジプトからきわめて偉大な光が生じたし、また再び生じることになるからである。
次の光景ではローマ帝国の興亡が映し出された。それらの世紀の闇と堕落がどん底までいたったとき見よ。イエスが、輝く光と愛をキリストとして注ぎ出しながら現れ、二度と闇がどの時代にも人類をそれほど厚く包みこめないよう、神の完全さのそんな圧倒的な洪水は変容と復活、昇天によって地球中に広がった。イエスの人生の金字塔は永遠にこの惑星の雰囲気に記録されていて、磁石のように作用し、人類を同じような完全さへ引き寄せる。
イエスの降臨は世界の人々へのイニシエーションであり、未来の全活動に神の愛のパワーを用いよとの宇宙命令だった。最も暗い周期におけるイエスの愛の地球へのこのほとばしりは、個人における御子キリストの誕生となった。イエスはもう一度神聖な宇宙的青写真を呼び起こし、新時代の法令を明らかにした。あのプランは、各人の中のキリストが十分成長することによる有限の万物の完全支配である。
次にリチャード獅子心王の御代になった。人類は、あの治世に起こった真の精神活動のことをほとんど知らないか、あるいはまったく知らない。リチャードの十字軍の熱意と活動を鼓舞した光そのものが、昇天軍が内部意識レベルで用いるある力を、当時の従者や国民を通して解き放った。
それからヨーロッパにおける最近の世界大戦の映像になり、戦争を招く活動があらわになった。その真の原因はたった数人しか知らず、それ以上知らないのがきっといちばんいい。意識が見つめるにはあまりにも破壊的である。注意を戦争に集中してもたぶん何も得ることはできない。これもたぶんリチャードから世界大戦までの時期が映し出されなかった理由だった。ここで昇天軍の活動があらわになり、最近の国際紛争の蓄積した勢いの原因と大部分を昇天軍が解消するのを見た。
巨大な光線を意識的に集中誘導することによって見事解消したが、飲みつくして変えるそのパワーは、制限のある描写にはすばらしすぎる。この完全な者たちは、長く待たれてきた愛の奉仕を人類のため実行できる宇宙的瞬間をずっと待ち構えていたが、人類は今までのところは愛の奉仕をほとんど理解しないか、それともまったく理解しない。
この注目に値する映像はつづき、遠い未来に伸びて全世界に影響する活動を明らかにし、地上における今後のさまざまな変化を示した。中でも最重要なもののひとつは北米の進歩に関することだった。神の北米未来プランは最も偉大な平和、美、成功、繁栄、精神的啓発、支配権での熱心な活動状況である。アメリカは今かすかに地平線に触れつつある「黄金時代」の中心地になることになっているので、キリストの光を運び、地球の残りの国々のためにガイドたる運命にある。北米の地の大部分はきわめて長期間そのままだろう。北米大陸は長年月―さよう―二〇万年以上の間知られてきた。
映像はかれこれ三時間つづき、あまりの古さに科学界と歴史家の記録を完全に逃れた活動と光景が多く映し出された。今日の映画作品はすばらしく美しいが、この宇宙スクリーンに映る生きた呼吸する実物と比較すれば、単なるおもちゃにすぎない。ここで宇宙的原因が地上の出来事や状況を数多く生じるのを見ることができ、非常に重要な教えを受け取った。
教育が終わるとサンジェルマンは、私たちを輝く光の中から現れた偉大な昇天マスター、ラントに、それから集まった七〇人のマスターに紹介した。
「君たちが栄光ある仕事の意識的奉仕にやがて加わる準備が再びできるとき―ラントは私たちの方を見て言った―私たちは本当にうれしいでしょう。この機会はすばらしい勝利によって君たちに訪れます。人間的自我と外界に勝ったのです。その勝利が実に偉大であるか光栄にも知る時が近づいています。毎日、君たちの中に活動する偉大な神の強い『存在』を十分受け入れること、そうすれば失敗のようなものは道のどこにも存在しえないのです。昇天マスターは、真剣に『光』を求める者をみないつも知っています。金星から賓客が一二名訪れる新年夜会のとき、ここで再会しましょう。出席してください。サンジェルマンとアメン・ベイは君たちの後援者になるでしょう」
合図でみな沈黙し、それぞれの奉仕の持ち場に戻る前にラントの愛の祝福を受けた。マスターのほとんどはすぐに部屋から簡単に姿を消し、残りはエレベーター経由で去った。
サンジェルマンはロートスと息子の方を振り向きながら「君たち、時間がわからないと見えます。今は午前三時です。さようなら」と言った。二人は私を抱擁した後、外のレセプションルームを通って去って行き、私たちは右側のひとつめの扉を通った。「もうひとつ―彼はつづけた―出て行く前に見せたいものがあります。
ここには特別の目的のために使われるきわめて珍しい楽器があり、作品用に特別の音質を持つ音をかなでるため組み立てられ、つくりだされました」ここで彼はオルガン・キーボードに目を向け、説明をつづけた。
「このオルガンはパイプがないように見えますが、パイプがあり、通常よりずっと小さく、ケースの中におさまっています。楽器全体の音は、地球の音楽でかつて知られたどれよりも高いのです。始まろうとしている黄金時代が前へ進むにつれて、このオルガンは外界の作品で使われるようになるでしょう」
次に今日の音楽界で通常使われるものよりわずかに大きい華麗なハープを四台調べた。サンジェルマンはその中のひとつに着席して、音をだいたいわからせるため弦を鳴らした。かつて耳にした最もすばらしい音楽だった。
「このハープは最愛のロートスをびっくりさせる贈り物です―彼は言った―この隠れ家の新年夜会で、腕きき芸術家のかなでるオルガンと四台のハープの演奏会に招待しましょう」部屋の視察が終わり、北西壁の扉を通って去った。
入って来たように隠れ家から出て行くかわりに、サンジェルマンは左の小さな扉を開けて、壁が水晶のような構成物できらきら輝くトンネルに入ったとたん、周囲の電子物質の操作によっていつも放つ白光で明るくなった。トンネル内をさっさと歩き、青銅扉のところに来て、彼が触れると開き、再び星空の下に立っていた。
私たちは一瞬まったく黙り、そのあと地表約一五〇メートルの高さに上昇しながら、すみやかに空中移動し、すぐにパンサーがまだ見張っているシャスタ山南斜面の肉体のそばに立った。二二時間離れていたが、見上げると夜明けがちょうど東の地平線に忍びよっていた。
「さあ朝食です」サンジェルマンは、白色透明の発泡性飲料の入ったクリスタルカップを手渡しながら言った。「これは元気回復と気分爽快のダブル効果があり、それでハイキングしながらの帰宅が楽しくなるでしょう。君のからだは激しい運動と活動を必要とするからです。意識につっかえているか、少なくともすっきりしないものを君のマインドに感じます」
「はい―私は返答した―しばらくの間私の注意をずっと引いていて、視覚化に関することです。真の視覚化とは何ですか。まさしく心に描くとき何が起こるのですか」
「真の視覚化とは―彼は答えた―人間のマインドに作用する神の属性と視力なのです。かなえたい願望を意識的にマインドに描くとき、願望を可視可触の体験にする最強手段のひとつを利用しているのです。視覚化つまり願望のイメージをつくるとき、現実に起こることに関して大勢の人のマインドに混乱と半信半疑、あいまいさがたくさんあります。あらゆる思考はその中の観念像を含むので、誰かが意識的にあの形態のイメージを抱かないなら、形態は決して宇宙のどこにも生じません。抽象思考でさえ、ある種のイメージ、または少なくともそのマインドの概念であるイメージを持ちます。
明確な願望成就のため視覚化活動を発達させ、意識的にコントロール、誘導するエクササイズをひとつ教えましょう。その過程は数ステップあり、学徒ひとりひとりがいつでも好きなときに使えます。実際に適用すれば目に見え、手でさわれる結果がとにかく出ます。第一ステップは、実現したい明確なプランや願望の決定です。このとき、それが建設的で正しく、時間と努力を注ぐに値するのを確かめなさい。そんな創造を表現する動機を必ず調べなさい。単に気まぐれに従ったり、肉体感覚の欲望を満たしたりするためではなく、君自身と残り世界の両方に対して正直でなければなりません。パワーの行使と願望と欲望には非常に大きな違いがあることを覚えておきなさい。パワーの行使とは奉仕の偉大な宇宙法の成就のことです。願望とは発展する神の活動であり、それによって表現がたえず維持されるのですが、それはまた拡大する完全さでもあるのです。欲望とは、感じる本性をたえまなく満足させることにより染みついた習癖にすぎず、外部の生命活動からの提案によってエネルギーを集中、修正したものにすぎません。
喜んで他人を犠牲にして利益を得るという、どろどろした感情が心の中にないことをよく確認しなさい。真の学徒、しかも唯一そんな学徒だけが、この種の訓練から利益を得て、手綱をおのれの手に取り、人間的自我を鍛えて意識的にコントロールする決心をします。自分の未来の世界か、そうでないものか選択し、マインド内でのイメージ化過程によって明確に決定した人生プランを設計、表現します。
第二ステップは、プランを言葉でできるだけ具体的にはっきり明言するというものです。これを書き留めます。そのように可視可触の外界に願望を記録します。第三ステップは目を閉じて、願望やプランが完了した完全な活動と状況をマインド内にイメージします。
創造して君自身の意識内でイメージを見る能力は、君に作用する視覚という神の属性であり、その事実をじっくり考えなさい。視覚機能と創造力は、君が知り、いつでも自分の中に感じる神我の属性なのです。神の生命とパワーは、君自身の中で見て感じているイメージを外界に実現するよう意識内に作用しています。
想像力が視覚という神の属性であることを思い出しつづけてください。完成したイメージを感じ、体験し、それと結びつく能力は神のパワーです。イメージとプランで形態をつくるため外界で用いられる物質は、神の純粋物質なのです。それから君は、神はかつて顕現界にあらゆる建設的な形態と作用を送り出してきた行為者、行為、行為の結果であることを知らねばなりません。このように建設的過程をすべて用いるとき、プランが可視界で実現できないわけがないのです。
できるだけ一日に何度も願望やプランを読み直しなさい。いつもちょうど就寝前も読み直すといいです。なぜなら寝ついたとたん、君自身のマインドでイメージを見つめるやすぐに、十分な印象が乱されず人間の意識にかなりの時間残り、外部活動に深く記録でき、力を発生させて蓄積することが可能となり、そのおかげで外部の生命体験が促されるからです。睡眠で偉大な沈黙に入るとき、このようにどんな願望やイメージも意識に伝えることができます。そこで願望やイメージは、偉大な沈黙の内奥にいつもある神の最大のパワーと活動で充電されます。
決して君が視覚化しているという事実も願望も誰にも口外してはなりません。これは絶対に必要です。声に出してひとりごとを言うのもだめですし、ささやきでさえいけません。迫真のイメージを視覚化、凝視し、感じることにより生じるエネルギーが多く蓄積されればされるほど、はやく外部体験が訪れるのを理解するべきです。
もし友人知人に口外しなかったら、無数の願望とか野心とか理想が外部体験に表現していたでしょう。意識的な視覚化誘導によって確実に体験を引き起こそうと決心するとき、君は法、神、『絶対者』の法となり、対峙者はいません。君は腹をくくり、全力で自分自身の天命から身を引かねばならないのです。不動の断固たる態度で臨まねばならないということです。そうするには、それに関することすべてを望み、感じ、知り、表現し、支配しているのは神であることを知り、感じる必要があります。これは『絶対者』の法、神、そして神のみです。このことを十分理解するまで君は表現できませんし、決して表現しないでしょう。人間的要素が入る瞬間、神の手から取り出し、当然表現できないからです。神の少しも知らない、時空や場所その他ありったけの架空の条件という人間性によって表現を相殺しているせいです。
神に対立する力を考慮するかぎり、誰も神を知ることは決してできません。二つの力が作用できると認めるときは必ず、結果として生じる合成的な中和活動の性質があるからです。中和があるとき、どちら側にもはっきりした性質はありません。君はまったく何もなく、何も表現しません。君が神、絶対者を認めたとたん、対立するものも、表現を相殺中和するものも、時間の要素もないので、即座に完全さが表現するしかありません。神命に反対するものはないので、それで君にしっかり表現します。
完全を望み、神に対立するパワーも、内外に神の完全さの表現を邪魔しうるものがあるのも認めなくなるまで、条件は誰にとってもよくなることなど決してありえないのです。神のすべてより劣るまさにその条件を認めることは、不完全さの意図的選択であり、その種の選択は人間の堕落に他なりません。どんなことでも好きなようにいつも自由に考えられるので、これは故意、意図的です。完全なイメージなどを考えることは、不完全な物事を考えるのと同じようにエネルギーはいりません。
君は、宇宙で、君の世界と居場所で完全さを設計創造する局地的な創造主なのです。完全さと支配権を表現するつもりなら『絶対者』の法のみを知り、認めなければなりません。絶対者は宇宙のどこにでも存在し、完全に支配します。君は生命の自意識、愛と光の偉大な炎の至高『存在』。おのれの世界とその中のすべてのものを唯一活動させる者なので、君だけが、おのれの生命に注ぎたい性質と形態を決める選択者、命令者なのです。君が考えたり感じたりするとき、生命エネルギーの一部が創造物を維持するため出て行きます。
それゆえイメージ実現に関するいっさいの疑いとか恐怖をマインドから追い出しなさい。そんな考えや感情は結局、人間から出てくるものにすぎず、完全さを含まないので、すぐに意識に送り、そのかわり君の自我と世界を神の生命、『絶対者』として十分認めるべきです。そこから先は、視覚化している時間以外そのことに関してまったく心配せず、無関心でいるように。結果の出る時間をマインドで決めてしまわず、今この瞬間しかないのをわかってください。この訓練法を取り入れ利用すれば失敗できないし、決して失敗したこともない不可抗力を発揮できます。
君はイメージしている神であることを念頭に置きなさい。誘導している神の知性。駆り立てている神のパワーに他なりません。作用を受けているのは神の物質、君の物質なのです。このことを理解して、しばしばイメージをたっぷり見つめるとき、宇宙にあるものがすべて君の願望と命令、イメージをかなえるため駆けつけます。願望やイメージはまったく建設的であり、したがって自意識のある生命のための神の当初のプランと一致するからです。もし私たち人間側が本当に神のプランに同意して、受け入れるなら、そこに遅れとか失敗のようなものはありえません。あらゆるエネルギーは本来備わっている完全性をその中に持ち、さっと駆けつけて創造主のために働くからです。
願望やイメージが建設的であるかぎり、君は自らのプランを見ている神なのです。神が見るとき、それは今や表れるのを取り消せない神意や神命なのです。この地球をはじめ太陽系の天地創造において、神は『光よ。あれ』と仰せられ、すると光ができました。光を創造するのに時間は幾永劫もかかりませんでした。同じ強大な神が今君の中にいて、君が見るか話すかするとき、君に、君を通して作用しているのは視覚と発言という神の属性なのです。
この真意を悟るなら君は神の最高パワーと最高権威で命令できるのです。なぜなら君は神の生命意識であり、それは君の生命の自意識にすぎず、完全な建設的プランを命じたりイメージしたり願ったりできるからです。あらゆる建設的プランは神のプランなのです。だから神が作用して『今この願望やプランを実現させなさい』と命じているのがわかり、それが実現されるのです」
ここでサンジェルマンは話し終わり、ほほえみながら当分別れを告げ、見えなくなった。私は帰途につき、パンサーはそばを速足で駆けた。まる二四時間食べ物なしでいたパンサーはすぐに疾走し、深い森の中へと消えて行った。歩き続けて一一時に帰宅し、名誉ある体験の重要性と世界観全体の急変を理解しようとして一日の残りを過ごした。
第4章
イエローストーンの神秘
七日が過ぎ、そのとき九月の第一週だった。八日目の夕方すわって生命とその無限の表現についてじっくり考えていると、自然にサンジェルマンのことを考えた。直ちに圧倒的な愛が、彼の援助と光とによる光栄な全体験への深い感謝のうちに、彼に向かって出て行った。
部屋に誰かいる感じを風のそよぎのように受けはじめ、見上げると突然そこにサンジェルマンが、ほほえみ、光り輝きながら立っていた。まごうことなき「神のごとき存在」である。
「やあ―彼は言った―びっくりするほどの、そんなに不意の来客かな?確かに、よくご存じのように、君が私のことを考えるとき私と交信していて、私が君のことを考えるとき君と一緒にいます。瞑想で君の注意が私に向いて、それで現れるのです。法に従っていませんか。それでは自然なように受け入れようではありませんか。人は考えるものを自分に引き寄せます。
提案ですが自分を訓練してみてはどうですか。つねに君の中のすべての力を完全に自制するため、どんな場合でも決して驚かず、失望せず、感情も傷つかないようにするのです。それが支配権というものであり、『光』の細道を歩く者への報酬であり、人間的自我の更生なのです。
従うすべをまず第一に習った者だけが、支配権つまり命令権を永久に持ちつづけることを念頭に置いてください。なぜなら『絶対者の法』の遵守を習った者は原因の存在のみとなり、その原因とは愛だからです。このように、その人は類似性によって実際『絶対者の法』となります。調和的なもの以外何も君から出て行かないよう注意し、冗談にも破壊的な言葉をうっかり漏らしてはいけません。たえず神のある種の力を扱い、つねに君はその力を特定の限られた形に修正する本人であることを忘れないように。
重要な旅に連れて行くため来ました。三六時間の予定です。カーテンを引き、ドアに鍵をかけ、肉体をベッドに置いて行きます。肉体は戻って来るまで守られるでしょう。君はある精神的進歩をとげ、きわめて興味深い楽しい体験と旅が待っています」
私は就寝の準備をし、すぐにじっと静かになった。一瞬にして肉体の外、床の上に立ち、ロイヤルティートン訪問時と同じ金色の衣服をまとっていた。壁に関して持つ密度感は消えてしまい、壁をすり抜けると、その感じは深い霧の中を歩くとき体験するものだった。
今回は空間を通りすぎるのをはっきりと意識した。行き先を尋ねなかったが、すぐにロイヤルティートンに着いた。東方にロッキー山脈がそびえ立ち、その向こうには大平原がのびていた。大平原は、いつか亜熱帯植物が繁殖し、人々が平和に裕福に暮らしているだろう。
西にはシエラ山脈とカスケード山脈、はるか先には海岸線のがらりと変わった海岸山脈が見えた。北方に「イエローストーン」を見下ろしたが、そのすばらしい美しさは、アメリカの現代文明から古代の神秘と驚異をおおい隠す。
「『イエローストーン』という言葉は―サンジェルマンは説明した―幾世紀もの間ずっと一万四千年以上受け継がれてきました。ひとりの光の大マスターが政府リーダーだったので、当時ポセイドニス文明は隆盛をきわめました。衰えたのは最後の五〇〇年間だけで、偉大な知恵の悪用が支配的になったのです。今なお同じイエローストーンの現在の境界線内には、かつて世界で知られた最も豊かな金山が存在しました。金山は官有、その資源の多くは化学と発明、科学における実験研究目的で使用されました。
ここから六〇キロのところにダイヤモンド鉱山が一座ありました。そこから取れた石は、この地球でそれ以前かそれ以後かつて見つかった最も美しいイエローダイヤモンドだったのです。あの鉱山から出た宝石の中には、非常に美しい完全な稀少石が数個ありました。適切にカットすれば、とても小さな青い炎が中心にきらめき、光る液体のように見えました。ある人が身につけると、この炎の輝きは石の表面から二・五センチ以上、上に見えました。
この稀少石は神聖視され、昇天マスターたちの最も秘密の最高儀式にのみ使用されました。その中の一六点は『ロイヤルティートン・ブラザーフッド』が今でも大切に保管し、指定時間に再び用いられるようになるでしょう。現在名イエローストーンの由来は、この見事なイエローダイヤモンドなのです。
ねえ君は両鉱山の発見者だったのですよ。今言っていることの物的証拠として記録を示しましょう。この記録は発見の日付、取り出した資源量、操業時間、使用した機械装置の説明、閉鎖や封鎖の日付を示します。その機械装置は難溶性鉱石を処理して八七%回収し、金塊に加工しますが、鉱山の地表近くでは工程を不必要にして輸送されました。さあコピー記録です。
ポセイドニスの生では、ひとりの姉妹と美しい家で暮らしました。今のロートスです。二人とも『内なる神我』との密接な交信を成しとげ、維持したので、神はつねに本当に働いていました。君は鉱山局員であり、あのつながりによってすばらしい飛行船を発明建造したのです。それに乗って山脈上空を大いに旅しました。ある日のこと深い瞑想のうちに、後に発見開山して政府に譲渡するこれらの鉱山の場所が見えました。この説明に加えて、その証拠を今示しましょう。もっとも現在、外見上鉱山の痕跡はないのですが。来なさい。鉱山そのものに入りましょう」
ロイヤルティートンを後にして空間を通過、高速移動するのを完全に意識し、イエローストーン国立公園の某地点に到達。ここで堅固な岩壁の前に降り立った。
「中に入るすべがわかりますか」サンジェルマンは私の方を向いて尋ねた。
「いいえ、でも通路はここだと感じます」御影石の壁のある点を指しながら答えた。彼はほほえんで、指摘した場所に近寄り、そこに手を置いた瞬間、堅く閉じた金属製扉の前に私たちは立っていた。
「いいですか―彼は説明した―私たちには入口を封じる独自の方法があり、保護のためその方法を決めます。そう望まないかぎり決して発見することも入ることもできません。場所や物を密封する物質は宇宙供給源から取り出します。外見はそっくりなのに、その物質は岩自体よりも堅いのです。
隠れ家、建物、埋もれた都市、鉱山、光の昇天した大ブラザーフッドの秘密の部屋への入口をこのように守ることができ、その多くは七万年以上の間ずっと完全保存状態のままでした。もうそんな場所も物も使わないとき宇宙供給源に返します。ですから、おわかりでしょう。あらゆるパワーは、おのれを征服した者に自ら進んで仕える従者となるのです。命令が宇宙力を用いる知恵と愛の一部であるときはつねに、あらゆる宇宙力は私たちの命令を待っています」
目の前の扉には肩の高さあたりに、金属自体を浮き上がらせた人間の右手のレプリカがあった。ひときわ私の現在まとう肉体の手のように見えた。
「手をその上に置き―サンジェルマンは言った―しっかり押しつけるのです」言うとおりにする。ぴったり重なる。力いっぱい押しつける。ゆっくりと大扉は開き、話をつづけた。
「何回生まれ変わっても、その間あの手形と大きさを維持してきたのです。君は鉱山発見者なので名誉として政府が扉に手形を残しました。あの手は一万四千年前の君の手形なのです」
私たちはこの扉を通って入り、長くて丸い坑道に進み、とうとう大空洞に出た。そこで、びっくり仰天したことには、不滅の白色合金でできた各種の道具や機械装置を見つけた。まるでほんの昨日建設したのと同じくらい完全保存状態である。空洞の中央には立て坑があった。あの過去の鉱山活動の単純さと完全さに現在の鉱山技師は驚くだろう。同じ方法が、来世紀中にここアメリカで再び用いられるようになるだろう。
サンジェルマンは立て坑に行き、レバーを引いた。すぐに風変わりなデザインのかごがてっぺんに来た。中に進み、彼は中にある小さい方のレバーに触れた。六〇メートル下へ向かって降りはじめ、ステーションのひとつに来た。二一〇メートル地点まで下降をつづけて止まった。ここが中央ステーション、そこから車輪のスポークのように五本の坑道が出ていた。
この坑道はすべて完全に円筒形で、機械装置の材料と同じ白色合金でつながっていた。山自体の陥没や崩壊だけで押しつぶせないほど、この金属はぶ厚く頑丈である。五本の坑道のうち二本は、六〇〇メートル以上山の中を走っていた。中央ステーションには全車を動かすエンジンが一台あった。
「君の見ている白色合金は―サンジェルマンは説明した―きわめて注目すべき発明物です。というのは軽量、不滅、知られているどんな物質よりも丈夫で、さびないからです。こういう驚異はすべて、この古代文明が偉大な高みに到達したという現実の物的証拠ですが、君はそれを断片的に描写することしかできません。そんな驚異は存在してきましたし、今君の中にありますが、この意外な新事実を明るみにするまで思いもかけないことです」坑道の突きあたりに来ると、遠い時代に使われたドリルを示した。「このドリルは―彼はつづけた―直径約二・五センチの管状の青白い炎を出しました。通過するにつれて驚くべき速さで作用し、岩を焼きつくしたのです」
私たちはステーションに戻り、二本の坑道の間の三角形の部屋に入った。向こう側の突きあたりには同じ白色合金でできた約三〇センチ角、長さ九〇センチの容器がいくつかあった。サンジェルマンは一個開けて、カットされていないすばらしいイエローダイヤモンドを見せてくれた。口もきけないほどの美しさ。私が思うに読者の声が聞こえる。「物質だったということですか」そのごくごく自然な質問に「はい、今日君が指にはめているダイヤモンドとちょうど同じような物質」と答えたい。他の容器には信じられないほど高価なカット石がいっぱい入っていた。
それから鉱山入口に戻った。サンジェルマンは扉を閉め、前のように封じた。昇天マスター以外、扉と周囲の岩を誰も区別できなかっただろう。地面から上昇して、金山へすみやかに六〇キロ旅した。今回まさしくその山頂、完全に堅く見える円錐岩の近くに立った。岩の基部は直径約四・五メートル、たぶん高さ3メートル。
「じっと見ていなさい」彼は手を岩に置きながら言うと、三角に切断された部分がゆっくりと外に移動し、下に降りる階段が姿を現した。しばらく階段をおりると、ダイヤモンド鉱山と似ている立て坑のてっぺんの空洞にすぐに着いた。
「粉砕機がないことに気づくでしょう―サンジェルマンはつづけた―鉱山自体の中ですべて行い、地表ではひとつも手を触れません」もうひとつの大空洞がある一二〇メートル地点で止まった。ここには鉱石処理の完全設備があった。作業工程が極端に単純だと彼は説明したが、信じられないように思えるほど単純である。
二四〇メートル地点まで下降をつづけ、ダイヤモンド鉱山と同じ配置が見えた。ここで再び坑道が何本か中央から車輪のスポークのように出ていた。三角形をした三つの部屋がこの坑道の間につくられ、ちょうど閉山前に鉱山からの採掘物がおさめられた。別室と同じ白色合金の容器がここにあるが、そのうち三箱だけ描写が許された。二四〇メートル地点には古代の川底があり、砂金を含む砂れき層が一緒にセメントで少し固まっていたが、一箱目はそこから取れた金塊。この状態が深さ三七〇メートルまで存在し、莫大な価値があった。二箱目は、一二〇メートル地点の白水晶鉱脈から取れたワイヤー・ゴールドがいっぱい入っていた。もうひとつの箱には、それぞれ三・六キロの純金のディスクが入っていた。
「すべての金の保管場所は―サンジェルマンは説明した―金塊室として知られました。この鉱山に関するコピー記録が保管されていたのですが、原物はロイヤルティートンの隠れ家の記録室にあり、そのコピーがこれです」私たちは地上に戻った。再びサンジェルマンは前述したように入口を封じ、私の方を向いてこう言った。
「ねえ君は同僚の手を借りて、これらの鉱山を発見し、稼働させ、この完全操業をもたらしたのですよ。君も不滅金属で記録したのですが、ロイヤルティートンでそれを見せましょう。昇天マスターたちは、一万二千年前の大異変が近づいていて、鉱山があまり影響を受けないのがわかったので、はるか遠い未来に利用するため、私たちが今入ったばかりの鉱山を準備し、封じたのです。
この記録をするため、君の多生のうち七回の異なる時期に記憶と過程を思い出しました。現代において全人類の祝福のため記録を再び提出するでしょう。こういうわけで子供の頃からありとあらゆる古代の記録への関心がめばえ、今生で再びそんな仕事と大いに関係するという予感があったのです。
来なさい。さあロイヤルティートンに戻りましょう。広大な謁見の間の隣室に、私の言ったこの記録があります。そこは発明品と科学的発見物の保管場所です。先の訪問で入った部屋には、さまざまな文明の記録しかありませんでした」
私たちは隠れ家に戻り、初訪問したときのように今回はエレベーター経由で中に入った。降り立ち、入口右側の第二扉を通りすぎた。扉は直接、長さ約二一メートル、幅一二メートル、高さ五メートルの科学記録室に通じていた。全壁、天井、床は、棚や容器の材料である同じ不滅の白色合金でつながっていた。
サンジェルマンは容器のひとつを引き出し、私の作成したダイヤモンド鉱山記録を手渡した。再び記録を読めたが、今回彼は内なる神我に頼むよう私に言い、こうして私が当時持っていた過去の完全な知識を神我に明かさせた。記録から発見と操業の明確だが要約された歴史がわかった。もうひとつの心棒が渡され、それには金山の完全な歴史が記されていた。
「説明したことの物的証拠を見たのだから―彼は言った―私は証明できないことを決して何ひとつ言わないのを知ってもらいたいのです」ここで心身をはっきり見透かすような鋭い目つきで私を見た。
「ねえ君、こういう最近の体験にあいながらも―サンジェルマンはつづけた―正しくふるまい、冷静沈着です。多くのことが次の段階に左右されます。すべてをコントロールする内なる神我に全注意を集中し、そこでその状態を維持するのを忘れずに」
これから起こることを考慮して、あの忠告で鼓舞してくれたのは適切だった。あのように注意すると広大な謁見の間を横切って案内し、西壁の大きな青銅扉のところに行った。サンジェルマンが手をその上に置くと、パネルはゆっくりと上方へ移動し、私たちが中に入ってから閉まった。
はっと立ちつくす。人間の目が見るのをまず許されないしろものを見物し、その光景に釘づけになったからである。美しさと驚異にそれほど魅惑された。
私の約4メートル前に高さ九〇センチ、四〇センチ角の雪のように白い縞瑪瑙の塊が立っている。たえまなく動く無色「光」にみちた水晶球が一個この上に載り、そこに光点が駆けめぐっている。球は、約一五センチ離れたところまで間断なく虹色の光線を放っている。生きた物質からできているように見えるが、それほどたえずきらきら光っている。
水晶玉のてっぺんから炎の火柱が三点噴き出し、少なくとも高さ九〇センチに達している。ひとつは融解した金の色、ひとつはローズピンク、ひとつは鋼青色。てっぺん近くで各部分はダチョウの羽のように優雅に美しく曲がり、永久運動をつづける。この華麗な球から出る輝きは部屋全体にあふれ、電子エネルギーの感じがするが、言葉では伝えられない。光と生命とあの光景の美しさは人間の描写力を難なく圧倒する。
私たちは部屋の向こう側の突きあたりまで歩いて行き、そこにはそれぞれに人体のおさまる水晶棺が三棺並べてある。近づくにつれ心臓はほとんど止まりそうになった。ロートスと息子と私が古代の生まれ変わりでまとったからだが、中に安置されていたからである。今もなおロートスは、あのからだにある程度似ているので直ちにわかるが、息子と私自身のからだは、さらに均整がとれ、完全な体格をしている。何もかもが、ほとんど古代ギリシア人のような一種の非の打ちどころのない完全さを示している。
まるで眠っているだけで、生きているように見える。めいめいウェーブのある金髪で、タペストリーの両神像のローブと似た金地の衣服を着ている。ひとりの昇天マスターがこのからだを眺め、あのとき以来あらゆる生まれ変わりで体験する、おのおのの生命活動がすべて記録されるのを見さえすればよい。だから、このからだは、体験している活動を記録する鏡の役を果たすが、原物の完全さはそのままである。
各ひつぎは、球が載っているのと同種の白縞瑪瑙でできた大きな土台の上に載っている。ひつぎには水晶の蓋がしてあり、縁の周囲の溝にぴったりはまっているが、密封はされていない。三棺とも蓋の上、ちょうど胸の真ん中におおいかぶさるように七芒星が一個あり、その下方に象形文字が四字ある。端に、それで頭頂の真上に置かれたのだろうが、六芒星が一個ある。体側、両肩の真下で指を組み合わせて両手を握りしめ、もっと下、足の近くに火のついたトーチランプが置いてあり、それで炎がひつぎの蓋に触れている。他のどんな光の色が部屋中を動きまわっても、この炎は金色のままである。向こう側の端、足の下に五芒星が一個ある。象徴はすべて水晶浮き彫りのように浮きあがっている。
「このからだは―サンジェルマンは説明した―君たち三人が特定の一回の生でまとったものであり、そのとき特別の仕事をするため黄金都市を去ったのです。君たちの体験はそれほどすばらしく、あの生であまりにもよいことを達成したので、偉大な宇宙的存在が現れ、からだを生き返らせて黄金都市に戻れるようなときまで保存するよう命じたのです。保存のための完全な指示を出し、見てのとおり忠実に実行されました。
神の愛と知恵、完全さのみがマインドとからだを通してつねに作用できるよう、内なるマスター、キリスト我を強烈に意識し、深く集中しつづけることがいかに重要かつ必要であるか、君は今ではもう完全に理解できます」
その瞬間、目もくらむばかりの光と途方もないパワーが、私をつらぬいて波のように押し寄せ、私の神我が語った。
「偉大なる光のマスター、守護者、兄弟、友。おー、力ある神の子、あなたはまことに永遠の愛を抱き、その愛によって、十分ふさわしい永遠の平安と下位五王国に対する支配力とを獲得しました。あなたがそれほど長く望みつづけたあらゆる援助を与えるため、あなたのそれほど深く愛するこの子たちの偉大なる神我を、私はまもなく出現させ、自覚ある完全支配権を持たせます。なぜなら神の子にはめいめい果たすべき務めがあり、その者しかその務めを提供できないからです。私は君を永遠に祝福するため、まさに神の御心から『偉大なる光』を呼び起こします」
こう述べたとたん一条のすばらしい光線がぎらぎら輝き、部屋はあざやかな虹色の光点だらけになった。光点は部屋中を駆けめぐり、何もかもがまばゆい虹の光輝と化し、生命で躍動した。
「ねえ見なさい―サンジェルマンは言った―君は偉大な神我をなんと完全に表現させることができるのでしょう。これをまもなく意識的に、自由自在に、好きなときにできるようにします。
天井の鍾乳石効果と壁の銀白の外観に注目しなさい。すべて物質化した物質からなり、部屋は一定の適温がいつも保たれています」私たちは部屋を横切って、向こう側の突きあたりに行き、壁の磨き上げたアーチ道の前に立った。サンジェルマンがその上に右手を置くと扉は開き、すばらしい白色合金の記録機器を公開した。「今入りつつある時代―彼はつづけた―人類は、保管されてきた機器を多く用いるようになるでしょう。だから発明発見への道をどちらも通り抜けなくていいのです」
「この隠れ家と鉱山にあるすべてのものが、これほど塵がなく換気が良好なのは―私は尋ねた―どうしてですか」
「それは―サンジェルマンは説明した―きわめて単純です。昇天マスターは熱や光、エネルギーを生み出すのと同じ力をクリーニングと換気に用いるのです。鉱山や部屋を通りすぎるとき、彼らの誰からの放射も直ちに不必要な物質をことごとく消滅させます。肉体を去ってから二回目の朝が近づいています。今すぐ帰らねば」
謁見の間を通りすぎ、管状エレベーターの左扉から外へ出て、もう一度、星の光のもとに立った。急いで部屋に戻り、一瞬にして再びからだの中にいた私のそばに、サンジェルマンが立ち、今度は琥珀色の飲料のいっぱい入った、おなじみのクリスタルカップを手渡してくれた。飲むと生命の活性効果が、からだじゅうの全細胞に行きわたるのを感じた。
「さあ、できるかぎり長く眠りなさい」サンジェルマンは、そう言って視界から消えた。熟睡したに違いない。数時間後、目覚めたときには完全にすっきりし、からだは体力と元気を取り戻したのだから。
第5章
インカの記憶
翌一〇日間、何事もなく過ぎた。最近の訓練によって注意を内なる偉大な神我に向けつづけ、サンジェルマンへの愛のこもった感謝の念を送りながら眠りについた。一一日目の晩、就寝中はっきりと彼の声が聞こえた。
「来なさい」あの呼び出しに従うことができるようになり、直ちに肉体の外に立ち、すみやかに空間を通過し、しばらくしてロイヤルティートンにやって来た。彼は山腹に立って到着を待っていたが、今回、自分の居場所に来るように呼び出した。言うとおりにして挨拶した。
「何なりとお申しつけを」そばに歩み寄りながら、こう言うと、ほほえんで返事した。
「やらなくてはいけない仕事があります。行きましょう」
私は旅の方向を十分意識し、確かに南から少し西寄りに進んでいると思った。まもなく都市の明かりが見え、サンジェルマンは私の注意をそちらに向けて、ひとこと。
「ロサンゼルス」さらにしばらく旅をつづけ、もうひとつの明るい区域の上空を通過し、今度の質問に「メキシコシティー」と答えた。それから熱帯林にやって来て、降りはじめ、すぐに古代遺跡に降り立った。
「これはメキシコ・オアハカ州のミトラ古代神殿跡です―彼は説明した―インカ文明は最盛期に達したので、君たち三人は援助のため生まれ変わりました。君たち自身の成長を導いている昇天マスターたちの賛同を得て、当時必要とされた働きをするため、インカ王家に生まれ変わろうと決めたのです。
インカ統治者は、すばらしく成長した光り輝く強い霊の持ち主であり、ここで君たちは皇子、皇女として生まれました。帝国民と国土に恵みを授けるため、統治者は帝国民への深い愛のうちに唯一の至高神に呼びかけ、『光』と豊饒、完全さを求めたのです。
インカ帝国皇帝は『偉大な中心太陽』のパワーを知り、意識的に認めたので、おのれの起源への献身はとてもすばらしいものでした。このことを本当に理解するよう帝国民は教わり、偉大な中心太陽の指し示すものを知っていたので、太陽を神格の象徴として用いました。インカ族はまことに裏面の意味を理解し、この偉大な中心太陽からのパワーが満ちみちるのを認めました。宇宙におけるキリスト活動の中心なので今日、中心太陽は『キリスト』と呼ばれます。
インカ統治者がおのれの起源と帝国民の両方に献身したがゆえに、帝国民を導いて援助するため祝福と光を求める深い願いは聞き入れられ、サハラ砂漠上空の黄金都市出身の一四名が答えて、援助しました。君、ロートス、息子はあの一四名の中の三名だったのです。
君が一〇歳のときロートスは一二歳、息子は一四歳。全員私の保護管理下に置かれ、後の仕事のための準備と訓練がなされました。当時の私は黄金都市にいましたが、準備の調律が始まった後、毎日宮殿に来て、必要な放射と教育をほどこしました。これが四年つづき、それから父が啓示を受けたのです。
インカ統治者は皇子、皇女の知恵に驚き、しきりに恵みに対する賛美と感謝の意を神に表しました。君が一四歳のとき、サハラ文明での生まれ変わりの最後に黄金都市に私たち全員を連れて行った、その偉大な宇宙マスターが皇帝に現れ、祈願が確かに聞き入れられたと言いました。
まさしくこのときから七〇年間以上、インカ文明は隆盛をきわめました。一四歳のときから私は毎日来て、君たち三人と同じくインカ統治者も教育し、調律しました。君たちは『太陽』の子インカと呼ばれました。皇帝の感謝と愛、協力は実にすばらしく、皇帝は偉大な宇宙法の理解と使用を教わりました。
一抹の影すらあの訓練の美をそこなわなかったため、君たちの児童期と青年期はすばらしかったのです。君の息子は統治者の聖務と政治法を教わりました。ロートスは内なるわざを教わり、『太陽神殿』で完全な法と巫子任命式が与えられました。君は宇宙的な神官法と、ひそかに軍隊の統率力も教わりました。
ペルーでの一〇年におよぶ特訓後、君たち三人はみなインカ帝国北方の新植民地のひとつに派遣されました。人々の援助と事業拡大、進歩促進のためです。インカ統治者が与え方を知る愛と名誉、祝福のすべてを受けて、君たちは出て行き、メキシコ・オアハカ州の今日のミトラに植民地首都を建設しました。
ここに君たちは、教育と援助を受けてきた黄金都市住人たちの指揮下で大神殿を建てました。あの生でロートスはミトラと呼ばれ、まさしくミトラに敬意を表して都市が命名されたのです。ここで四〇年以上、巫子として仕えました。当時最も壮大な神殿のひとつに数えられ、秘密の地下建設部分は残り、幾世紀後すばらしい文明の証拠となる運命にあったので、金に糸目をつけませんでした。君たちは建設時このことを知り、そのことに関してある明確な命令が出され、遂行されました。黄金都市出身の偉大な昇天マスターのひとりが建設全体を指揮したからです。
神殿外部は巨石からできていて、そのいくつかは今でも遺跡の中に見られるかもしれません。内部は大理石と縞瑪瑙、翡翠でつながっていました。翡翠の産地は、誰にも明かされたことのないアンデス山脈の秘密のありかでした。内部の装飾作品の彩色はきわめて芸術的で美しく、主な配色は金、紫、バラ色、シェルピンクでした。
内なる至聖所は金色、そのデザインは紫と白。巫子が腰かけて職務を行っている椅子も金。ここで精神的パワーは集中し、保持され、帝国とその民に放射されました。準備としてこの説明をしましたが、さあ地下神殿に入りましょう。かつて栄光に輝いた遺跡の中で一室が、そこに保存されてきました」
サンジェルマンは「後ろへ下がって」と命じ、私たちはもっと遠くに行った。私たちの前にある大量の大岩に強大なパワーの光線を集中させると、四方八方に吹き飛び、立方体をしたローズ御影石が一個あらわに。彼が前へ歩き、その上に手を置くと、石はまるで旋回軸を中心とするかのようにゆっくり回転し、幅約九〇センチのすきまが姿を見せた。境界のはっきりした踏み段があり、下方に通じていた。私たちは二一段おりて、銅製らしき扉まで来た。サンジェルマンによれば不滅にするため合金だという。
入口右の立方石を押すと扉はゆっくり弧を描いて回り、小部屋に入った。向こう側に大きなアーチ道があり、もうひとつの重い大扉が閉まっている。今度彼が両足を奇妙なデザインの石に置くと扉は後方へ移動し、大部屋が姿を現したが、クリーニングと換気がずいぶん必要なように思えた。その思いが脳裏をよぎるや大部屋は強力な紫の光が氾濫した後、柔らかな白いかすみがたちこめ、真昼の太陽のように明るくなった。何もかもさわやか、きれいになり、バラの香りにみちたのでクリーニングは完璧だった。
大部屋に入ったとたん、これまで見てきた最も注目すべき数点の肖像画が私の注意を引いた。実物どおり純金に多色エッチングを施してある。
「これも―サンジェルマンは説明した―不滅です。そのうち五点はインカ統治者、ロートス、息子、君、私自身のもので、すべて当時のからだに似ています。この特種な芸術が表れたのはインカ時代だけでした。ロートスは自らの神の炎に献身したおかげで、金星から大マスターをひとり当時引きつけ、教わりました。あの種の芸術は、地上で知られた、いかなる時代のいかなる芸術とも異なっていました。この特種な芸術は数世紀先のものなので、金星のマスターはある程度の数をつくることだけを許可し、それで世界の発展した当時は使用が許されなかったのです。けれども今入ったばかりの現在の黄金時代、この芸術が表れるでしょう。
ああ、とてつもない発展の可能性が自分たちの前にあり、信条、カルト、教義、主義その他、自身の心の中の偉大なる『神的存在』に注意を向けさせないことで束縛制限する、すべてのものから離れるのを待ちに待っているのです。そのことをアメリカ国民だけが理解できるのですが。自由とパワー、光はアメリカ国民の奉仕を待ち、たえず自分たちを通して呼吸し愛する内なる偉大な『存在』を認め、働かせることにのみ左右されるのです。ああ、そのことを悟り、あらゆる表現を全能の力で支配できることを知り、感じるかもしれないのですか。ああ、彼らだけが、からだが天地の統治者すなわち『生ける至高神の神殿』であることを悟れるのですが。あの強大な自己を愛し、それに話しかけ、それを万物に認めることの意味、そして他の人や物事を感じるのと少なくとも同じくらい確信をもって、あの『存在』の現実を感じることの意味を知るかもしれないのですが。身近でリアルな『偉大な存在』しか深く感じられないなら、一瞬たりとも何も二度とイエスその他昇天マスターたちの達成したのと同じすばらしい大偉業と自分たちの間に、立ちはだかることはできないのですが。
おーアメリカ、最愛の『光』の子よ、今おまえたちを通して、この偉大な『神的存在』とその知恵、パワーを燃えあがらせ、天国がなんとすみやかに地上に出現できるし、出現することになるのか見よ。『光』は始まろうとしている黄金時代を布告し、アメリカはその『光』を運ぶ、諸国間に示す道です。現状にもかかわらず『あの光』は突然生じ、偉大な神我への理想と愛をこわそうとする影を飲みこむでしょう」
私たちはそれから右扉を通りすぎ、そこでこのインカ文明時代の不滅の記録をさらに多く見つけた。インカ文明はあの周期で重要な役目を果たしたのである。
「君は、一万四千年前の自分の生の記憶から、この記録をする過程を思い出したのです―サンジェルマンは言った―肖像画と共にロイヤルティートンに運びましょう。この秘密神殿は完全に役目を果たし、今崩壊することになるからです」
すぐに美しいきらきら輝く存在が現れ、肖像画と記録を運んだ。やり終えると私たちは入口に戻り、しばらく歩き、そこを離れた。サンジェルマンは少しの間、秘密神殿の場所に注意を集中し、黙りこんで立っていた。突然の静寂が私をとらえて離さないのを感じ、地震のようなゴロゴロいう音。瞬時にすべてが終わり、当時最も壮大な創造物だった秘密神殿は崩壊して廃墟と化した。
サンジェルマンの驚くべきパワーに、息が止まるほどびっくりすることしかできなかった。まことに、偉大な昇天マスターは神々である。彼らの活動が神話伝説の外観をまとって現代に伝わったのは、古代人の神話では少しも不思議ではない。偉大な「神的存在」に断固として忠実なので、とてつもない神のパワーをつねに行使し、したがってまったくの完全なので、いっさいのパワーが与えられる。
「『わたしを信じる者は、わたしの行うわざを行い、またそれよりもさらに大きなわざを行います』と言ったとき、イエスは自分の話すことを知っていたのです」サンジェルマンはつづけた。
「イエスは意識的な支配権と支配力を明らかにするために現れましたが、あらゆる人間は、まだここ地上にいる間にそれらを達成表現できるのです。昇天マスターの支配権を示し、また誰でも神我を呼び起こし、人間に関する物事をすべて意識的にコントロールできることを人類に証明しました。
この惑星で最初から人類の成長を導いてきた愛と光、完全さの偉大な昇天マスターは、誰かの想像の産物ではありません。可視可触、実在し、栄光に輝き、生き、呼吸している存在であり、そんなあまりの愛と知恵とパワーの巨大さに人間のマインドは息が止まるほど驚きます。無限のパワーを発揮しつつ宇宙のいたるところでまったく自由に働き、普通の人が超自然的だと見なすことをすべて自然に行います。
外界で人間の想像力をぐらつかせるようなパワーを行使し、力を操作する者。人類の守護者であり、ちょうど三次元の教育界にさまざまな学年の先生が用意され、生徒を幼時から大人になるまで成長発達を導き、それ以降は特定の仕事の準備をするように、完全な昇天マスターが存在し、その人も普通の人間的表現を超えて成長するよう教育、援助します。このように超人的属性を発達させ、ついに大卒生のように昇天マスターの保護管理下に入って人類から卒業し、神性をたえまなく完全表現します。
昇天マスターは、自意識的努力によって自らの中に愛とパワーを生みだし、いっさいの人間的制限の鎖を断ち切るがゆえに自由になり、超人的力の行使を任せられるに値します。遍在する神、『生命』と自分とは『一体』だと感じ、したがって自分自身の中での『光』の操作によってすべてをコントロールする自由意志を持つ、自意識の目覚めた存在なので、あらゆる力と万物が命令に従うのです。
本当に自分自身の『神の愛の光り輝く本質』である、この『光』の放射や流出によって、昇天マスターは自分の保護管理下にある者を援助できます。
学徒へのそんな流出が起こるとき、本人自身の内的からだ―つまり感情体(アストラル体)、精神体(メンタル体)、意志体(コーザル体)―はマスターの光り輝く本質を吸収し、それらのからだの中の『光』は輝き、閃光のように拡大し、あおられて炎になるのです。
いっさいの不調和を消滅させ、あらゆる表現に完全な均衡を確立するので、この『光り輝く本質』はその中に宇宙最高の力を持ちます。物質太陽からの光と熱と呼びうる力の光線が霧を消失させるように、昇天マスターのからだは、たえず『光の本質』の光線を地上の不調和なものに流出していて、それを消滅させます。
彼らが地球人類に流出する放射は、意識的に引き出したエネルギーであり、明確な結果を得るため、それに特質を与え、再び送り出します。このように人、場所、状況、物を数えきれないほどの回数、保護しますが、人類はそのことにまったく気づかず、保護者や後援者をのんきに意識せず、定められた道を進んでいきます。
この種の活動で昇天マスターは、普通に服を着替えるように、役目を果たすのにまとうからだを変えられます。細胞構造はいつも意識的コントロール下にあり、あらゆる原子がごく軽い命令に従うからです。原子のからだの組立分解能力は絶対的に無限なので、望む仕事の関係で必要なら、ひとつかそれ以上からだを自由に使います。四大要素という自然力は、喜んで言うことを聞く召し使いなので、昇天マスターはあらゆる物質とエネルギーの全能の表現者に他なりません。
進化する人類を見守り援助するこの栄光の存在は、愛と光、完全無欠の昇天マスターと呼ばれます。内なる神我の愛と知恵、パワーを生むことによって、人間的なものすべてに対する支配力を表現するので、マスターという言葉の意味『自由に支配できる者』そのものです。それゆえに人間を超えた次の表現、超人的神、純粋にして永遠全能なる『完全さ』に『上昇』したのです。
制限を受ける無知な地球人類は、しばしば、大胆にもイエスその他大勢の昇天軍に判決を下し、彼らに関してさまざまな意見を述べます。ああいう習慣的な営みは、地球人類がもてあそぶことはできても、最も束縛するもののひとつです。というのは、そんな活動でこのように批判し判決を下しても当人に単に戻るだけであり、こうして人類は自ら創造した苦しみや制限にもっときつく縛られるからです。法の活動とは、人間的制限から自由になった昇天マスターは、光の強烈に輝く流出物になったということであり、その中に不調和という人間的思考はとても入れません。このため、あらゆる破壊的な思考と感情の創造物は、その送り主に戻らざるをえず、自らの創造物の鎖ではるかにきつく縛られることになります。
自分自身の思考と感情、言葉が大気にエーテル状態で出て行き、同種のものをもっとたくさん集めに集めて戻ってくるのを見ることができれば、自分の生み出すものに驚くだけでなく、助けてくれと叫ぶでしょう。そして、そんな創造物をマインドから完全に消し去るという理由さえあれば、断固として自分自身の神に顔を向け、その中に入りこむでしょう。思考と感情は、どくんどくんと脈打つ生き物です。そのことを知る者は知恵を使い、それ相応に自制するでしょう。
イエスとこの地球上で体験を積んでいる人類との関係は、各人の偉大な神我と個我つまり外部の自我との関係と同じです。イエスは外界にマスターの記録を明かし、いまだに、あらゆる制限から自由になり本来の意向のように神を表現する個人的能力の生き証人です。人類の最初の状態は、まったく調和的で自由だったのですから。
地球の子の大部分よりも深く生命と宇宙法則を研究する一部の人が、昇天マスターが存在するという事実に気づくとき、この偉大な者のところに教えをこいに行きたいとしばしば思います。多くの場合これは、さらに偉大な光への内なる霊の無意識のあこがれですが、まったく神聖なその偉大な存在に対して、どんな関係にあるのか個我はほとんど悟りません。
心から真剣な決然とした学徒が、昇天マスターのひとりと接触しうる方法がひとつありますが、それは十分な愛とパーソナリティー鍛錬との活動によってはじめて可能なのです。そんな接触の動機が好奇心の満足、昇天マスターの存在の証明や反証とか、単なる問題解決とか、パーソナリティーにある疑問の納得という魂胆のためなら、接触が絶対起こらないのは確かです。昇天軍は、いかなる学徒の人間面を満足させることにもまったく関心がないからです。彼らの全努力は内なる神我の拡大に向けられ、そのおかげで神我のパワーは十分効果的に解放され、表現のメンタル界や感情界(アストラル界)、物質界で使うための完全な乗り物を神我に提供しない人間的自我の制限を打ち破ります。これらの世界は、それぞれ思考や感情、行動の世界です。
人間的な弱さと制限はたやすく乗り物を損なうので、乗り物を訓練し、内なる偉大な神我の使用のため、有能な召し使いのようにできるだけ最高の状態に保つべきです。諸機能を持つ人体は、『偉大な神的存在』がエネルギー供給する神の神殿であり、この外部の自我を通して神の完全なプランやデザインを表現したいと願います。感覚的欲望やパーソナリティーの要求を抑えきれず神のエネルギーを浪費すれば、『内なる存在』は乗り物を掌握せず、着実に引きこもり、人間的自我はマインドとからだの操縦能力を失い、神殿は倒壊し、老朽と分解にいたります。そのときこの世で死と呼ばれる状態になります。
自分自身の外部構造と外部マインドの段階的調律に必要な準備もせず、可視可触の生きた呼吸しているからだで現れるマスターに接触したいと願う人は、大学教授に会って、そのもとでアルファベットを習うとせがむ幼稚園児と同じ態度を取っています。
昇天マスターは実際、巨大なパワーとエネルギーを持つ大電池であり、その放射に触れるものは何でも、磁石にくっついた針が磁性をおびて磁石になる磁化作用によって、『光の本質』で大いに充電されます。彼らの援助と放射は、すべて永遠に無償の愛の贈り物です。こういうわけで決していかなる強制力も使いません。
愛の法、宇宙法、個人法は、宇宙周期が個人法を破棄する宇宙活動期以外、昇天マスターが個人の自由意志に干渉するのを許しません。昇天マスターが通常よりも援助をたくさんしていいのは、こういう時期です。地球は今そんな周期に入り、これまで地球で知られた最大の『光』の流出が人類に与えられていて、また与えられつづけるでしょう。人類を浄化して、私たちの属する太陽系と地球の未来の維持に欠かせない秩序と愛を再確立するためです。秩序と均衡、平和の活動に入らないか、どうしても入ろうとしない者は、みな必然的にどこか他の宇宙教室にまわされ、地球上の未来の生命表現とは別の何らかの方法で、この法を自らが理解せねばなりません。
この偉大な者たちの『存在』に近づく手段がたったひとつあり、それは十分な愛です。自分自身の神我と彼らに愛をたっぷり注ぎ、あらゆる人間的な不調和や利己主義を根絶するという決心とその愛とを合わせもつのです。個人が建設的な生命プランにのみ役立とうと十分決心するとき、修錬がどれだけ面白くなくても人間性を完全に鍛えます。そのとき昇天マスターは努力や苦闘に気づいて、注意をその人自身に自動的に向け、内なる神我と永久に交信をつづけるようになるまで勇気と力と愛を注ぎ、支援してくれるでしょう。
学徒が自分のオーラに残した記録をはっきり読むので、昇天マスターは学徒に関するいっさいを知り、見て、弟子の発達状態、弱さも強さも明らかになります。何も隠せないので昇天マスターは全知のマインドであり、すべてを見とおす神の目です。愛と光と完全さ―マスターはそれらを拡大して自分自身の一部として使用でき、意識的に、意のままにいかなる場所にも注ぐことができます―の輝く太陽にならないかぎり役には立たず、単にマスターの仕事や世界にしがみつくお荷物にすぎないでしょう。可視可触の昇天軍の『存在』に参加したい者は、そのことを理解するべきです。
もし学徒が個我を鍛えていなかったか、鍛える用意がないか、鍛えず、そのため落ち着いたマインド、愛情ある穏やかな感情、強靭な肉体を持たないなら、昇天マスターの行う超人的仕事に使えない人材です。制御され、よく発達した強い乗り物を持っていないなら、昇天マスターと協力して、人間の普通の体験を超えた同種の仕事をすることはできません。
こういう完全な存在のひとりが、そんな性質を持たない学徒を現場に連れて行くなら、機械や家を不完全な材料で組みたてるときと同じミスを犯しているでしょう。
そのような人材は、急に困ったときとか奉仕が長引いたとき、当然異常な緊張や重圧に耐えられません。このように訓練不足の体験とか強さ不十分で耐えられない体験を誰かにさせるのは、知恵の一環でも愛の一環でも、また慈悲の一環でもないでしょう。昇天マスターは完全のきわみであり、当然のことながら、愛のこもった正しく賢明なこと以外何もしないでしょう。
昇天軍と意識的に協力して働きたいという態度は、『教えを受けに彼らのところに行けたらなあ』ではなく、むしろ『私は自分自身をそれほど浄化し、鍛え、完全にし、彼らの仕事を援助できるほど聖愛と知恵、パワーの権化となり、そのとき自動的に彼らに引きつけられるでしょう。私はそれほどたえず、それほど限りなく、それほど神のように愛するので、まさしくその強烈な私自身の『光』により、私を受け入れてもらえる道が開けるでしょう』であるべきです。
ねえ君、自我更生と人間意識の使用範囲内の力のコントロールとは一瞬の努力でできるものではなく、容易で無気力な自己満足の道でもありません。感覚は平均的人間の中で奔放にふるまい、人間は低級本性の抑制に猛烈に反発するからです。神のマインドの意識的支配下でのみこの力を使い働かせるため、自分自身の中、特に感情において適切にその力を支配するつもりなら低級本性の抑制は急を要します。
『招待される者は多いが、選ばれる者は少ない』という格言は、まさしく真実なのです。全員がたえず招待されていても、ほとんどの者は十分目覚めていないため、神我の中の恍惚とした喜びと完全さに気づかず、みなに父の家に戻るよう永久に招く『光』の中の神我の声が聞こえないのです。
ただ人間的感覚の創造物に背を向け、平和、幸福、豊かさ、完全を生じることのできる宇宙の唯一の起源に注意を向けさえすれば、地上の人はみな自由に一瞬一瞬『上昇し、父、神我のもとへ行く』ことができます。
誰もが昇天マスターと接触する方法がひとつあり、それは彼らのことを考え、呼びかけるというもので、ひとつひとつの呼びかけすべてに答えて、愛にみちた彼ら自身の『存在』を現わしてくれるでしょうが、呼びかけの動機は唯一の起源への愛、光への愛、完全への愛でなければなりません。
これが本物、不動、断固たるものであれば学徒はますます光を受け取るでしょう。『光』は自分の立場を知り、たえまなく、たえず、無条件に身を捧げるからです。求めなさい。そうすれば与えられます。たたきなさい。そうすれば開かれます。捜しなさい。そうすれば見つかります。『光』に呼びかけなさい。そうすれば昇天マスターはこの世の『光』なので答えてくれるでしょう。
ロートスは、君や息子と共に四〇年以上ミトラ神殿の巫子として働きました。君たち三人の協力により、多数の植民地都市が実に完全な状態になりました。君たちは産業を定着させ、農業を指導し、ついに繁栄が国土に行きわたりました。
あの文明における地上の巡礼と勤めがまもなく終わることが、インカ統治者に明かされたとき、君たち三人を故郷の自分のもとへ呼び寄せました。他の者たちが後継者に任命され、人々へ祝福と愛をまきちらしながら別れの挨拶をしました。
故郷に着くと長期不在の間、君たちが誰ひとり年をとっていないことに王は気づいて仰天しました。若々しい容姿は児童期に受けた訓練のたまものであり、自分の祈りに答えて神の力により皇子、皇女が送られたという、さらにすばらしい証拠でした。自分と皇子、皇女、帝国民への祝福に対する強大な唯一神への深い感謝の念で、心はいつもいっぱいでした」
この時点で、サンジェルマンがインカでの生まれ変わりを説明するとおり、実物そっくりの映像が目の前の空気に、すべてもとの色と活動で再現しだした。三時間近くつづき、ペルーとミトラのなまの現実のように、その古代の体験が明らかなった。
インカ統治者は、地上巡礼の最重要事件の準備に黄金都市出身者一四名を一緒に呼んだ。崩御の近いことを知り、皇太子は国事を預からねばならず、宴会で継承者に任命されることになったのである。
王はその御代の間ずっと莫大な富が思いのままだったので、宮殿は当代随一の壮大な建物として数世紀間有名だった。つねに神我のそばに生き、巨富が自分のふところに流れこんできた。宮殿内部はきわめて豪華絢爛、王家の私室は宝石をちりばめた純金で装飾され、太陽の象徴は内なる神我をたえず思い出させるものとして、できるかぎりあちこちに使われていたのである。
宴会場は、白縞瑪瑙の支脚に支えられた翡翠彫刻のテーブルが五台すえられ、各テーブルに二〇名ずつすわれるが、ロイヤルテーブルは例外で一六名いた。黄金都市出身者一四名、王、そして「金星の天使ウリエルの子」として当時知られたマスター・サンジェルマン。王のテーブルの椅子は金製で、すてきな色の華麗なダチョウの羽でわずかに天蓋のようにおおわれ、インカ皇帝の椅子の羽は美しい紫色だった。サンジェルマンのは、どぎつい金色、皇女のはピンク色、皇太子のは紫色、ただし統治者の椅子の羽よりも少し薄い色あいで、第二皇子のは神官職の権威を表す白色。黄金都市出身者一四名の残りの椅子の羽は色とりどり、言葉では言えないほど美しく、各カバーの色は、そこにすわる者の帝国における仕事と任務を表していた。
著しく光沢のある糸で厚く刺しゅうされた、きわめて柔らかい生地のクロスがテーブルにかかっていた。宮殿全体は自発光の数灯の水晶電球で照らされていたが、それは教育がはじめて始まったときサンジェルマンがインカ統治者に与えたものである。
王は金属のような金地の王服を着ていて、「太陽」を表す、宝石で飾られたすばらしい胸当てがあった。この上に、深いえりと縁全体が華麗なダチョウの羽で飾られた、華美な紫の生地でできた職服を着ていた。冠は後ろに三枚の紫の羽のついたダイヤモンドのバンド。統治者の内面生活におけるこの三枚の羽は、人間を通して愛と知恵、パワーとして作用する父と子、聖霊の三位一体の三つの活動を象徴した。第二皇子と皇太子は、荘厳な長服を別にすれば父と似た衣服を着て、宝石の胸当てからできた「偉大な太陽」の象徴をそれぞれ身につけていた。皇太子の冠にはエメラルドがはめこまれ、後ろの羽は王と同じ紫だったが、もっと薄い色あいだった。第二皇子の頭飾りには真珠がはめこまれ、羽は白かったが、それは神官職のもうひとつの象徴である
皇女はゴッサマーシルクのように見事な金地の礼服を着ていて、からだのひとつひとつの動きと共に色の変わる、まぶしい乳白光を発する生地のオーバードレープが見られた。ダイヤモンドとエメラルドをちりばめたベルトを巻き、ほとんど床に達するパネルがそれについていた。頭にぴったりの織物生地の帽子、首まわりにチェーンがあり、ダイヤモンドやルビー、エメラルドでできた「偉大な太陽」の象徴が、それにぶら下がっていた。サンダルは金製、やはり宝石がちりばめられている。
ちょうど王が私室を離れて宴会場へ行く途中、まばゆい光が部屋中くまなくピカッと輝き、神のごときサンジェルマンが私たちの前に立っていた。彼の周囲の『光』にほとんど目がくらみ、慣れるのに数秒かかった。
美しい金髪は肩までたれ、ブルーダイヤモンドをちりばめたバンドできちんと額のまわりにまとめられていた。彼自身の強烈な光が髪の色を通してまぶしく輝き、太陽光線に見える。きらめく紫の鋭い目は、若さと完全な健康を示すやわらかなピンク色の肌とひどく対象的だった。目鼻立ちは古代ギリシア人のようにきわめて端整。
現代世界のいかなるものともまったく異なる、不思議なまばゆい白生地のローブを着ていた。腰のあたりでからだに少しぴったりで、イエローダイヤモンドとサファイアのベルトを腰に締め、膝まで達するパネルがそれについていた。左手中指に豪華なイエローダイヤモンドの指輪、右手の中指にはほとんどブリリアントカットの宝石のようなサファイア。黄金都市から来たばかりなので彼自身の大発光のため、どちらもまばゆすぎる。
彼の登場に王は驚き、大喜びし、心臓と頭と手のサインをしながら深くお辞儀をし、つかまりなさいとマスターに腕をさし出した。こうして二人は宴会場へ入っていったのである。
ここにはテーブルが金や水晶、翡翠の食器一式と共にきちんと並べてあった。皇子、皇女はまもなく入場し、最愛のマスターを見るや、ほとんど喜びにわれを見失っていた。だが行事の威厳を忘れず、サンジェルマンから教わった聖なるサインをして、父と貴賓に深くお辞儀をした。
合図が出て、全員着席した。王はテーブルの上座につき、マスター・サンジェルマンはその右、その隣に皇女。皇太子は王の左、第二皇子はその隣、それから黄金都市出身者の残り。
宴の終わりに統治者は立ち上がり、みな完全に注意を払った。一瞬黙り、最愛のサンジェルマンに手をさしのべて賓客に紹介した。マスターが礼儀正しく会釈をすると、自分と皇子、皇女が彼からどのように魂の高等法を教わったのか、帝国と帝国民にもたらされた偉大な恵みが、どれだけマスターの偉大な愛のおかげなのか、皇帝は物語った。そしてさらに宴会を開いたのは帝位継承者の任命のためだと説明した。
皇太子に起立するよう合図し、将来の統治者として宣言、脱いだ王服を皇太子の肩にかけ、サンジェルマンは両手を皇太子にかざして祝福し、言った。
「宇宙を支配し、人間に宿る、力ある唯一神の名とパワーにおいて、わが子を祝福します。その至高なる知恵は君を導き、その『光』は君を照らし、その愛は君と帝国と帝国民を祝福し、包みこむことでしょう」
右手の親指を皇太子の額に当てて、最愛のマスターが左手をかざすと、まぶしい「閃光」が二人を包んだ。
それから王はミトラ神殿で皇子、皇女の後継者を任命し、サンジェルマン、王、皇子、皇女、黄金都市出身者の残りは謁見の間へ入っていき、そこでマスターは振り向いて、再び話しかけた。
「最愛なる光の者たちよ、君たちの兄弟である王、彼はまもなく十分ふさわしい憩いと高等教育に移るでしょう。そのときまで私は君たちと共にとどまります。君たちの文明は、このわれらが愛する兄弟の統治下で最盛期をむかえ、なすべきことを全部成しとげるため、さらなる資源がたくさん必要となるでしょう。あまり遠くない山奥に金と宝石の莫大な財宝が眠っています。
第二皇子は、かつて用いた一機能を今までのところ回復させていません。これからの事業に必要なものが供給されるよう、再び活動させます」サンジェルマンは第二皇子のところへ行き、額に右手の親指を当てた。振動がからだを通りすぎ、霊眼が開いた。
山塞にそんな巨大資源のありかが見え、外部事業で使うものの製造に必要になるかもしれないものは、すべてそこからの供給でまかなえることがわかった。第二皇子は最愛のマスターに敬意を表し、その使用計画は彼の援助で実現すると約束した。第二皇子が開いて操業した鉱山のうちの三つは、黄金都市出身者の統治が終わったときに閉鎖、封鎖され、今日まで閉じられたままである。
この文明はとてつもない高みに到達し、見事な偉業を達しえたが、考古学者はその形跡や証拠をさまざまな方法でときどき見つけている。今までのところ発見されたインカの活動の断片は衰退期のものだが、繁栄を祝福、説明し、それに貢献するため最盛期のものが明らかになる日が来るだろう。
翌日、使者が帝国の各主要地点に送られ、皇太子の即位が布告された。彼の知恵、高潔な性格、公正さはミトラ市での任期中の数年間に帝国中に知れわたっていたので、名声はその前にすでにそこから起こっていた。
数日後、第二皇子は、山に入って霊眼に映った鉱山を開くための装備、人、糧食、生活用品の準備を鉱山技師長に命じた。
出発準備をしていたころ第二皇子はひとりきりになって、注意を内なる神我にじっと集中し、鉱山発見に的確に導かれるのを知った。このためビジョンに示された場所に難なく手間取ることなく直行できたのである。作業に大勢の人を投入し、六〇日で鉱山を要領よく開き、南米にそれ以前かそれ以後かつてあった最も豊かな金脈を探り当てた。あの鉱山の発見と操業は、今日まで人々の間に伝説に語りつがれてきたのである。第二皇子は任務を遂行し、帝国民の暖かい歓迎の中を帰って来て、父、サンジェルマン、兄妹から祝福を受けた。
鉱山の場所は標高二四〇〇メートル、皇太子はそこにいる間ひどく敏感になった。高地でつねに起こる作用のひとつである。宮殿に帰ると同時に、インカ統治者が一変するときが来たとはっきり感じ、崩御が迫っていることを知った。
法的、公的に帝国の責任と義務を負うことになる皇太子の戴冠日が来た。王家は、最愛のマスターにして友に新統治者の戴冠を依頼し、マスターは丁重に同意した。
一大行事の念入りな準備が完了し、儀式は冠を新統治者の頭に今にも載せようという瞬間まで進んだ。サンジェルマンが冠を受け取ろうとしないことに全員気づいた。
突然まぶしい「閃光」が発し、人々の前に実にすばらしい存在が立っていた。たかだか一八歳の少女のように見えるが、女神の愛と知恵とパワーにみちた、まぶしい光輝を目と「風采」から放っている。周囲の雰囲気をみたす光はクリスタルホワイトで、それ自体の中で輝き、たえずきらめいていた。
きゃしゃな両手を冠の受け台にのばし、冠を持ちあげ、限りなく優美に皇太子の頭に載せ、まさに音楽の神髄である声でこう言った。
「黄金都市の新愛なる者よ、私は、あなたに愛と光と知恵を授け、この冠はそれらの象徴です。あなたの公正さと名誉と気高さが永遠につづきますように。神命により私は、ここにいる黄金都市住人たち以外みなに見られず、あなたと共に統治します」
新統治者はひざまずいて冠を受け、不思議な存在はかがんで額にキスした。それから集まった賓客の方を向いて両手を伸ばし、祝福した。直ちに柔らかなバラ色の光があたり一面をおおったが、それは賓客への愛のほとばしりである。前皇帝を祝福し、その娘の方を向いて優しく抱擁した。二男に手を伸ばすと彼はひざまずいて、深い畏敬の念を抱いて手にキスした。
新王は即位し、賓客に会釈した。美少女に手をさしのべて宴会場に案内し、ここで一同は戴冠式を宴会で祝った。着席の合図をし、それから話しかけた。
「わが深く愛する帝国民―新王は言った―人類と宇宙には強大な唯一の『神的存在』のみがあり、万物を支配していることを私は知っています。わがマインドとからだが、唯一の内なる大『存在』のよく聞き取れるチャンネルおよび完全表現となるように生きること、それがわが願いですし、また願いでした。願わくはあなたたち、わが友、わが帝国民、わが帝国、その事業が、神の最大の愛、平和、健康、幸福をもっていつも祝福されますように。願わくは、神域であり私たちがその管理人にすぎない、この帝国が豊かに繁栄しつづけますように。私にある神の愛は、いつもあなたたちを包み、私は、あなたたちを神のこうごうしい完全さに引きあげるよう神の永遠の『光』に求めます」
宴会が進むにつれて前王はまっさおになった。新統治者が合図すると、弟はそばに駆け寄り、手を貸して王家の私室に運んだ。横になり四時間近くじっとしていたが、子供たち、マスター・サンジェルマン、美少女はそばを離れなかった。
地上での臨終が来たとき、美少女は前王の横たわっているソファーのヘッドに寄り、話しかけた。「インカの兄弟、あなたは肉体形態を四大要素の作用にゆだねようと考えてきましたが、あなたに言います。あらゆる完全さを表現する永遠なる『神の神殿』の中へ、肉体は引きあげられ、変換され、光を浴びることになります。あなたは偉大な奉仕によって生死の輪から解放されたのです。あなたが永遠に一体である光の昇天軍に今、迎えられよ」
ゆっくりとからだは視界から消えはじめ、細霧の中へ薄れていき、それから完全消滅した。サンジェルマンは、そばに立っている人たちの方を振り向いた。
「ここでの私の仕事は終わりました」と言い、進み出て、きわめて珍しいデザインの指輪を王の右手の第三指にはめた。指輪の宝石は、ある種の物質化した物体からなる小型の自発光球で、真珠のように見え、ど真ん中にとても小さな青い炎が一点あった。それは「光」の焦点で、サンジェルマンが王の父に与えた、宮殿を照らす電球と同じものである。
「これを受け取りなさい―彼はつづけた―黄金都市のマスターからの贈り物です。いつも肌身離さず身につけるようにとのこと」一同に別れを告げ、丁重に会釈しながら視界から消えた。
マスター・サンジェルマンから児童期に受けた教育のため、インカの三人の子は完全な肉体をしていた。生涯にわたって帝国民に奉仕する準備を三人にさせるため、そのころ黄金都市から毎日通っていたのである。みなきわめて美しい金髪と青紫色の目をしていた。二人の皇子はゆうに高さ一九〇センチあり、皇女は約一七〇センチ。物腰には自然なものすごい気品と威厳があり、サンジェルマンの教育のもとで培った内なる支配がわかる。皇太子が即位したとき六八歳だったが、二五歳以上には見えなかった。地上を去るときでさえ誰ひとりその年以上には見えなかった。新王は四七年統治し、一一五歳まで生きた。皇女は一一三歳、第二皇子は一一一歳だった。
当時のインカ帝国民はみな濃い目、ダークヘアーで、アメリカインディアンのような肌だった。帝国民の大衆として生まれ変わった霊は、エジプト、アトランティス、サハラ砂漠のような先文明のいくつかのケースに見られる進んだ予備知識を持っていなかった。このため、この地球上で人類の進化を導く偉大な昇天マスター軍は、統治機関とその帝国民の世話にインカ統治者、その子供たち、黄金都市出身者一四名の残りを配置し、後の活動の型となる手本を確立したのである。政体と発展プランをデザインし、計画どおりいけば文明全体が物質界での達成の偉大な高みに到達し、同時に途方もない内なる啓発を受けることができただろう。
インカ族自身の中から統治者を選び、王とその補佐の後を継ぐときが近づくにつれ、細心の注意を払って精神的成長のいちばん進んだ者が選ばれた。黄金都市出身者の代理となる一四名が見つかった。美少女は四七年間、毎日、王の目に見えるようになり、知恵と力が帝国民の指導力となるよう放射による援助と忠告を与えた。
王と黄金都市出身者一四名の後継者は、深く愛される賢帝と美少女の面前に呼ばれ、見えなかった美少女はみなの目に見えるようになった。周囲の「光」がきわめて明るくなった美少女は話しかけた。
「九〇年間以上、偉大な光の昇天マスターたちは帝国民とこの帝国を教え、啓発、祝福し、繁栄させてきました。手本はあなたたちの前にあります。それに従えば、すべてがあなたたちの国を繁栄さえ、祝福しつづけることでしょう。唯一の至高なる神我への愛をまずあなたたちの心に抱きつづけて、帝国とその帝国民の統治者としてつねに神我を認めないなら、腐敗や衰退が始まり、一世紀以上の間味わった完全無欠の栄光は忘れられるでしょう。私は、みんなで至高なる大『存在』に配慮するようあなたたち命じます。『神的存在』が永遠にあなたたちを保護し、導き、啓発してくださいますように」
ここで、各人の内なる神我の存在する目に見える証拠が、これからの帝国の運命を導くことになる者たちに示された。この同じ例が現アメリカ国民に再び示されるだろう。
そのとき新統治者とその同僚の面前で、王と黄金都市出身者一四名は肉体から離脱して各人の神我を明らかにし、一同の目に見えるようになった。しばらくすると肉体は姿を消して、まわりの空気に溶けこんだ。
「こうして―サンジェルマンは説明した―もうひとつの生と祝福と達成の記録を君に明かしました。達成は、唯一の内なる神我の至高『存在』を認め、愛することから生まれるのです。さあロイヤルティートンに戻りましょう」
入口に戻り謁見の間に向かうと、壁には古代ミトラ神殿から運ばれた、金にエッチングを施した肖像画があった。記録室に行き、美しいきらきら光る存在の運んだ記録が見え、明かす許可のおりないものが他にも持って来られていた。
この体験が終わると、真実の愛とは何かということがいくらか、少なくとも部分的にわかった。はじめてサンジェルマンに会って以来、私はさまざまな体験を経てきたが、その体験が許された後、人が昇天マスターたちに対して抱く愛と感謝の熱情は、おそらく誰も説明できないからである。決して言葉で表現できない。そんな接触の後、人生における抗しがたい願望はたったひとつになり、それは彼らのような「存在」になることである。
イエスが「父の家」という言葉で言いたかったことや霊の家の実際のありかを、そのとき人は悟るようになる。昇天者から放たれる恍惚の至福を一秒の何分の一でも本当に体験してしまったら、達成のあの高みに到達するため、どんな体験にも耐えて、何でも犠牲にし、そんな支配権と愛を表現するためにも、あらゆる体験をやってのけるだろう。
そんな完全さは神の子全員のためのものであり、現実と同じくらいリアルであることを本当に知る。平均的人間の送る最も幸せな人生でさえ、この偉大な存在の昇天の境地と比べれば確かに形だけのものにすぎない。人間のつくった最も美しい、いわゆる完全な創作物は、どれだけパワーと完成を誇っても、イエスのようにからだを天に引きあげた者全員の連続的な日常体験である自由、美、栄光、完全と比べればお粗末である。
肉体に戻るときが来たが、サンジェルマンへの感謝と愛の感情でほとんどいっぱいだった。彼は私の感情を実感し、私の立場を理解した。
「ねえ―彼は言った―君は受け取って当然だった報酬を受け取れます。君はこれを受け取るにふさわしく、しかもはるかに多く受け取るだけのことはあります。進むにつれて明らかになるでしょう。でも忘れてはなりませんが、神秘的に見えるものは説明がつかないので、ただそう見えるだけ。理解すれば、異常な出来事はみな自然で法に従っているのがわかるでしょう。次の真理を記憶に永遠に刻みこみなさい。
心臓と脳の中に錨を下ろして、力ある唯一神の『存在』を認め、受け入れ、一日に何度もあの真理を深く感じ、他に何も余地がないほど神がマインドとからだを『光』で氾濫させるのを実感して知る神の子。その者はみな自由になれます。唯一の全能なる『存在』は、人の生命と営みの強大な調和的活動であり、断固として注意をしっかりこの永遠の真理に向けるなら、達成目標がどれだけ高くても到達できます。
ひたすら注意を払うべき生命の起源と原理はひとつしかなく、それが各人の神我なのです。外部のマインド活動がどうであれ、偉大な調和的自己を個我はつねに意識的に認め、それとの絶えまない内的交流をつづけるべきです。
この唯一の偉大な自己は、一瞬一瞬それぞれの人体を貫流する生命エネルギーであり、そのおかげであらゆる人が形態の世界で動きまわれます。それはマインドを貫流する知恵、あらゆる建設的活動を導く意志、みなを元気づける力と勇気、個人を貫流しながらいっさいの力を修正しうる神の愛という感情、あらゆる善事をいつも達成しうる唯一のパワー。人間活動のあらゆる状況に対する百戦百勝の意識的支配権であり、そのとき間断なく妨害もなく個我を通して解き放たれます。
力あるこの神我は君の中にいて、万物の至高の支配者にして人生で唯一信頼できる永遠不変の援助の源。その愛と知恵とパワーによってのみ誰でも、支配力を持つ昇天マスターの状態にいつも上昇できるのです。神我との絶えまない意識的交流は、人間のあらゆる創造物に対する支配と自由を意味するからです。私の言う人間の創造物とは、決して完全ではない不調和なものすべてです」
肉体のところに戻り、その中に再び入ったとたんサンジェルマンは私の両手をつかみ、元気づけて力を与えるため、神聖なエネルギー流をからだじゅうに注ぎこんでくれた。即座に心身ともに生き返った私はすわり、深く真剣に自分自身の『神的存在』に注意を向け、光栄にも途方もない恵みを受けたことへの感謝の祈りをささげた。サンジェルマンは丁重に会釈し、消えた。
第6章
アマゾン川の埋もれた都市
しばらくしてある夕方、懸命に働いていたときサンジェルマンの声がはっきりと聞こえた。
「用意しなさい―彼は言った―今夜九時、迎えに行きます」
すぐさまてきぱきと急いで仕事をすまし、入浴、早めの夕食の準備をしていた。
「適当な食物を持っていきます」彼は説明したので私は待ち、知るかぎり最も深い瞑想に入って、神の完全な表現のみを認識した。
九時きっかり、きらめく金属様物質でできた衣服を着て部屋に現れた。まるで光沢のある鋼鉄製に見えるが、大変柔らかなシルクと超軽量ゴムの組みあわせのような感じである。美しくすばらしい生地に触れると、あまりに魅惑され、振り向いて肉体がベッドに横たわっているのを見るまで、肉体から離脱したことに気づかなかった。ドアにある大鏡のところへ歩いて進み、自分の姿を見ると私の衣服はサンジェルマンのとそっくりである。不思議に思い、以前出て行ったときの衣服と違う理由がわからなかった。彼はマインドのあの疑問を知って、答えた。
「ねえ明確に理解してみて。昇天した生命状態では望みの用途が何であれ、つねに自由に純粋宇宙物質を利用して、手近な必需品用に望むどんな特質もそれに与えることができます。
不滅の材料を用いたいなら、純粋宇宙物質に不滅性を植えつけると適宜答えてくれます。一定期間だけ形態に表現してほしいなら構成物質にあの性質、命令を与えると適宜表現してくれます。今回は水中を通過するので衣服材料からの放射は、より微細なからだを包囲して、水の要素の自然の性質と活動を遮断してくれます。
君の中にあるこのパワーを考えてもみて。限りなく引き出せる宇宙物質の大海の利用。例外なく思考の指示に従い、人類の感性活動によって植えつけたどんな性質も記録します。
宇宙物質は君の意識的意志につねに従います。気づく気づかないにかかわらず人類の思考と感情にたえず答えています。この物質に何らかの性質を与えていない瞬間はありませんし、果てしない宇宙物質の海を意識的に支配、操作することを認識してはじめて、自分自身の創造力の可能性と思考や感情を使うときに負う責任とを理解しだします。
人類は幾世紀もの間ずっと宇宙物質を腐敗的に限定修正してきました。今日使うからだは、その特徴を表現しています。全人類は感情の中に憎しみ、怒り、復讐などの嵐を宿し、その性質を記録してきた四大要素は、自然界を通して嵐として人間にそれを返します。地上の人々は、お互いに対しての怒り、不正や場所、物に対する怒りとして思考と感情の大異変にあい、知ってか知らずしてか復讐感情を放ちます。この性質を記録し植えつけられてきた宇宙物質の大海は、源である個人に戻り、自然の大異変として四大要素によって表現するのです。
そんな活動は、人間の不調和な思考と感情の汚染から逃れようとからだを揺さぶり、神のごとき清浄な新品状態に戻る自然浄化法にすぎません。
たえず各人は、マインドとからだに神の純粋かつ完全な生命を受け取っています。しょっちゅう、ある種の性質を神の純粋宇宙物質に付与することもしています。本人だけが創造し生じさせるこの性質は、マインドとからだに戻ってきて、受け取らねばなりません。森羅万象は円を描いて動き、このように源に戻るからです。
昇天マスターは『円環法』『絶対者の法』を習得しました。したがって私たちは、取りかかっている特別の仕事に使いたいと思う性質だけを純粋宇宙物質に植えつけます。ある期間表現したいなら時間設定して命令すると、あのように特別に表現した物質は適宜答えてくれます。
ロイヤルティートンおよび世界各地の隠れ家にある記録の場合、幾世紀間保存するため、あるいくつかのものを不滅にすることが仕事上必要です。あの不滅性を記録に命じると、自然は決してうそをつかないので命令は正確に記録されます。自然は自分に作用する性質の忠実な記録器なのです。自然は私たちに従い、人間にも従いますが、自然の中にはあるひとつの働きが見られ、人類はそれを知らないか、認めるのを頑固にも拒否するかのどちらかなのです。この無知と頑固のため、個我がこの永遠の基本的真理すなわち『絶対者の法』『愛の法』『調和の法』『円環法』『完全無欠の法』を学び、ついに認めるまで、たえず罰と報いを受け、痛い目にあって償います。
人類があの『事実』を実際に学んで、永遠の神命に従う、まさにそのとき地上の不調和と四大要素の破壊活動は終わるでしょう。
自然の中には立ちあがって、『絶対者の法』と一致しないものをすべて振り捨てる自浄力があり、自然発生します。この力、エネルギーは内から外へ押し出す機能であり、拡大する唯一のパワーです。不調和が純粋宇宙物質に植えつけられるなら、電子エネルギーはその中で一時的にそこなわれます。そんな蓄積されたエネルギーがある圧力に達するとき、拡大が起こり、不調和と制限を粉砕します。したがって『絶対者の大生命』『永久拡大し光り輝く創造の本質』『活動している神』は、自分に対抗しようとするものは何でも制圧し、決められた宇宙最高支配者の道を歩みつづけます。光の昇天マスターはこのことを知り、あの認識と『一致』しています。
単に望みさえすれば人類もそのことを知り、『一致』できるかもしれません。それは個人ひとりひとりの能力と可能性の範囲内にあります。神は自意識のある生命の中の生得の永遠の原理ですから。全人類は自意識のある生命です。この原理はえこひいきせず、本当にそう望むなら誰もがそれを十分に表現できます。
単に望みさえすれば、たえず昇天マスターの表現するいっさいを表現しうるパワーが、各人の生命の中にあります。あらゆる生命は意志を宿しますが、自意識のある生命のみが、それ自身の表現過程を自由に決定できるのです。だから個人は自由選択をして、人間の限られたからだか超人の神体のどちらかをまとって表現します。自分自身の表現領域の選択者、自己決定する創造者。自意識ある生命として生きることを望み、選んだのです。
遍在する絶対的生命の中で個人化するとき、人は自意識のある知性の集中した個人的焦点になる方を自らの自由意志で選びます。その人は未来の活動を意識的に導く管理者です。したがって、ひとたび選択したら、あの運命―どうしても変えられない大げさなものではなく、明確完全な設計プラン―を成就できる唯一の者です。そのプランは、形態と行動の世界で人が表現するのを選ぶ青写真です。だから、ほらねえ人間は人間性や限界から脱しようといつ何時決意するかもしれず、もしおのれの生命、エネルギーのすべてをあの決意に注ぐなら成功するでしょう。私たちのうちで、からだを引きあげた者は、内なる神我にすべてをゆだねることによって『昇天』を果たし、それゆえ神我は私たちを通してその完全性、『神聖な生命プラン』を表現します。来なさい、行きましょう」
旅に出発するや南と西を意識した。ソルトレイクシティ、ニューオーリンズ、メキシコ湾、バハマ諸島上空を通過、それから川だとわかる銀色のリボンのところに来て、河口まで川をたどった。進むにつれて内なる神の声は「アマゾン川」と言った。
「今すぐ気づきなさい―サンジェルマンは教えてくれた―君の中にいる神はいつも導いていて、あらゆる状況を心得るマスターなのです」
ちょうどそのとき下降しだし、たちまち水面に触れた。足の下の地面のように固く思われたので、その感触に驚きの感情を覚えた。さらに説明してくれたところによると、着ている衣服は、からだの周囲からかなりの距離まで保護オーラを放ち、地球の地下層や水中のものを調査できる必要条件をそなえているので、水面にとどまるのと同じくらい、かなり水面下に行けるという。
「これは―彼はつづけた―科学界で私たちのからだの周囲の『電気力場』と呼ばれるものによりますが、この衣服にみちている電子力は、君たちの物質界で知られるものよりも繊細な高い電気の性質をおびています。いつか科学者でさえそれを偶然見つけ、いつも大気中に存在してきたのに、人類に役立てるためのその誘導制御法はまだ知られていないことに気づくでしょう。
いかなるたぐいの物理的装置よりもマインドのほうが、はるかに容易にその電子力を誘導できますが、機械的方法によって引き寄せ、制御できます。外界で電気として知られるものは偉大で精神的な生命エネルギーの一天然形態にすぎません。天地創造のはじめから終わりまで存在します。人間が意識を高め、内なる神我と交信しつづけるにつれて、この高等なパワーと力の用途の巨大な可能性に気づくでしょう。あらゆる活動段階でなしうる創造的作業において無限に役立てることができます」
それから水中に入り、全然抵抗もなく通過した。私はこの珍体験に少しぎょっとしていたが、あらゆる状況を心得るマスターとして私の中の神のみを意識する、という勧告を即座に思い出した。すぐに岸に近づき、たくさんのワニの上を通りすぎたが、私たちを見ても落ち着いている。奥地へ入っていき、記念碑のてっぺんのように見えるもののところにやって来た。
「これは一八メートルのオベリスクのてっぺんです―サンジェルマンは説明した―地面から約三メートルしか出ていません。大都市の最高地点のしるしでしたが、アトランティスが沈んだ最後の大異変の間に埋もれてしまいました。オベリスクは不滅金属でできていて、当時の象形文字でおおわれています。よく見て。象形文字はきわめてはっきりしていて、金属の不滅性により、あい変わらずそのままでしょう。都市はもともと川べりから一六キロのところに建設されましたが、沈んだとき河口は何キロも広がりました」
私たちは地上にのぼり、アマゾン川に沿って西経五六度地点まで進み、そこで天測し、それから西経七〇度地点に進んだ。サンジェルマンの説明によれば、ここはそれ以上の観察と調査研究を要する地方だという。彼の指し示した地域は、この二地点間のアマゾン川、および主な支流のうちの二つ、ジュルア川とマデイラ川にも及んだ。
「この文明は―サンジェルマンは言った―一万二〇〇〇年前から一万四〇〇〇年前の間に築かれました。私たちに関係のあるその国の部分は、マデイラ川とアマゾン川本流のあの合流地点から、アマゾン川がコロンビアとペルーに触れる西の地点まで達する、あの地域です。
一万三〇〇〇年前、アマゾン川は大きな石堤防の中におさまっていました。アマゾン川を取り囲む国土全体は少なくとも標高一五〇〇メートルにあり、今日の熱帯気候のかわりに一年中、亜熱帯気温でした。
この近辺の土地は広大な台地つまり高原を形成し、アマゾン川の河口付近には美しくて幅広い滝がありました。オベリスクのある都市は川の南およそ一六キロのところ、滝と海岸の間に築かれました。北のオリノコ川には巨大なワニや凶暴な動物が見られました」私たちはマデイラ川付近に来て、サンジェルマンは話をつづけた。
「これは古代都市、帝都の遺跡、当時の文明の最重要な場所です」ここで彼が手をあげると、今日の物質的都市と同じくらいはっきりと目に見えるようになった。
「よく見なさい―彼は説明した―帝都は一連の円の形に築かれ、車輪軸からスポークが出て行くようにビジネス街がその中心から出て行きます。外側の円は四・八キロごとに築かれたプレジャー・ドライブ。これが七つで、中心円を含めて直径七四キロの都市ができています。したがってビジネス活動は景観美やドライブに支障ありませんでした。
最内円は直径六・四キロ、その中に全帝国の行政府ビルがありました。通りはすべて美しく舗装され、周辺の建物や地面より四六センチから六一センチ低く建設されました。毎朝、水浸しになり、一日の活動が始まる前すっかりきれいに洗浄されました。
観察してください。プレジャー・ドライブの並はずれた壮麗さ。両側に堤防を形成している植物や花は、なんとすばらしく美しいのでしょう。建築デザインのいちばんの特色として、ほとんどすべての建物、特に住居の最上階の上に可調整ドームが建てられています。安眠か娯楽のどちらかの目的のため役立つよう四つの部分で建てられ整えられたので、このドームは自在に開閉できました。毎日決して不快に感じるほど暑くはなく、夕方すばらしい冷気が、日の出のように規則正しく山から吹き下りてきました」
帝都にあるものすごく美しい巨大建造物に入った。内部は脈のような緑色の筋がついたクリーム色大理石で仕上げられ、床はダークモスグリーンの石からなり、表面の感じは翡翠に似ていて、ほとんど一ピースのように見えるほど完全に敷きつめられていた。円形大広間には床と同種の緑色の石の大テーブルが何台かあったが、色あいは薄かった。大テーブルには、それぞれの端から約九〇センチのところに重い青銅の支脚がついていた。ここでサンジェルマンが再び手を伸ばすと、建物や敷地を通り抜けていく生きた帝国民の間に私たちはいた。
美しいピンクと白の肌をした金髪の人種全体が見えたので、驚いて一瞬息を止めた。男性はゆうに身長一八八から一九三センチ、女性は平均一七八センチ。目はきわめて美しい青紫色、とても澄んでいて、きらきら輝き、偉大で静かな知性を表している。私たちは右扉を通り抜けて、皇帝の謁見の間に入った。国賓や地方からの賓客を歓迎しているので明らかに皇帝の謁見日である。
「これは皇帝カシミール・ポセイドン―サンジェルマンは説明した―まことに神の化身でした。情け深く気高い顔つきに注目しなさい。でも、その中にはとてつもないパワーが秘められています。深く愛された神聖な昇天マスターでしたし、今もそうです。幾世紀もの間、神話伝説の中にその記憶は残り、帝国の完全さは叙事詩に記されましたが、永遠のときが流れるにつれて、そんな偉業の記憶は消えていき、次世代にしばしば忘れられます」
カシミール・ポセイドンは、あらゆる点で偉大な統治者だった。らくに身長一九三センチあり、体格がよく、矢のようにしゃんとしていた。立ちあがると周囲の人よりも背が高く、雰囲気すら支配権で変わったように見えた。金髪はふさふさし、ちょうど肩までたれている。王服は、金色のふち飾りをつけた、紫色のシルクベルベットのように見える生地からできていて、その下に柔らかな金地のぴったりした衣服を着ている。王冠は、額の真ん中に一個の巨大なダイヤモンドをはめこんだ、金のシンプルなバンド。
「この帝国民は―サンジェルマンは言った―驚異の航空術を発明して実用化し、世界各地と直接連絡していました。光、熱、エネルギーはすべて直接大気中から取り出していました。いろいろな昇天マスターがときどき現れ、帝国民の精神的向上のため支配統治し、完全への道を示してきたので、この時期のアトランティスの進歩状態はすばらしいものでした。
何度もはるばる時代を下って大文明が起こるたびに、はじめは精神原理の上に築かれ、発展期はそれらの生命法則が守られてきました。しかし政府か帝国民自身がだらしのない方向に進んだとたん、生命の悪用や不正が官民どちらかの習慣となって崩壊が始まり、それが続きます。そして、ついに均衡と清浄の基本法則に立ち返るか、自分たち自身の不調和によって壊滅し、均衡を再びとり戻して、新しくスタートするかのどちらかとなります。
カシミール・ポセイドンは、アトランティスの強大な昇天マスター統治者の直系子孫でした。実際、彼の統治する文明はアトランティスの文化と功績の所産でした。帝都は荘厳さと美しさで世界的に有名でした。
地方自治区を示すので、ものの輸送方法を見なさい。使用道具の機械装置に取り付けられた六〇センチ角、長さ九〇センチの箱のような器械で、帝国民の用いるエネルギーが発生しました。川からの給水は制御され、その水力も利用されました。帝国民に『法』を思い出させる方法のおかげで、いかなるたぐいの警察も軍事組織も不要でしたし、すばらしい支援パワーが放たれ、『法』を守れたのです」
公園の東に壮大な建物があり、近づくと入口の上に「人間のための神の生ける神殿」という銘があった。入ってみると外観よりもはるかに大きいことがわかり、少なくとも定員一万人の座席があったに違いない。
この巨大神殿の中心に乳白色の自発光物質からできた約六〇センチ角、高さ六メートルの支柱があり、白光を発するが、そこにピンク色がわずかに認められた。支柱の上には、ある種の物質からできた直径六〇センチの水晶球が載っていて、柔らかな白光を内側で自ら発しつづけていた。きわめて柔らかかったが、建物全体をきらきらと照らすほど強烈に光っていた。
「あの球は―サンジェルマンはひとこと言った―物質化してつくられ、『光』の強烈な焦点がおさまっていました。偉大な宇宙マスターのひとりが、帝国民のために生命を与える支援活動として取り出し、当時、神殿に置いたのです。『光』のみならず、国民活動と帝国を安定させるエネルギーとパワーも間断なく送り出しました。
偉大な存在が『光』球に焦点を集め、建物は後でその周囲に建てられたのです。まことにそれは、至高なる『神的存在』の物質化した焦点であり集中活動でした。設置した偉大な宇宙マスターは月一回『光』のそばに現れて、『神の法』『政府の法』『人間の法』を公布しました。このようにして生命の聖なる道を定め、当時の帝国民にとってキリスト活動の焦点だったのです」
ここでサンジェルマンが再び手を伸ばすと、話をする生きたこの偉大な存在の映像が私たちの前を通過した。あの「存在」の栄光は絶対に言葉で言い表せない。まことに神の子が完全に表現した者としか言えないのである。偉大な宇宙マスターが帝国民に「法」を公布しているのが聞こえた。
彼の「存在」と「神命」の記録と威厳は、私の記憶に永遠に焼きつき、あまりにもはっきりと意識に残っている。ちょうど今も私に定着しているように読者に神命を伝えよう。
「力ある唯一神の親愛なる子よ、あなたたちの使っている生命は、永遠に純粋、神聖、完全な『唯一の至高なる存在』から生じるのを知らないのですか。もしあの唯一の生命の美と完全さをそこなうことをすれば、あなたたちの神の贈り物を絶ってしまいます。あなたたちの生命は神の愛の聖なる宝石、宇宙の秘密の『起源』です。
神はまことにあなたたちを信じて、自分自身の心の『光』を任せます。それを大事にし、あがめ、さらに偉大な光と栄光につねに拡大しなさい。あなたたちの生命はきわめて高価な真珠。あなたたちは神の富の管財人。神のためにのみ神の富を使うように気をつけ、その使用に会計報告を出さねばならない『生命の光』を受けたことを知りなさい。
生命は連続するひとつの円であり、あなたたちの都市がその上に築かれる原理です。もしあなたたちの『起源』に似ているものを本当に創造し、自分自身の中でその愛と平安を知るのであれば、もし祝福のためにのみ、まことにあなたたちの創造力を使うのであれば、実際に生の円のまわりを回るにつれて生命の喜びを知り、さらに大きな喜びが加わることでしょう。もし『起源』に似ていないものを創造するのであれば、悪事はその種のものをさらに多く引き連れて、自分たちにはね返ることでしょう。
おのれの運命をまさしく選択し、おのれの神の生命を実際に使う責任を取るのはあなたたちだけなのです。偉大なる法から誰も逃れることはできません。久しく、私はこの『生命の法』を公布してきました。おのれ自身の法をあなたたちは独占しています。生命の完全さを望むなら、つねにおのれの神のもとへ行けるからです。
それている足を真理の細道に戻すためとか、案内のため山頂に設置された永遠の『光』を思い出させるため、私は今のようにいつも来るとはかぎりません。はるか遠い未来、私は人間の心、心臓の中で話すつもりですし、あなたたちが生命をまことに愛するなら、私に呼びかけ、多くの自己にとどまるでしょう。わが子よ、このことにまごつかないように。『光』である私を知りたいなら私を捜し、見つけねばならず、見つけたら私の中にいつもとどまらねばならないでしょう。
その日、父、母、子は人間の心臓で『一体』となるでしょう。子は永遠に扉、神への道です。将来、私はあの『光』だけにいるつもりなので、あなたたちのマインドと心臓には『私の光』があり、いつまでも『私の存在』のことをあなたたちに思い出させます。
そのとき、あなたたちが神、唯一の生命の平安で満ちみちるよう、あなたたちの心臓で愛を支配するため、マインドにおいて私は知恵となりましょう。からだは霊の道具にすぎず、あなたたちの霊に『私の光』が流れこまねばなりません。でないとあなたたちは滅びるでしょう。
マインドにある私の光は、あらゆる光の心臓への『道』です。あなたたちにある私の光によってのみ、あなたたちの存在の全細胞ひとつひとつにおいて光をだんだん大きな存在に拡大できます。あなたたちの喉には言語能力である私の光、私の言葉があります。この言葉によって私はいつもわが子を啓発し、守り、完全にします。この三重の使命を遂行しない言葉は私の言葉ではなく、話すとき苦しみしかもたらせません。
マインド、心臓にある私の光について瞑想しなさい。そうすれば万物の中を見て、全知全能となるでしょう。そのとき私に属さないものは、決してあなたたちを困惑させることができません。
今、話すこの言葉は、地球の銘版と地球の子の記憶に刻みこまれるでしょう。私が口にする遠い未来、神の子のひとりが私のこの言葉を受け取り、世界を祝福するため公表するでしょう。
そのとき、あなたたちが十分『私の存在』を受け取って、それをつねにあなたたちの生命と世界に働かせているとき、そのとき本当にまとうからだの細胞が『私の光』で輝いているのに気づき、あの『光の永遠のからだ』、キリストの縫い目のないローブをまといつづけることができるのを悟るでしょう。そのとき、そしてそのときにのみ再生の輪から解放されるでしょう。人間の体験を通して長旅をし、因果の法を実現したあかつきには、法の支配するあらゆる条件を超越し、あなたたち自身が『法』、まったくの愛そのもの、『絶対者』となっているでしょう」
「昇天したキリストの永遠のからだとはそのようなものであり―サンジェルマンは私の方を振り向いて言った―そのからだで支配権の笏を振り、自由になれます。ねえ、光が君のマインドと心臓にあるので、今でさえ君は『絶対者の光』の中に昇天できるのです。その光の中にしっかり立つなら、制限を受ける肉体を、いつまでも若い自由な『純粋な永遠の光のからだ』の中に引きあげて、時空と場所を超越することができますし、またそうなるでしょう。
君の栄光の自己はいつも君を待っています。その光に入り、永遠の安らぎと活動の休息を受け取りなさい。準備はいりません。全能です。十分に君の『光の自己』の抱擁に入りなさい。その瞬間、今日でさえ君のこのからだは昇天できるのです」
話し終えると映像は止まった。私たちはさらに短い距離を進み、平らな大石が地面に横たわっているところで止まった。サンジェルマンがパワーを集中すると石は地面から浮いて、かたわらに移動し、通路が現れ、階段が下に通じている。約一二メートル降りて、封じられた扉のところに来た。彼の手がさっと扉の上を通過すると、封が解けて、ある象形文字が明らかになった。「この文字に集中しなさい」彼は指示した。
そうすると「人間のための神の生ける神殿」という言葉が、目の前の扉にくっきりと浮かぶのが見えた。そこ私の前には、生きた映像でさっき見た物質的扉がある。
扉を開いて、それぞれの隅に建てられた小ドームのひとつの下の部屋に入る。この部屋には長さ約六〇センチ、幅三六センチ、深さ一五センチの金属箱が多数あった。サンジェルマンがひとつ開けると、尖筆であの文明の記録を記した金板が見えた。
四つの小ドームのそれぞれの下には封じられ保存された部屋があるに違いなく、大きな中央ドームは『光球』の上に建てられたと気づいた。四室の小部屋を連絡する秘密通路を見つけ、このうち第二室に進んで、神殿所蔵の宝石のいっぱい入った容器を見た。
第三室には金と宝石の装飾品、玉座椅子その他金の椅子があった。玉座椅子は、金細工人の見事な出来ばえの見本で印象的だった。一個の貝殻を形づくる背は統治者の頭上で天蓋をなし、その両側から小さな金色の鎖の輪でできた金色のドレープがたれ下がり、おのおの8の字を形づくる。このドレープは椅子の後ろで輪になり、上品かつ極端に優雅な効果をかもしだしていた。
部屋の真ん中には金色の青銅支脚の上に載った、長さ約四・三メートル、幅一・二メートルの本物の翡翠テーブルが一台あった。その近くには翡翠椅子が一四脚あり、足部の先端は金の飾り、シートは曲がり、背は美しく彫刻されていた。各椅子の背のいちばん上には、見張りが立っているように美しい金の不死鳥が載り、目にイエローダイヤモンドがはめこまれていた。このデザインは霊の不死性を象徴し、各人は、苦しみの火によって人間的創造物の灰の中から立ち上がるにつれて、完成した神聖な存在になる
第四室には異なった七タイプのパワーボックス―私はそう呼ぶ―があった。照明電力、熱力、推進力にするため、宇宙から引きよせたエネルギーを受け取って伝えるものである。この帝国民は、すばらしい飛行船によって世界各地と連絡していたことが記録からわかる。この文明の後、ピルアとして知られる文明が続き、その後インカ文明が起こったが、どちらも数千年に及んだ。
前述した都市が埋没する少し前、栄光の最頂点に達したが、帝国を発展させ支える光を引き寄せた偉大な宇宙マスターは、あの帝国の最後に出現した。さし迫る惨事の警告に住民が耳を貸していたら助かっていたのだが。
宇宙マスターは五年以内に帝国を壊滅させる地殻激変を預言し、これが最後の出現になると告知した。助かりたい者は国のあの地方を去るよう教わり、最終変動は一気に突発するという警告と共に避難場所に導かれた。
預言が終わると、からだは視界から急速に消えていき、帝国民がひどくショックを受けたことには、永遠の光を保持する水晶球と支柱が一緒に消滅した。当分、大衆は帝国を襲う惨事の預言で混乱したが、一年経っても何も起こらなかった。宇宙マスターの存在の記憶は薄れ、天命の成就について疑いが忍びこみはじめた。
皇帝と霊的成長のより進んだ者は帝国を去り、合衆国西部のある場所にやって来て、変動が起こるまで無事にとどまった。
残った帝国民の大部分はだんだん懐疑的になり、二年後、他の者よりも攻撃的な帝国民のひとりが、自分を皇帝だと主張しようとした。真の皇帝が帝国を去ったとき、宮殿と『光』を保持してきた神殿を両方とも封じた。皇帝志望者は、封じてある神殿の入口をぶち破ろうとして、扉のところで亡くなった。
五年目の最後が近くなった運命の日の正午、太陽は暗く、あたりは恐ろしい恐怖の雰囲気にみちた。日没時すさまじい地震で地面が揺れて、建物は破壊され、信じがたい混沌と化した。
今日の南米の地は均衡を失い、東に転がり、東海岸全体が五〇メートル沈んだ。数年間それが続き、それから徐々にもとの位置から二〇メートル以内の地点まで戻り、今日そこにとどまっている。
あの活動でアマゾン川は広がった。以前の川幅は二九キロ、今日よりも深く、端から端まで航行でき、今日のペルーのチチカカ湖から大西洋まで流れていた。昔、太平洋からチチカカ湖まで築かれた運河が一本あって、アマゾン川とつながり、全体として二大洋間水路を形づくった。
当時の大陸名はメル。主要な活動中心地がチチカカ湖である、ひとりの偉大な宇宙マスターの名前がつけられた。アマゾンという名前の意味は「ボートの破壊者」であり、前述のことに触れ、地殻激変期から幾世紀も伝わってきた。
西海岸の数多くの状態は、今日まで発見された科学的データから地質学者や科学者には説明不可能だったが、南米大陸全体の転がりで説明がつく。
このように自然の大地殻激変は見事な高度文明に宇宙的ベールをかけ、永遠の時が流れるにつれて、この中の断片のみが明るみに出る。外界ではこの真実は疑われるかもしれないが、今ロイヤルティートンに眠っているあの文明の記録はいつか証拠となり、その実在と当時の偉業を明かしてくれるだろう。
この途方もない活動を見るにつれて、なぜ文明というものは、あらゆる点でそれほどすばらしく、美しく、完全に誕生し、それから地殻激変の恐ろしい破壊活動で崩壊しうるのか不思議に思った。サンジェルマンはマインドの質問を知り、自発的に次の説明をしてくれた。
「いいですか―彼は言った―人類の一グループが、幸運にもこの偉大な宇宙的存在のような光の大マスターの教えと放射を受けるとき、人類にとっての生命プランと、自分たち自身の意識的努力によって生み出し、生きることになっている完全さとを知る機会が与えられます。しかし人々は生命を理解しようとせず、倦怠状態に陥ります。不幸なことに幾度となく幾世紀もずっとそうでした。個人の中の神のパワーによってこれらの物事を達成するのに必要な努力をしないのです。放射を与える者に頼りはじめます。意識的に努力して生命を理解し、それと調和的に協力しながら喜んで働くべきなのですが、それをおこたるときのみ支援パワーは打ち切りとなります。
自分たちの受ける祝福や恩恵のほとんどは、放射を与える者からの支援パワーのたまものであることを、人々はめったに悟りません。某一霊団が支配力の道を教わり、生から生へ神の生得権を思い出すなら、それ以上の援助の許されないときが来ます。そのとき昇天マスターの放射は打ち切りとなり、支援達成パワーは自分自身の努力によるものではなかった、という事実に直面せざるをえなくなります。
そのために努力したものだけを受け取れる、ということを彼らは理解せねばなりません。自意識をもって、積み重ねてきた体験をそんな活動にいかす必要が出てきます。それがなされるとき拡大と神の支配権が表現しだすのです。
自意識をもって努力をつづけ、人間的なものに対する神の支配権を表現しようとする者は誰ひとり失敗しません。自意識的な努力をやめるときだけ失敗が訪れるからです。個人が積み重ねてきたあらゆる体験には目的がたったひとつあり、それはおのれの『起源』に気づくということです。自分は誰なのか学び、自分自身を一創造者、また自分の創造物を自由に操れるそういうマスターと認めねばなりません。
全宇宙にわたって創造力がひとりの存在に与えられるとき、つねに創造責任はその力と共に共存します。あらゆる創造は自意識的な努力によるものであり、もしこの生命の偉大な贈り物を授かった個人が、責任を取って義務を果たすのをこばむなら、そうするまで人生体験は不幸や苦悩を与えて、つつくでしょう。というのは人類は決して限定条件で創造されなかったし、はじめに授かった完全さを十分表現するまで一休みできないからです。完全、すべての物質や力の支配、調和的使用、コントロールが『生命の道』、人類のための神聖な原作の青写真なのです。
個人の中の神は、あの完全と支配権です。みなの心臓、心の中にあるあの『存在』、生命の起源、あらゆる完全なよいものの贈り主。個人がおのれの『起源』に注意を向け、それをあらゆるよいものの泉と認めるその瞬間、自動的に自分とその世界にあらゆるよいものを流しはじめます。『起源』への注意が、自分のためにあらゆるよいものを開く金の鍵だからです。
各人に宿る生命は神であり、生命を理解し、自分を通してよいものを十分表現する自意識的な努力によって、はじめて外界で不調和を体験するのが終わります。生命と個人と法は『一体』であり、永遠にそうです。
来なさい―サンジェルマンは言った―ジュルア川付近の埋もれた都市に行きましょう」
西方へ旅をし、すぐに小高いところにやって来た。サンジェルマンは手を伸ばして、再びこの帝国民のエテリック・レコードをよみがえらせた。観察場所は帝国第二都市。さっきまでいた帝都は霊力と宗教活動の中心地だったが、今見ることになる第二都市は、全住民の物質的福祉に関係する商業中心地、政庁所在地である。ここには国庫、造幣局、政治活動、実験発明活動があった。
この都市からあまり遠くないところに帝国の莫大な鉱物資源のもと、巨大なアンデス山脈がそびえていた。気づいたことがひとつあり、この帝国民の間でいちばん注目すべき点に思える。みながそれほど安心しきり、完全に満足していたのである。動きまわりながら静かで見事なリズムを表現していた。映像は終わり、目に見える唯一の岩地に向かった。
サンジェルマンが岩のひとつに触れると、わきへ移動し、下へ通じる二〇段の金属階段が見えた。この階段をおりると金属扉のところに来た。扉を通りすぎて二〇段以上おり、堅く閉じた大きくて重い青銅扉前に立った。右に手をのばすと四角い穴があいていて、その中にオルガンストップのような金属製ストップがある。この中の二つを押すと大きな塊はゆっくりと開き、私たちは広大な部屋に立っていた。何もかもそっくりあの遠い昔のままである。発明品などの陳列室として使われ、一般人が入場していた。備品は、みな乳白ガラスのように見えるものと金属とを組み合わせたものからできていた。
「これは―サンジェルマンは言った―金属を鋼鉄のように強く不滅にするような方法で、ある金属とガラスを組み合わせる溶解工程でできました。現代のひとりの人間が、同一工程の発見にあと一歩のところまでこぎつけました。不滅にするには、たった一成分だけ足りなかったからです」
部屋全体は同じ特殊金属でつながっていて、ずっしりとした三枚扉から出入りできた。サンジェルマンはストップボックスのところに行き、この中の三つを押すと、すべての扉がいっせいに開いた。第一扉に入ると細長い通路があり、部屋というよりも貴重品保管室のようである。ゴールドディスクのいっぱい入った容器がつながっていたが、ディスクはだいたい1ドル銀貨の大きさで、皇帝の顔と「神の人間への祝福」と読む銘字の刻印が押されている。
第二扉に入ると、あらゆる種類のカットしていない宝石のいっぱい入った、似たような容器を見つけた。第三室の容器は平らで、当時使われた伝統的手法と秘密の工程の書かれた薄い金板が入っていた。
「この中には―サンジェルマンは言った―あのころ使われなかった伝統的手法と工程がたくさんあり、現代において使われるようになるでしょう」
彼がストップボックスのところに行き、もうひとつ押すと、さっき気づかなかった第四扉が開いた。造幣局と国庫を連絡するアーチトンネル、通路につながっている。少なくとも四〇〇メートルあったに違いないが、突きあたりの広大な部屋に入った。
そこは造幣局の主要部分、きわめてすばらしい構造の機械類でごった返している。その中に金の刻印と宝石のカット、研磨に使う機械が見えるが、簡単に魅惑されるほど機械操作は完璧だった。ここでサンジェルマンは、水晶のように透明な可鍛性ガラスの見本をひとつ見せてくれた。
この部屋には莫大な量の天然の金塊、砂金、おのおの三・六キロから四・五キロの重さのインゴット金がある。一箇所にあるそんな驚くべき富の山に口がきけなかった。サンジェルマンは私の受けた衝撃を知り、ひとこと言った。
「君の目の前にあるような、そのような量の富を人類の大部分に解放することはとうていできません。今日の商業界に見られる利己主義のため愚行に走り、人類は自然の贈り物をさらに多く浪費するからです。
この地に生まれ変わる霊の使用と祝福のため、神と自然は惜しみなくその資源を地球に与えてくれますが、人類の感情内の利己主義と権力欲のため『生命の高等な道』を忘れ、非人道的行為をしでかします。
多数を支配するため立ち上がる少数は、多数を助けることが個人をいちばん助けることだと知る知性を持ちあわせるべきですが、この『法』を認めるのをこばむなら、おのれの利己主義による自滅がそのあとに続きます。利己主義や人を支配したいという権力感情は理性をくもらせ、自らの危険に対する外部マインドの知覚をにぶらせ、いずれの場合にも向こう見ずに破滅につき進み、霊的、精神的、道徳的に破滅し、続く三、四回目の生まれ変わりにまでそれが及びます。
人類が、あらゆる形態のおのれの利己主義や渇望という泥沼からはいあがるとき、はじめて神と自然が正しい使用のため用意しておいたものを、すべて任せることができます。しかし個人は誰でもおのれの利己主義と渇望を取り除き、心を清めるにつれて、この全財宝をまるまる使うかもしれず、そのとき調和的に、しかも他人の祝福のために使うでしょう。個人は、この贈り物の管理人になる用意ができます。この宝の分配者および保管者となるにふさわしい者だけが、すでに始まったこの時代、富を限りなく使うでしょうから。人間が正しくこの贈り物を使うために神と自然は与え、正しく使うことが受け取れる唯一の条件なのです」サンジェルマンは両手を胸の上で交差し、つづけた。
「力ある神よ、あなたの子が、あなたのみを望むぐらい、その心の中にしっかりと入りこんでくださいますように。それなら誰も、あなたの偉大な贈り物にひとつも不足しないでしょう」
見つけたときのようにサンジェルマンはすべて封じ、肉体のところに戻り、私はすみやかにまた入りこんだ。
サンジェルマンは、生きた実質のたっぷり入ったクリスタルカップを再び渡して、言った。「ねえ君は非常に貴重な助力者になるでしょう。どうか神がいつも君を祝福してくださいますように」その祝福と共に会釈して、行ってしまった。
第7章
秘密の谷
しばらくして、ある朝、アリゾナ州トゥーソンの某住所に来てくれという奇妙な手紙を受け取った。提供する情報は、本人が直接説明することしかできないような性質のものだと書いてある。依頼のしかたが変だと思ったが、招きに答える内なる願望を感じた。
数日後、教えられた住所に行ってベルを鳴らすと、すぐに背の高いスマートな紳士がドアを開けた。歳は四〇ぐらい、深いグレーの髪、グレーの目、たぶん身長一八六センチ。
私が自己紹介すると、彼は真心のこもった温かい握手で挨拶した。絶対にうそをつかない信頼できる本性の持ち主だということを、まぎれもなく物語っていた。目は落ち着き、恐れを知らず、ものすごい蓄積エネルギーを所有する印象を人に与える。
並はずれた内なる調和を彼に感じ、それが深くてすばらしい友情のはじまり以外の何ものでもないことがわかった。たがいに引きつけあうと感じさせる内なるものに、彼のほうも気づいたようである。中に入るよう勧められ、腰かけた。
「よく来てくれました―彼は口を開いた―深く感謝しています。あなたには妙に思えたかもしれません。後で話す人たちのひとりから住所を教わりました。弁明として、きわめて注目に値する発見をしたと、こう言わねばなりません。一緒に連れて行って、本当のことだとあなたに証明することができるまで、信じてもらう必要があります、
私の関係している知合の中で、これを明かせる唯一の人物として個人的に直接連絡を取るよう忠告を受けたのです。事の発端として二〇年前の出来事から始めないといけません。
当時の私には美しい妻がいました。今だからわかりますが、妻は精神的にずいぶんと成長していたのに私は気づきませんでした。息子がひとり生まれ、目の中に入れても痛くないほど二人でかわいがりました。五年間、私たちは幸福そのものでした。突然、何の警告も、はっきりした理由もなく子供が行方不明になったのです。
何週間も捜しに捜し、見つけるため人間の力で可能なことすべてをしましたが、無駄でした。とうとう、いっさいの望みを捨てました。妻はショックから決して立ち直らず、五ヶ月後亡くなってしまいました。
亡くなる最後の数日間、奇妙なことを頼みました。死後七日間、地下納骨所に遺体を保管し、それから火葬にするようにと。
このことに関して一度も話題にしたことがなかったので、私にはかなり変わっているように思えました。けれども妻の望みどおりにしました。葬式の五日後、共同墓地管理人から電話があり、その日の朝、地下納骨所が開いていて、遺体が消えているのに気づいたと言うではありませんか。私の驚きを想像してみてください。不思議な出来事に関する手がかりは、いっさい見つかりませんでした。
一六年後のある朝、目覚めると、自室の床の上に消印のない私あての手紙を見つけました。拾って開け、読んでみると、何が何だかわからない疑うような内容でした。こう書いてありました。
妻子は元気で丈夫に生きています。まもなく会えます。そのときまで辛抱しなさい。死は存在しないと知って喜びなさい。約束の時間に、このようにあなたに指示が届くでしょう。その指示に暗黙のうちに従うことになります。すべては、あなたの絶対的沈黙にかかっています。見せて、あまりにも謎めいたことすべてを十分説明しましょう。事実は小説よりもはるかに奇妙で、さらにすばらしく、その理由がそのときわかるでしょう。最も異常な小説でさえ、宇宙のどこかにある事実の記録にすぎないのですから。
友より
私の驚きを想像できると思います。最初その言葉を信じませんでした。この後、三日目の夕方、暖炉の前にすわっていると、愛する妻の声がはっきりと明瞭にまるで部屋の中そばにいるように聞こえました。
『いとしのロバート、私は元気に生きていますし、息子も一緒です。もう一度、一緒にいると思うと私たちは幸せすぎるでしょう。メッセージを疑わないで。まぎれもない真実。信じてもらえるなら、あなたを私たちのところに連れて行きます。あなたがいつか使い方を習う光線音によって話しかけています』私はもう緊張に耐えられず、言いました。
『姿を見せてくれ。そうしたら信じる』即答する声。
『ちょっと待って』約三分後きらきら輝く一筋の金色の光線が部屋にさし、トンネルを形づくり、その向こう側の端に美しい妻が立ちました。妻です。間違いありません。
『ねえ―妻は言いました―奇跡に思えることがあなたの人生の中で数年間起こったのに、正しい方向に注意を向けていなかったので、今回まで待たねばならなかったの。あなたのところに届くメッセージを信じて。そうしたら私たちのところへ来て、きっと新世界が開けると思うわ。二人のすばらしい愛をはばむものはないのよ』
光線はぱっと消え、それと共に声も聞こえなくなりました。私の喜びは、とどまるところを知りませんでした。もはや疑えません。ここ何年かぶりにほっとして、安らぎ、解放を味わったのです。それから数週間待ち、私の中で心の準備が着々と進んでいったのが今ではわかります。ついに、そんなにも待ちこがれたメッセージと共に、従うべき指示と地図も届きました。
アリゾナ州トゥーソンの南西の高い山々に行くことが、この地図からわかりました。友人たちにはちょっと探鉱や試掘に行ってくると言い、直ちに出発する準備をしました。馬を一頭連れて行き、動物を箱に入れ、与えられた指示に従うのにほとんど不便も困難も見当たりませんでした。カラスのように飛んで行けたら、二日でその距離を簡単に踏破したのですが。
ちょうど三日目の日暮れ前、行き止まりの峡谷に来ましたが、地図がなかったら気づかず通りすぎていたでしょう。暗くなったとき、ちょうどテントを張りおわりました。毛布にくるまって丸くなり、すぐに眠りに落ち、朝目覚めると若者がすぐそばに立って、見つめているという大変鮮やかな夢を見ました。
本当に目覚めたときには、驚いたことに実際に生きている若者が立って、じっと見つめていたのです。若者は美しい笑みを浮かべ、こう言って挨拶しました。
『ねえ君、従ってくれるものと期待しています』準備の整った私の所持品を若者が持っていることに気づき、それ以上話しあうこともなく向きを変え、峡谷の奥に向かって道案内してくれました。約一時間後、道をふさぐように見える崖のため止まりました。
若者は振り向いて両手を岩の上に置き、押しました。たぶん縦三メートル、横三・七メートルの壁の一部が深さ約三〇センチ沈み、それから一方へスライドしました。私たちはトンネルに入り、数世紀前は地下水流の水底だったに違いありません。友は後ろの入口を閉じて、私たちは振り返り、前進するにつれて柔らかい輝きがあちこちに広がったので、かなりはっきりと見えました。目に映るものすべてにびっくりしましたが、教えで受けた『沈黙すること』という訓戒を思い出しました。
一時間以上トンネル内を歩きつづけ、ついにずっしりとした金属扉のところにやって来ました。友が触れると、ゆっくり開きました。友はわきに寄り、私が通りすぎるのを待ちました。目の前に広がる光景の美しさに喜びのあまり、ほとんどかたずをのんで明るい陽ざしの中に足を踏み出したのです。前方に広さおよそ四〇万平方メートルの驚くほどすばらしい谷が横たわっていました。
『ねえ君―若者は言いました―長期不在後、故郷に帰ってきたのですよ。まもなくすべてを理解することになります』そう言うと、谷の端の奥地にある切り立った崖の足もと近くの美しい建物に案内してくれました。近づくにつれて多種類の果物や植物がたわわに育っているのが見え、その中にはオレンジ、ナツメヤシ、クルミ、ペカンの木があります。一本の美しい滝が崖の上を流れ、そのふもとに澄んだ小池をつくっています。建物はどっしりとして大きく、数世紀もの間そこに立っているように見えました。
あと少しで到着しそうなとき、白衣の美女が入口に姿を見せました。近づいてみると、わが愛する妻が、さらに一段ときれいなって目の前に立っていたのです。次の瞬間、妻を抱いていました。あの十数年間ずっと味わってきた苦悶の後に。もう少しで忍耐の限界でした。妻は振り返り、私を連れて来た若者に手を置いて、言いました。
『ロバート、これが私たちの息子よ』
『息子!』その言葉しか言えず、すんでのところで感情に圧倒されるところでした。
息子は進み出て両腕を私たち二人にまわし、私たち三人はもう一度幸せにも、この上なく深い愛と感謝にひたって、そこにたたずんでいました。蒸発してから一六年になることに突然気づき、もう二一歳に違いありません。私の考えに答えて言いました。
『そうだよ、パパ、二一歳だよ。明日が誕生日さ』
『どうやってそんなに容易に考えを読めるのだい?」
『ああ、僕たちにはいとも普通で簡単なこと。ごくごく自然で、やり方を理解すると本当にとても簡単なんだ』
『入って―息子はつづけました―おなかがすいたでしょう。何か食事を』二人は腕を私にまわし、古ぼけた建物に入りました。中はピンク色の大理石と白縞瑪瑙で仕上げられていました。何もかも朝日のすばらしい輝きであふれている美しい部屋を一室見せてもらいました。気分がさわやかになり、白いフランネル一式が私のために用意されているのに気づきました。試着してみると、まさにぴったり。驚きましたが『沈黙すること』という訓戒を再び思い出しました。階下へ降りると、自分と同じ背丈で大きな鋭いとび色の目をした、印象的に見える紳士を紹介されました。
『パパ―息子は言いました―この人が、われらが親愛なるマスター・エリエル。ママと僕二人の命の恩人で、僕たちがここで一緒にいられるよう、パパの準備ができるまで僕たちを最近数年間ずっと訓練してくれたんだ。こっちに来るようメッセージと指示を送った人。パパのはっきりした訓練の始まる時が来たから』
壮麗な食堂に入ると、感嘆の念の表現をおさえることができませんでした。建物の南東の角、メーンフロアに配置され、午前と午後の陽ざしが降り注いでいました。壁は濃密に彫刻したクルミ材からでき、梁天井は六角形デザインがモチーフ。一本彫刻の絢爛豪華な支脚に載る、少なくとも厚さ五センチの一ピースの堅いクルミ材がテーブルに使われ、まるで樹齢数千歳のように見えました。私たちはテーブルのまわりに着席し、まもなくすらりとした若者が入って来ました。息子はこう言って紹介しました。
『兄弟フン・ウェイ。幼児のとき一時まさに命が奪われようとしていて、われらのマスターが中国から連れて来たの。古代中国の家族の出で、すばらしいことがたくさんできるのさ。いつも僕たちの役に立ちたいと思い、彼を兄弟と呼べることを名誉に思い、幸せ。僕が、かつて知った最も喜びに満ちた本性のひとり』
朝食の中に美味なイチゴとおいしいナツメヤシの実、ナッツケーキがありました。私たちが大きな居間に入ると、マスター・エリエルは言いました。
『双子光線であるあなたの愛する妻が死のうとしているとき、チャンス到来とばかり、ある援助を与えて昇天状態にできたのですが、こうしてずっと大きな自由と、はるかに多方面にわたる奉仕能力に恵まれるのです。あの援助を与えることは私の大きな名誉であり、喜びでした。
私はひつぎを開けて、意識活動を復活させ、からだを引きあげることができました。光を求める彼女の願いは、とても大きかったので、すでに高い希薄点に達していました。昇天を可能にしたのは光への強烈なあこがれと熱望でした。亡くなったとあなたが思った日、私はこのことを彼女に説明しました。
あなたたち三人は、ある昔の化身で私の子供でした。そのとき数世紀を通じて続くすばらしい愛が生まれたのです。彼女の深い愛ゆえに今回の援助と引きあげが可能になったのです。
身代金目的で誘拐されたあなたの息子は、この峡谷に連れて来られました。二人の誘拐犯は口論を始め、ひとりは子供の命を奪うつもりでした。
私は誘拐犯の前に現れ、子供を奪い返しました。自分たち自身の恐怖で呆然とし、どちらも回復せず、数週間後亡くなりました。もし故意に人の命を奪うか、奪おうと頭の中で決心するなら、きっと自分自身の命を奪うことになる原因を始動させてしまったのです。
人の死を望む感情とか願望は同じことになります。相手に向かって出て行き、それから発信者に帰る旅が始まるからです。不正への怒りや恨みが激情と共に爆発して、ある人を世界から駆除しようとするままにしておくことが何度もあります。これは知らぬ間に作用するとらえがたい死の思考形態であり、発信者に必ず戻ります。
この不変の法則から誰ひとり逃れられないので大勢の、本当に大勢の人々が、人間的自我のこのきわめて巧妙な活動によって自滅します。その反作用には多くの段階や面があり、人類が全体として次々とからだの崩壊を体験していたのは、そんな思考と感情に身を任せるからです。
思考、感情、話し言葉のこのとらえがたい活動によって生じる死と比べれば、肉体的暴力で亡くなる人類の数は微々たるものです。どうしても生命の法を学んで、それに従わないため、人類は知らぬ間にこのようにして数千年間絶滅していました
唯一の生命の法すなわち愛しかありません。あの永遠なる慈悲深い神意にどうしても従おうとしないか従わない、自意識のある思考する個人は、肉体を保持できませんし、保持しないでしょう。愛でないものはみな形がばらばらになり、思考、感情、言動のどれであるかに関係なく、意図するしないにかかわらず、法はおかまいなく作用します。思考、感情、言動は、それぞれ作用するいくらかの力にすぎず、永遠にそれ自体の軌道を動きます。
人間が一瞬たりとも創造を終えないことを知れば、間違った創造物を内なる神の存在によって浄化できることに気づき、こうして自分の制限から解放されるのですが。
人間は自分のまわりに人間的不調和というまゆを作り出して、その中で寝つき、まゆを作れるなら壊すこともできるのを少なくとも一時忘れます。霊の翼すなわち憧憬と傾倒、決心によって、自ら創造した暗黒をうち破ることができます。そのときもう一度、内なる自己の真ん中で神我の光と自由に生きます。
けれども、あなたと愛する家族、というよりわが愛する家族の活動において、あまりにもたくさんの悲しみをおびるように見えた雲は今や裏返しになり、そのすばらしい金色の裏側を明かします。まばゆいばかりの光の輝きの中に今来たあなたは、二度と遠のいて行かないでしょう。
たいていの場合、自分たちのためにときどき計画されるすばらしい物事を知れば、このもっとすばらしい善事の接近を知らずに邪魔することはないのですが。ここに招待したのは愛する家族との再会のためだけでなく、あなたの中に眠っている強力な神のパワーの存在、使用、支配に関する明確な教えを授けるためでもあるのです。それを解き放ちコントロールする方法を理解するとき全能になるでしょう。
あなたの愛する妻は、あなたとの交信に光と光線音を用いました。この知識とそのパワーを説明しましょう。そうすれば、あなたも意識的に思いのままそれらを操れるようになるでしょう。深く感じ、あの特質を意識的に支配するとき、どんなときにも解き放つ準備のできている、強力な神のパワーを認識するようになるでしょう。
訓練のため、ここに六週間とどまり、それから受け取った知識を使うため外界に戻ることになっています。今や私たちの一員だから、いつでも戻って来なさい』
あの六週間が自分にとってどんな意味があったのか言葉で表現できません。教わった知識を使い、そんな知恵を応用する自分自身の能力を認識して驚きました。まもなく自信を持ちはじめ、何でもずっと簡単にできるようになりました。人間にとってあまりにも神秘的で異常に見えるものでも、この驚くべき『内なる存在』にとっては自然で正常だとわかりました。
まことに神の子だと悟らねばなりませんでした。あらゆるよいものの起源の子として、限りない知恵とエネルギーが私の意識的指図に従い、マスターのようにそれを方向づけるとき結果がすぐに出ました。『偉大なる法』を用いる自分自身の能力に自信を持つにつれて、実現がますます早くなったのは当然です。この大マスターからわき出て、いつまでもどんどん流れている愛と知恵の泉を、私はまだ不思議に思います。私たちは、親子間にかつて存在しえたいかなる愛よりも強く、深く献身的にエリエルを愛しています。なぜなら精神的知識を与えることで生じる愛の絆は永遠であり、人間の体験によって生じる愛がどれだけ美しく強くても、そのいかなる愛よりもはるかに深いからです。エリエルは、よく私たちに言いました。
『あなた自身が神の愛の永遠の泉になって、思考の向かうあらゆる場所に愛を注ぐなら、あなたは、あらゆるよいものを引きつけるすばらしい磁石になるので、施しをするのに助けを求めねばならないでしょう。霊の平安や落ち着きと共に、強制的に外部マインドを服従させるパワーが解放されます。権威をもって服従を要求せねばなりません。ここ、この秘密の谷のわが家は、四千年以上使われてきました』
ある日『神の所有権』について注目に値する説教をした後、エリエルは私をじっと見つめて、散歩しないかと持ちかけました。私たちの入った谷の向こう側に案内してくれたのです。南壁付近で、それと平行に稜線が東から西に走っていました。地面から始まり、高さ約二メートルまで上昇し、長さ約六〇〇メートル伸び、それから再び地面に降りています。近づくにつれて白水晶の鉱脈だとわかりました。マスター・エリエルは鉱脈が地面に来るところに歩いて行き、足で一片けってボロボロにしました。金に非常に富んでいるのがわかりました。金への人間的な愛着がこみ上げようとしましたが、『内なる存在』がそれをすぐに抑えると、マスターはにっこりして、ひとこと。
『お見事です。今ヨーロッパでやるべき仕事があり、当分あなたを置いていかねばなりません』ほほえんで、直ちに行ってしまいました。はじめて自分の所有する完全な支配権を見せてくれましたし、このように行えたのです。エリエルがさっきまで立っていたちょうどその同じ地点に、すぐに息子が目に見えるように現れ、私の驚きに笑いこけました。
『ママと僕は―息子は言いました―同じく好きなところにからだを運べるのさ。驚かないで。自然法則だけど、今のところまだパパは使っていないので不思議で異常に見えるだけ。それが本当に正常なのは、中世の人々にとって電話が正常なのと同じだよ。電話構造の法則を知ったら、彼らも今世紀の人類と同様に利用できたんだ』
秘密の谷へのあの家族訪問以来、私は七度そこにいました。最後、外界に戻ったときマスターはあなたの住所を教えてくれたので、あなたにここに来てもらえないかと頼んだのです。私と一緒に戻るようマスターはあなたに招待状を出します」
何時間も話しこんでいたことに主人はふと気づき、がまんしてもらえるよう頼んだ。私に関するかぎり、あまりにもすばらしい体験で、すごく興味深かったので時がたつのも忘れていたと私は言った。承諾し、マスター・エリエルの招待に深く感謝して、正直にそう言ったとたん背の高い若者が部屋に入ってきた。
「紹介します。われらが兄弟フン・ウェイです」主人は紹介しながら言うと、この上なく完璧な英語で返答した。
「光の心を持つわが兄弟は、遠い旅をしてきました。私の心は恍惚と喜びに踊ります。私の霊はあなたの落ち着きと光輝を感じます」主人に直接話しかけながら、つづけた。
「忙しいのはわかっているので、助けに来たのです」
「一緒にパンをちぎって食事でき、私たちは大変うれしく思います」私の方を振り向いて友は言い、連れだって食堂に入った。夕食はおいしく、食事がすむと主人は再びエリエルとの個人的体験の数々に関して会話をつづけた。実に注目に値し、人間の意識面からだけ話しているが、私たちの神の見地からも話し、何もかもがこの上なく自然だったし、今もそうである。
突然、一条の光線いや、むしろ光チューブが部屋にさしてきて、会話から主人の話している双子光線だとわかった。すぐに光線は私に向けられ、主人は言った。
「おまえ、兄弟を紹介させておくれ。彼に会うようマスター・エリエルが私に要請したのだよ」
双子光線が見え、まるで部屋の中、そばに立っているのと同じくらいはっきりと声が聞こえた。この交信法はすばらしく楽しい体験であり、音とビジョンを伝達できるチューブを形成するほど「光」を集めることができる。サーチライトと同じくらいリアルだった。
主人は、ぜひとも山への出発日まで家にとどまるよう勧めてくれた。私たちは会って七日目の夜明け前に出発し、その時点まで人生でいちばん忘れがたい体験だった。彼の言ったことは、こと細かな点まですべて本当だと判明した。
秘密の谷への到着はきわめて楽しい出来事であり、私たちはものすごく幸せだった。主人の双子光線と息子に会い、それから古代の建物を見せてもらった。それほど大勢の学徒が、内なる自己の法則に関する真の知識をそこで受け取り、永遠の解放を成しとげたのである。
偉大な神のパワーが数千年間、集中してきた場所に立つのは不思議な感じがし、昇天マスターたちは多少の仕事のため退去したのである。すわって、光栄にもそこに来る学徒たちが祝福を受けたのを見つめていると、マスター・エリエルは話しかけた。
「やあ―話しはじめた―すばらしい解放に近づいています。あなた自身の心に宿る『マスターの存在』をしっかり絶えまなく受け入れなさい。そうすれば大歓喜の原因だけが残るでしょう」エリエルは右手を伸ばすと、可視と不可視の間のベールがわきに引き寄せられた。
「あなたに見てほしいのです―エリエルはつづけた―昇天した私たちが私たちの世界の崇高で荘厳な活動を見るように。私たちの中にはもはや疑いも恐怖も不完全さもないので、ここで絶えまなく神の子として証言します」あのすばらしい人々と過ごした日々の間、自分のものだった喜びと名誉を私はいつまでも覚えているだろう。
「毎日―エリエルは言った―時空を無にする光と光線音が使われるのを目にするでしょうし、今電話が使われるのと同じくらい自然に、人類は近い将来これを使う運命にあります。これは個人が導き方を学べる最も驚くべき活動のひとつです。鉛筆のように使って金属とか空に記すため、光線を引き寄せてコントロールできますし、コントロールする人が望むかぎり、書いたものは目に見えつづけます。
学徒が無知な世間の世論に逆らうほど十分強いとき、昇天マスターの表現する神の個人的活動の驚異を証明する準備ができています。
これができるまで他人からの提言や示唆のパワーと疑いの放射とが、しばしば真理探究をあきらめる程度まで、学徒を断続的に不安にさせて邪魔するでしょう。教わった知識のとうとうたる流れをさえぎるのは不調和です。不調和は、この地球の悪の力が『光』の方を向く決心をした学徒の外部活動に入る巧妙な手段であり、くさびなのです。
ひとつの感情なので、そんな活動はきわめて巧妙であり、その存在に本当に気づく前にじわりじわり忍び寄ってきます。信じられないほどくり返し起こり、知らない間に成長するので、すでに勢いがつくまで何が起こったのか悟りません。
この感情は、わずかな疑いとして始まります。疑いは二、三回感じるだけで不信や邪推になります。不信や邪推は感情体に一、二回うずまいて、害悪をなすのではないかという嫌疑になり、嫌疑は自滅です。
外界に再び戻るので、このことを覚えておきなさい。そうすれば、あらゆる人生体験を通じて防護手段となり、不調和があなたに触れることはないでしょう。人が嫌疑を発するなら嫌疑をかけられるでしょう。誰でも自分の世界に置くものが、まさしくそこにあるからです。この『変更できない永遠の定め』は全宇宙くまなく存在します。あらゆる意識衝動は旅をして、発信源である中心点に戻り、原子一個でさえまぬかれません。
真の『光』の学徒は『光』の方を向き、自分の前に『光』を発し、どこへ行こうと包みこむ光輝を見、『光』を絶えまなくあがめます。人間のマインドの疑い、恐怖、嫌疑、無知に背を向け、『光』だけを知ります。この『光』がおのれの起源、真の自己なのです」
この贈る言葉と共にエリエルは別れを告げ、私は外界生活の毎日の決まりきった仕事に戻った。
第8章
神の全能なるパワー
翌日連絡を受け、それを通じて、私のすべての時間と注意を要するビジネス活動にたずさわっていた。期待だけで大いにわくわくして狂喜にひたり、ビジネス体験で今までに味わったことのない爽快感が生じ、元気づいた。
仕事が進む中で、とても傲慢な性格の男性と個人的に親密に接触した。彼のビジネスに対する態度全体は、悪だくみが失敗するか、とにかく反対されたら力ずくで欲望を達成するというものだった。
自分自身の知力と意志力のみを信じ、他の何も信じず、また知ることもなかったのである。成功への道に立ちはだかる人も物も、決して迷わずつぶすか破滅させ、自分自身の利己的目的を達成するため、あらゆる手段を用いた。
次の体験が起こる約三年前出会い、当時の態度にほとんど無力感を抱いてしまったが、たえず送り出す支配感情は、それほどまでに威圧的だったのである。しかし私自身の受け取り方をよそに、外部活動に焦点をあてた力だけで人を支配するのがわかった。彼と共同で仕事をしなければならないことがわかっていたので少々不安だった。直ちに神の法の適用によって彼の扱い方を探ると、「内なる声」が次のようにはっきり言った。
「『内なる強力な神』にこの状況を十分に担当処理してもらうべきである。あの『内なるパワー』は支配されることを知らず、つねに無敵である」
とても感謝し、すべてを神の管理にまったくゆだね、他の二人と共にこの男性に会い、遠くの州で鉱山資産を視察するため同行を承諾した。私は大変貴重なものだと感じた。所有者は初老の女性だったが、よき夫は数ヶ月前に鉱山事故死していたのである。
夫は不安定な状態で物件を残していき、傲慢な友人は、公正な値段ではなく付け値で鉱山を買う決心をしていた。
自動車で長旅した後、翌日二時ごろ目的地到着。私たちは所有者に会ったが、神の祝福を受けた誠実高貴な霊だと悟った。
そのときその場で、夫人は公正な扱いを受け、資産の対価を十分受け取るべきだという断固たる態度で臨んだ。夫人はすてきな昼食に招待してくれ、つづいて鉱山を検査した。私たちは作業場、坑道、鉱脈に沿って掘ったいわゆる樋押坑道、立て坑、ストーピングを通り抜けた。観察すればするほど確かに何かおかしいと思った。雰囲気そのものが私にそれとなくそう言っているように見えた。
豊かな鉱脈を掘り当てたのは間違いないのに、所有者に報告していなかったのである。買い手は、ひそかにそんな活動の見張りに労働者のひとりを置き、数週間の見張りの間に監督の信頼を得たことが、なぜかわかった。監督は根は善人だが、霊的に話せば目覚めていないことを悟った。
立って監督に話しかけるにつれて、私の神我は何が起こったのか十分に暴露した。少し前この二人が作業の視察中、山の中心部に直通する坑道の採掘現場の爆破地点に来た。爆風は、水晶をつれた大変豊かな金脈に侵入したのである。監督は今にも駈け出して、所有者に報告しようとしていたが、そのときスパイ労働者がひとこと。
「待て、俺はこの鉱山を買う男性を知っている。君が今の地位にいつづけたいなら掘り当てたことは黙っていろ。監督としてここにとどまるだけでなく、君のために五〇〇〇ドル用意するよう取りはかろう。いずれにしろ老女のふところには生活費が十分手に入る」地位失墜を恐れた監督は承諾した。
鉱山検査で主要坑道の突きあたりに来て、ここが豊かな金脈を掘り当てた場所だと強く感じた。上手に隠し、作業の危険なもろい層として偽装してあり、それが鉱山所有者である夫人に提出した報告書だった。この場所に立って他の人たちと話をするにつれて霊眼が開き、大当たり、隠蔽、監督への申し出と受諾、ことの一部始終が見えた。感じたことが真実だと確かめられて、ありがたかったが、待たねばならないことがわかった。所有者の邸宅に戻り、交渉スタート。買い手は、こう切りだした。
「アサートンさん、この資産にいくら価値があると思いますか」
「二五万ドルはあると思います」夫人は礼儀正しく静かに答えた。
「ばかな!―大声をあげた―非常識にもほどがある。その半分の価値もない」しばらくこの鉱山で騒ぎたて、癖のように怒鳴っておどした。このやり方は以前何度もうまくいき、古い行動方針をいまだに踏襲していたのである。論争して怒鳴り、こう言って話を終わった。
「アサートンさん、あなたは売らないといけない立場にあり、寛大になって一五万ドル払いましょう」
「考えましょう」怒鳴って言うことを聞かせようという態度に恐れをなし、その考えを受け入れ、横柄な無礼に屈しはじめた。
ひるむのを見るや全状況にひどい圧力をかけだした。
「待てない―彼はつづけた―時間は貴重だ。即決か取引中止か」
彼はポケットから書類を取り出して、テーブルに置いた。どうすることもできなくて周囲を見まわすアサートン夫人に私は首を横に振ったが、こっちを見ない。契約書は広げてあり、夫人は部屋を横切り、テーブルに着席してサインの用意をした。夫人を守るつもりなら、すぐに行動せねばならないことがわかり、夫人のすわっているところに行き、傲慢な友人に話しかけた。
「ちょっと待ってください、君―私は言った―鉱山の正当対価をこのご夫人に支払いましょう。そうでなければ購入してはいけません」彼は憤怒の矛先を私に向けて、辛らつなののしり言葉を浴びせ、あいかわらず同じ作戦をこころみた。
「私の提示額での鉱山購入を誰が邪魔するつもりなのか知りたいのだが」彼は逆襲した。私は、内なる強力な神のパワーの大波が怒濤のように押し寄せるのを感じ、執念深く手厳しい非難に心を動かさず、返答した。
「神が邪魔するでしょう」
あの返答に彼はどっと笑いだした。あざ笑うかのごとく侮辱し、荒れ狂って取り乱した。私は静かに待った。
「ばかだね、君―怒りにみちた激しい弾劾演説を再び始めた―神についてぺちゃくちゃしゃべるが、君も神も何も私を止められやしない。ねらう獲物は手に入れる。何が何でも。私を止めた者はまだ誰もいない」傲慢さは限りないように見え、裸の自分をさらけ出した。感情の犠牲者にすぎないマインドとからだを。抑えきれない感情下にある場合がいつもそうであるように理性は麻痺していた。でないと、それ以上侮辱しないよう理性が注意しただろう。
私は再び神のパワーの拡大を感じた。今度はますます強くなり、ついにクラリオンのような調子で神我の強力な内なる声は、売買全体の真実と鉱山のペテンを暴露した。
「アサートン夫人―私は言った―あなたはひどいペテンにあったのです。労働者たちは豊かな鉱脈を掘り当てました。この男性は労働者たちの間にスパイをひとり放ち、それを黙らせました」内なる自己が背信を摘発しつづけるにつれて、部屋にいた監督その他大勢は真っ青になり、口がきけなかった。見こみ客は、いかなる非常事態にも耐えられると見え、怒り狂って私をさえぎり、叫んだ。
「うそだ。邪魔しやがって。脳みそをたたきつぶしてやる」鋼棒を持ちあげたので引ったくろうと手をあげたとたん、白炎が突然ボッとあがり、彼の顔じゅうピカッと光った。稲妻に打たれたように床にばったり。それから永遠の威厳ある強大なまったき権威をもって、強い神我は再び語る。
「許可するまで、この部屋にいる誰ひとり身動きさせない」外部の自我は、もはや私ではなく「活動している神」であり、男が横たわっているところに行って、つづけた。
「この男の偉大なる霊よ、あなたに語りかける!あまりにも久しく傲慢な個我に閉じこめられた囚人だった。今すぐ出て来なさい。マインドとからだを支配しなさい。彼の行った数々のペテンを今生で正しなさい。その時間内で、強化した不調和と不正というこの外部の強い人間的創造物を消滅させ、そして二度と神の子のもうひとりをだまさせたり、人間的に支配させたりしまい。外部の自我に私は目覚めよと言う。生きとし生けるものに平安、愛、親切、寛大、善意あれ」
ゆっくりと男の顔に血の気が戻りだし、目を開け、わけのわからない当惑した表情をした。まだ責任を持っている「私の中の神」は優しく手を取り、片腕を肩の下に入れて助け起こし、大きな安楽椅子にすわらせた。再び神は命令した。
「兄弟、私を見なさい」
目を上げるにつれて身震いし、かろうじて聞き取れる声で言った。
「ああ、わかった。わかったよ。私が間違っていた。神よ、許したまえ」頭を両手でかかえて黙り、恥ずかしい顔をした。涙が指を通して落ちだし、子供のように泣いた。
「このご夫人に百万ドル支払い―神我はつづけた―さらに一〇パーセントの鉱山利益を与えましょう。最近掘り当てた金鉱は少なくとも一千万ドルだからです」実に謙遜で、不思議なくらい優しく答えた。
「今はそうさせてください」昔の癖のように命令するかわり、今回部下たちに指示どおり書類作成するよう要求した。アサートン夫人と彼は二人ともサインし、取引成立。
私が部屋の他の人たちに顔を向けると、一同がそれほど意識を高めて、未知の世界をかいま見たのを顔の表情から察した。ひとりひとり言った。
「神に誓って二度と同胞をだまそうとしたり、悪事を働こうとしたりしません」彼らは高められ、各人の内なる神我を十分認識し、受け入れたのである。
この出来事が起こったのは午後遅くである。賓客として明朝まで滞在し、売却書類の登記のため朝フェニックスまで自分を送ってくれるよう、アサートン夫人は親切にも求めた。夕食後のあの晩、大きな客間の、広くて開いた暖炉の前に集まった。みなが生命の宇宙大法則を心からさらに理解したいと思った。
この種の知識をどうやって手に入れたのか尋ねられたので、マスター・サンジェルマンとその出会いの様子について語った。シャスタ山での体験のいくつかと、彼の言った偉大な宇宙法に関する会話の様子を物語った
「君、使用にあたって電気法則を知らない人が、電気制御法も知らず電気力を誘導しようとするとき、法の適用すなわち電気で失敗すれば、九九表が無差別に数学的答えを導きだすのと同様、偉大な宇宙法も無差別です。表現する果てしない生命界の秩序を永遠に保つ『偉大な不変の掟』は、すべて『一大創造原理』愛にもとづいています。それは心臓、万物の起源であり、形態での存在が起こるまさにその中軸なのです。
愛は調和であり、それなくして形態の最初に、あの形態はまったく生まれることはできないでしょう。愛は宇宙の凝集力であり、それなくして宇宙は存在しえないでしょう。
君たちの科学界において愛は電子間親和力として表現します。それは、しいて電子を形態にする指向性の知性であり、電子に原子核の周囲をぐるぐる回らせつづけるパワーであり、電子を核に引き寄せる核内の『息』なのです。同じことが、創造のいたるところにおいて力のひとつひとつの渦に当てはまります。
原子核とその周囲をぐるぐる回る電子は一個の原子を形成します。この愛の核と原子との関係は、磁極と地球との関係、背骨と人体との関係と同じです。原子核つまり心臓中枢がなければ形のない宇宙の光しかありません。広大無辺の空間をみたし、巨大な中心太陽の周囲をぐるぐるまわる電子だけです。
電子は純粋な霊、神の『光』です。それは永遠に汚れず、完全なまま。いつまでも自立、自発光し、破壊されず、知的。さもないと『法』、愛の支配する活動に従えないし、従わないでしょう。電子は不滅、永遠に純粋な、知性ある光エネルギーであり、森羅万象をつくりだした唯一の真実本当の物質、永遠に完全な神の『生命の本質』です。
星間空間は、この純粋な『光の本質』にみちています。つまらない人知がばからしくも偏狭に考えてきたような、暗い混沌状態ではありません。広大無辺の空間に遍在する宇宙の光の大海は、たえず形態に引き寄せられ、電子が愛によって中心点、核の周囲に維持されるしかたに応じて、何らかの種類の性質が与えられています。
特定の原子においてたがいに結合する電子の数は、意識ある思考の産物であり、その思考によって決まります。原子核の周囲をぐるぐる回転する割合は感情の産物であり、感情によって決まります。原子核内の引っ張る回転運動の激しさは『神の息』であり、それゆえ神の愛の最も集中した活動なのです。科学用語で話すと求心力と呼ばれるでしょう。これらは原子の性質の決定要素です。
ですから原子は、自意識ある知性の意志を通して神の息と愛によって創造され、あるいは生み出される、呼吸する生き物、実体であることがわかるでしょう。このように「言葉は肉となる」のです。自意識ある知性が、内なる自己のこの表現を成しとげるため用いる機械装置が、思考と感情なのです。
破壊的思考と不調和な感情は、原子内で電子の比率と速度を再整理するので、極内における神の息の持続時間は変わります。特種な原子を用いる意識の意志が、息の持続時間を定めます。もしあの命令している意識ある意志が引っこむなら、電子は極性を失い、飛び去ります。利口にも君を気にして、『巨大な中心太陽』に帰る道をさがし、再分極します。あそこで電子は愛だけを受け取り、神の息は尽きることなく、秩序、最初の法は永遠に維持されます。
惑星は宇宙空間で衝突すると主張し、教えてきた科学者もいますが、そんなことはありえません。天地創造プラン全体を白紙にして、混沌に戻すことになるでしょうから。「神の強大な法則」が地球の子の何人かの意見に制限されないのは本当に幸運なことです。凡人にせよ、そうでないにせよ、いかなる科学者がどう考えようとも構いません。神の創造はいつまでも進展し、ますます完全さを表現していきます。
人間のマインドとからだにおける建設的思考と調和的感情は、愛と秩序の活動です。このおかげで原子内の電子の完全な比率と速度が永遠に維持でき、自意識ある管理知性は、電子の存在するからだを使います。こうして核内における神の息の持続時間が、その管理知性の意志によってしっかりと保持されるかぎり、電子は宇宙の特別地点で分極したままでいます。このように人体の完全性と生命維持は、からだをまとう個人の意志の意識的コントロール下につねにあります。個人の意志は自分の神殿に対して最高位にあり、事故のときでさえ自分が望むまで神殿であるからだを去りません。ひんぱんに身体の苦痛、恐怖、不安その他多くの要素がパーソナリティーに影響し、過去の願いや意図に関して決意を変えますが、からだに起こることはすべて個人の自由意志のコントロール下にありますし、いつもそうでしょう。
自分自身のからだの原子構造を支配するため、思考と感情を通じて意識的にコントロールせねばなりませんが、そのコントロールと電子に関する前述の説明を理解することは、広大無辺の空間のいたるところで形態を支配する唯一の原理を理解することに通じます。人間が努力して自らに、つまり自らの原子的な肉体の中でこれを証明しようとするとき、自分自身がマスターの段階に進むでしょう。それを成しとげたとき、愛によって望むものは何でもかなえるため、宇宙の他のものはみな進んで協力してくれる仲間となります。
進んで『愛の法』に従う者はみな、おのれのマインドと世界において完全になり、それを永久に維持します。いっさいの権威と支配力がその人に、その人だけに属するのです。まず従うことを学んだので、その人だけが支配権を持ちます。自分自身のマインドとからだの中の原子構造を従えたとき、マインドとからだの外のあらゆる原子構造も従うでしょう。
そのように人類ひとりひとりは、思考と感情によって自分自身の中にパワーを持ち、最高の高みに上昇するか、最低の低みに沈みます。ひとりひとりが単独で自分の体験の道を決めるのです。注意の意識的コントロールによって、マインドの承認に応じて、神と共に歩き対話することができるか、それとも神から目をそらして動物よりも低くなり、人間意識は無意識状態に沈みます。後者の場合、自分の中の神の炎は、そのとき人間の住まいから引きあげます。幾永劫の後、神の炎は人間の旅をもう一度こころみて、物質界へ降りていき、ついに意識的に自らの自由意志によって最終勝利をおさめます」
誘導、達成するパワーとして偉大な神、各人の「内なる存在」を喜んで受け入れるときは、サンジェルマンの示してくれた無限の可能性が、いつでも人類の達成のためにある―そのことを私は語った。なぜ受容という言葉をそうたびたび使うのか鉱山の買い手は尋ねたので、サンジェルマンの説明を思い出した。
「君の人生の外部活動でさえ、あるものを購入したり何かすばらしい完全なものを提供されたりしても、受け取らなければ、使ったり恩恵を受けたりすることはできないでしょう。私たちの中の偉大な『神的存在』についても、それが当てはまります。私たちの生命は神の生命であり、何かをするために持ついっさいのパワーとエネルギーは、神のパワーとエネルギーなのですが、そのことを受け入れないなら、どうやって私たちの世界で神性をおび、達成することができますか。
強大な内なる『神的存在』か外部の人間的自我、誰に仕えるか選択するよう神の子として命じられます。外部の人間的欲求と感覚を満足させるなら不幸、堕落、破壊というただひとつの結果が出ます。
あらゆる建設的願望は実際、内なる神我が外部の自我の使用と喜びのため完全さをおし進めているのです。偉大な生命エネルギーは、たえず私たちの中を流れています。建設的達成のためそれを導くなら喜びと幸せをもたらします。感覚を満足させるため導くなら結果として不幸しかありえません。それはまさしく法の働き、人格を持たない生命エネルギーの作用だからです。
マインドの外部活動において、君は自分と自分の世界に『活動している神』『生命』であることをたえず念頭に置きなさい。個我はそのエネルギーによって存在しますが、まさにそれは神我の貸し出しものなのに、個我はたえず自分自身のパワーとものを要求しています。外部の個人的な人間活動は肌すら所有しません。からだの原子でさえも『至高なる神的存在』が宇宙物質の大海から貸し出したものです。
いっさいのパワーと権威を『栄光の偉大な神の炎』に返還する練習をしなさい。君の『真実の自己』にして『起源』、そこから君は、あらゆるよいものをいつも受け取ってきたのです」
私たちは午前二時まで語り、それから休もうと提案せねばならなかった。誰も眠りたがらなかったが、私は言った。
「神に抱かれて眠りましょう」驚いたことに翌朝、眠りにすとんと落ちたことがわかった。
七時に起きて、フェニックスへ。登記は完了し、一緒に行う仕事は今のところ終わったから去らねばならないと説明した。一同深く感謝し、もっと知りたいと切に望んだ。マスター・サンジェルマンが導いてくれるので、彼らと接触をつづけ、さらにいっそうの援助を与える約束をした。出発しようとしていると鉱山の買い手は私の方を向いて「誰になんと思われても構いません。君を抱擁し、外部の自我の破滅から救い、『偉大な光』を明かしてくれたことに心の底から感謝したいのです」私は深くへりくだってお辞儀し、答えた。
「ありがたいことに私はチャンネルにすぎません。神のみが偉大な『存在』であり、万事よく行うパワーだからです」アサートン夫人は私の方を向いて、気持ちを述べた。
「力ある『存在』が守ってくださり、まことにあなたの中の神をたたえ、感謝します。この体験が私たち全員に光をもたらしてくれたことに対して一生、神とあなたに感謝しつづけることでしょう」
「全員きっと再会するような気がします」私はみなに別れの挨拶をし、もう一度シャスタ山に顔を向けて、二日目の夕方ロッジに着いた。
二週間後、もう一度マスター・サンジェルマンとの待ち合わせ場所へ遠足する強い衝動を感じた。午前四時に出発し、九時ごろ密生した森林地の端に到着。
森林の中へ二〇歩入る前に友パンサーの悲しげなほえ声が耳にとどいた。すばやく返事した。まさに旧友の歓迎さながらに、たちまちそばに飛び寄ってきて待ち合わせ場所に向かった。
パンサーがいやに落ちつかないことに気づき、心の動揺に悩んでいるように振るまった。私の前ではいつも大変静かだったので、きわめて異常である。きれいな頭をなでて、軽くたたいても変わらない。腰をおろして私たちは昼食をとった。
「おまえ、さあ行こう―食事がすんだので言った―散歩に出かけよう」
パンサーは私を長い間じっと見つめた。今まで見た中で最も悲しい表情である。何を意味するのか理解できなかった。
しばらく進むと高さ約五メートルの崖に来たが、そこから岩が一個突き出て、おおいかぶさっていた。何げなくパンサーを見つめると激しく獰猛な目の表情。一種の緊張の雰囲気を感じたが、それが何なのかわからない。さらに二、三歩進むと冷気を感じた。ふと見上げるとクーガーが飛びかかろうとして身をかがめていた。次の瞬間、私に飛びかかった。私は崖にからだをぶつけ、クーガーは私の立っていたところの向こう側に着地した。電光石火のごとくパンサーは飛びかかり、二頭は死闘をつづけた。
その後の戦いの恐怖を言葉で描写することはできない。たがいに叫び声をあげ、ころがり、引き裂き、爪でひっかきあった。クーガーはパンサーよりもかなり重く、一時有利に立ったかに見えたが、パンサーのほうが動きが速く、しまいには突然離れた。ちょうど一瞬の間があき、チャンスを見たパンサーは一回の跳躍でクーガーの背中に着地し、ちょうど両耳の後ろに歯を食いこませたのである。
パンサーは鋼鉄のようにしっかりつかみ、数秒転がりまわって、のたうった後、クーガーのもがきは次第に弱くなってきた。ついに、もがきは完全にやんだ。パンサーはよろめきながら私の方に歩いて来たが、横腹はひどく裂けている。私を見上げた目から獰猛さはことごとく消え、エネルギーは急減した。満足げな顔の表情になり、急にもの悲しい叫び声をあげ、私の足もとに倒れて死んだ。
私は立ちつくし、友を失ったことにさめざめと泣いた。ほとんど人間の友人と同じくらい愛情で結びついていたからである。次の瞬間、見上げると、そばにサンジェルマンが立っていた。
「ねえ悲しんだり、がっかりしたりしないように―彼は言った―君との触れあいによってパンサーの意識はあまりにも活発になり、もはや今のあのからだにとどまれなくなり、偉大な宇宙法は君へのある奉仕をパンサーに要求したのです。パンサーは、君の命を救うことによって愛のうちにこの奉仕をしました。本当に万事順調なのです」サンジェルマンは右手の親指を私の額に当てた。
「安心なさい」つづけるにつれて悲しみの感情は去り、心底ほっとした。「偉大な宇宙法は誤りを犯しません。私たちは与えないなら受け取れず、受け取らないなら与えられないのです。そのように偉大な生命バランスが維持されます。
鉱山での人助けとその間の落ち着きに心から喜んでいます。あの取引関係者は全員、人類を助けるすばらしい人になるでしょう。
まもなく君は、今までよりもはるかに大きな奉仕をするよう求められるでしょう。働いているのは神のパワーと知性であり、マインドとからだはチャンネルにすぎないことを、その奉仕でつねに思い出しなさい。この体験をするまで、君を通していつでも表現できる『神の無限のパワー』についてたえず瞑想しなさい」
真理の一部を広める多くのチャンネルに対する昇天マスターの態度は、どういうものなのか尋ねると彼は答えた。
「誠実なチャンネルはたくさんあります。あるチャンネルは他よりもさらに理解しています。全員、今の理解で力の及ぶかぎり奉仕している神の子です。誰も判断してはならず、すべてにおいて神だけが表現していることを知り、見なければなりません。私たちは、どこであれ、あらゆる活動を祝福しようとします。そんな活動を通して『内なる光』が輝いているのが見えるので、真理を広めているのか、いないのかに関して誤ることはありえません。
これは個人にも当てはまります。昇天したイエス・キリストの名において奉仕を申し出る者は、通常の支援パワーよりも多くいつも受け取るでしょう」いくらか歩いたときサンジェルマンは言った。
「来なさい。家まで送っていきましょう。腕を肩にまわして」そうすると、からだが地面から持ち上がるのを感じた。しばらくするとロッジの自室にいて、そばにサンジェルマンが立ち、私が驚くのを見てにこにこしていた。
「七日後、会いましょう―彼は言った―約束の場所で。そのときこの地方での仕事はすむでしょう」ほほえんで礼儀正しく会釈し、ゆっくりと視界からぼやけていった。徐々に消えていくにつれて最後まで見えていたのは、ほほえみ返す驚くほど美しい目だった。
近づきつつある奉仕のため毎日「内なる偉大な神的存在」について瞑想しながら、どんな状況に見えても、どんな外部条件も自分に影響を及ぼさないようにするため、注意を「あの存在だけ」に集中しつづけることがいかに重要かますますわかった。会話のひとつで、サンジェルマンは外部の自我の調和を保ちつづける重要性を特に強調し、これに関して言った。
「ねえ君にはわからないけど、満ち足りた内なる完全さとパワーを外的生活に表現するつもりなら、外部の自我の調和が大いに必要となります。個我において安らぎ、愛、落ち着きの感情を保つ重要性は、いくら強調してもしすぎることはありません。これを行うとき『内なる強大な神的存在』は一瞬のうちに無制限に振るまえるからです。
それだけの価値があると考えようが考えまいが、無条件に万人万物に安らぎと神の愛の感情を絶えまなく注ぎ出すことが、扉を開けて、この『とてつもない内なる神のパワー』を即座に解き放つ魔法の鍵なのです。そのとき、いっさいの安らぎと愛があるように努力するので、この『法』を学んだ者は本当に幸運です。それなくして人類は何もよいものを持たず、それがあれば、あらゆる『完全』なものを持ちます。調和とは基調、『唯一の生命の偉大なる法』に他なりません。その上にあらゆる完全な表現が支えられ、それなくしてあらゆる形態は崩壊し、宇宙の光の大海に戻ります」
続く七日間、瞑想にずいぶんと時間を費やした。ますます私の中で平安が大きくなっていくのを感じ、ついに六日目までに意識全体がまるで静かな大海のように思えた。
七日目の朝ロッジを四時出発し、一〇時半、待ち合わせ場所に到着。丸太に腰をおろし、瞑想のたまものとわかる、すばらしい爽快感にひたって待った。神我の観照の中にそれほど深く沈んでいたので、話しかけるまで誰かが近づいてくるのが聞こえなかった。
見上げると白髪白髭の老人がいる。一見して老探鉱者かと思ったが、それにしては服がきれいすぎる。近づいてきて握手を求めたが、その手から労働者でないという感じを十分確認した。挨拶をかわし、少しの間、浮世話。それから老人は私の方を見て言った。
「君、身の上話をしたいのですが。すぐすみます。長い間、誰にも話したことはないのですが。もう一度話そうと思います」
そのときまでに私は大変興味を抱きはじめた。喉が渇いているかもしれないという考えが浮かび、立っている私たちのそばの泉から水をくむため、手を伸ばしてカップを取ろうとしたとたん、サンジェルマンが何度もさし出したようなクリスタルカップが手の中に形成された。老人は見上げ、目をキラキラさせて興奮し、ほとんど怒鳴りつけるように言った。
「彼だ!彼だ!」
どうしたらいいかわからないので飲むよう強く勧めた。中を見ると、マスターが私にくれたその透明な発泡性飲料がいっぱい入っている。カップをぎゅっとつかみ、見たことないようなこの上なくありがたそうな表情をして中身を飲んだ。たちまち大変静かに落ち着いたが、うそ偽りのない本当の姿になった。話をしてくれるようもう一度頼むと、こう切りだした。
「父は、わが家のあるインド・パンジャブ地方駐屯の英国将校でした。私が一六歳のとき、ダイヤモンド鉱山で運だめしをするため南アフリカに行った友人に、父は出資しましたが、その後、連絡はありませんでした。
私が二十歳の年、背の高いハンサムな見知らぬ大知者がわが家を訪れ、父に会いました。友人のことづけを持って、やって来たのです。
『四年前に出資した友人から―彼は説明しました―便りがあります。あのベンチャー事業で大成功し、実際に大金持ちになりました。最近、鉱山事故で亡くなったのですが、親類縁者がありません。全財産があなたに遺贈されましたし、あなたが亡くなった場合は息子様に行くことになります。お望みなら私が責任を持って直ちに譲渡します』
『ここインドで御用を預かっていて―父は答えました―今は離れられません。私のために責任を持って引き受けるという申し出に深く感謝します』会話中、私はすぐ隣に立っていたのですが、話し合いがすむと私の方を振り向きました。
『君―彼は言いました―発泡性飲料の入ったクリスタルカップをあなたにさし出す男性に出くわすとき、からだを引きあげるのを援助できる者に会っているでしょう。北米の大きな山でその男性に出くわす以外、これ以上言えません。今はあいまいに見えるかもしれませんが、言えるのはそれだけです』
男性は去り、一ヶ月後、父はある政治問題を現地人と調整するため潜伏していたのですが、撃たれて、家に運ばれる前に亡くなりました。私はひとり息子で、さらに一ヶ月後、母と私は帰国の準備をしました。出発まぎわ、あの男性がまた来て、父の遺産を私に譲渡する準備ができていると言います。父は撃たれたと私は説明しました。
『ええ―男性は答えました―二か月前去ったとき、私が戻る前に亡くなられることを予知し、君への遺産譲渡もっと正確にいえばイングランド銀行の君の口座へ移す手配をしました。どうぞ帰省賃です。それに譲渡証書と銀行で必要となる証明書。これを提示すれば保管財産を受け取れます。その多くは一級品のダイヤモンドです』私は感謝し、彼の貢献と親切行為への支払いを申し出ましたが、こう答えました。
『好意は大変ありがたいのですが、支払金額は調整済みなので。ボンベイの蒸気船まで同行できてうれしいです』
一緒に旅をして彼のすばらしい知恵が明らかになり、となりにいた私は幼児のように感じました。何年間もずっととどまる発光放射で私を包みこんでくれたのが今わかります。彼は切符を手配し、ボートまで送ってくれ、最後の言葉がこれでした。
『クリスタルカップを忘れないように。探しつづけなさい。そうすれば見いだすでしょう』
大変美しい船旅の後、私たちはサウサンプトンに着き、さらにロンドンに行き、イングランド銀行に証明書を提示しました。提示すると銀行役員は言いました。
『ええ今日お越しなるとお待ちしておりました。さあどうぞ、銀行通帳と小切手帳でございます』
財産総額がいくらなのか見ると、口座の貸し方に百万ポンドと記入してあるのを知り、驚きました。五年後、母が亡くなりました。財産の半分をニューヨークの銀行に移し、『クリスタルカップ』を持つ男性を探し始めました。
味わってきた失望、試練、悲しみは二度とくり返し言えませんが、どんな事態に直面しても、どういうわけか決してあきらめることができなかったのです。あまりにも奇妙に思えるのですが、外見では年をとったのに、エネルギーと体力は以前にも増してみなぎり、青春まっさかりの頃よりもあるのではないかとときどき思います。
あと数年で七〇歳です。今日ちょうどこの登山道を通って進みたいと思い、ありがたいことにあなたに出会いました。私の願いは大きすぎて、ほとんど抑えきれません」
「でも―私は尋ねた―あなたに何をしてあげられるというのです?」
「わかりますよ―老人は答えた―私は誤ったことがないのを知っているからです。この壮大な山の奥地には偉大なパワーがあります。私は感じます。神に求めるのです、どうしたらいいのか示してくれるよう」
突然「力ある神のパワー」があまりに強くわき上がっているのを感じ、もう少しで地面から浮きあがるところだった。サンジェルマンの教えてくれたサインをしながら、神に呼びかけて「光」を求め、手をあげて挨拶し、言った。
「人間と宇宙の力ある神よ!私たちはあなたの光を求めます!あなたの知恵を求めます!あなたのパワーを求めます!このわが兄弟、彼のためにあなたの意志を行ってください。彼は探し、自分に何かしてもらうよう私を見つけましたが、私には何かわかりません。あなたはご存知です!私のマインドとからだを通してあなたの意志を表示し、この兄弟の定めを成就してください。あなたの子が出現しますように」
手が下がるにつれて、「生きた光の飲料」をたたえたクリスタルカップを握った。それを老人にさし出すと、力ある神我は再び語った。
「恐れず飲みなさい。あなたの探求は終わったのです」
老人は一瞬のためらいもなく中身を飲んだ。私はすみやかに前へ進んで、彼の両手を取った。ゆっくりと着実にあらゆる老齢の痕跡が老人から消えていき、私に宿る神はつづけた。
「見なさい。あなたは永遠に地上のあらゆる制限から自由です。あなたを待っている『光の昇天軍』のもとへ今すぐ上昇しなさい」
ごくゆっくりと地面から上昇しはじめ、それにつれて人間らしい衣類は消えて、きらめく白衣を着た。手を放すと、老人はそのとき大変深い愛にみちた声で言った。
「私は、親愛なる兄弟のあなたのところへ戻り、この超越的奉仕のためにあなたを十分回復させるでしょう。あなたは、これを私のために行える唯一の者でした。いつか、あなたはそのわけを知るでしょう」そして幸せそうにほほえみながら、輝く「光」の細道に消えた。
内なる強力な神のパワーが遠のくにつれ、びっくり仰天して、ひざまずき、ありがたく謙遜し、ほめたたえながら、そんな奉仕をする栄誉のために生涯で最も深い祈りをささげた。
立ち上がると、マスター・サンジェルマンはすばらしく抱擁してくれた。
「親愛なる兄弟―彼は言った―とてもうれしいです。内なる偉大な神に気高く忠実にお伴をし、つき従いました。強力な『活動している神』を見事なまでに迎えたのです。本当におめでとう。表面上いつも気づくわけではないかもしれませんが、いつまでも私たちに抱擁されたままでしょう。
あなたは、グレート・ホワイト・ブラザーフッドと昇天軍の立派な『使者』になりました。力ある神我にしっかり寄り添いつづけなさい。そのように、どこで何を求められても奉仕する準備がつねにできているでしょう。再会まで私の愛はあなたを包みます。つねに君に連絡しましょう」
「力ある唯一神」は私たち全員を鍛えあげて「永遠なる完全」へ導く。ゆっくりとロッジへの帰途につき、一歩一歩がその神への称賛と感謝の念にみちていた。
第9章
金星人、ロイヤルティートンを訪問
何週間かたち、一九三〇年一二月三一日の朝マスター・サンジェルマンがやって来た。
「今夜七時までに出かける用意をしておくように―彼は指示した―迎えに来ます。この聖なる祭典で意図した恩恵を十分受け取るため、注意をできるだけ自分自身の内なる神の栄光に集中しなさい。君の双子光線と息子のことを忘れないように。君たち三人は、今夜の新年の集いでロイヤルティートン・ブラザーフッドの名誉ある賓客だからです。
その日の残りは深い瞑想に費やした。七時に来て、すでに肉体をベッドに置いていたので、私のために用意してくれた衣服で進み出た。
「今夜―彼はつづけた―七万年以上、達成されなかった試みが予定されています。もう準備万端整っているので私たちは今回、成功を完全に確信しています。来なさい」
わからなかったが高速トリップしたに違いなく、まもなくロイヤルティートンの頂上に立った。そこは重い雪におおわれて、数百万ドルのダイヤモンドのように月光にきらめいている。管状エレベーターの入口に近づくにつれて、その周囲に少なくとも半径三〇メートルの林間の空き地があるのに気づいた。中に入ると暖かく快適に感じ、新年祝賀会出席者のために開けっ放しの入口を通って先に進んだ。
サンジェルマンと私は大きな謁見の間に入り、エスコートのアメン・ベイと共にすでに到着していたロートスと息子に会った。およそ二年間、物質界層で離ればなれだったので、今回の私たちの喜びはひとしおである。肉体の外で作業するあの間、内的レベルでのさまざまなチャンネルで私たちの存在を必要とする自分自身の個人的活動に、めいめいが従事していた。
大部屋はきらきらと輝き、かぐわしいバラとハスの花の香りが空気をみたしている。この上なく甘く楽しい音楽が、いたるところから流れこむ。大勢がすでに来ていたが、刻々と到着しつつある者もいた。
一枚の金布でおおわれた大きな物体が部屋のまんなかに置いてあるが、それに関する説明がないので私たちは黙ったままでいた。サンジェルマンは私たちを賓客に紹介し、それから珍しい楽器のたくさんある部屋に連れて行った。大きなパイプオルガン一台とハープ四台を目にした。支柱が金で、真珠のような物質ででき、共鳴板と上部は白色合金で組み建てられている。ハープの高音の弦は銀、低音の弦は金で巻かれ、その材料は金属音や木材の音や音声を組み合わせた音色を出した。外部の西洋音楽界で今まで使われてきたどれとも異なるので、これらの楽器の音色は聴いてはじめてわかるにすぎない。この変わった材料で生じる音は、インドで使われる弓楽器エスラジのすばらしい音色のいくつかに、もっとよく似ている。
やはり真珠のように見える物質からできたバイオリンを四丁、目にしたが、その響きはどの有名な木製楽器の響きもはるかに超えている。弦は金銀両方巻いてあり、ほとんど言葉では表せない妙音を生じる。あの夜会の遅くに、これらの楽器がすべて演奏されるのを聴いた。
大きな謁見の間に戻るとサンジェルマンは、ロートスと息子にメキシコ・オアハカ州のミトラ神殿から最近運んだ美しい肖像画を示した。私が以前彼と一緒に見た証拠を記録室で見せ、そこを通り抜けて二人をエスコートした。
この新年祝賀会の間の活動のため、ロイヤルティートンのメンバー全員は、はなやかな生地からなる無地の金衣をまとった。左胸にブラザーフッドの記章の刺繍があり、暗青色のビロードのように見え、宇宙鏡をなす大パネルと同じ色あいである。
男性七〇名、女性三五名およびこの隠れ家を管理する聖兄弟、司会マスター、ラントがいた。この支部の所属メンバー全員が集まったときラントは前へ進み、話しかけた。
「今一一時、瞑想の時間です。今夜『偉大なる光』を礼拝し、おのれ自身の神との『合一』を三〇分間感じ、次の三〇分間は金星と地球が『ひとつであること』を知りましょう。みな定位置につき、部屋のまんなかで楕円を形づくりましょう」
一時間、一〇六名の金人がひとつの息で一体になったように見えた。それほど完全に調和していたのである。瞑想が終わると楽しい音楽が突如として大ホールに響き渡り、ラントは大鏡の前に行った。
ラントが両手を伸ばすと、途方もなくまばゆい「光」が鏡にピカッと光り、金色とバラ色と紫色の「光」に包まれた人々の一団がはるか遠くに現れ、その美しさと光輝に目がくらんだ。一団は近づき、同じ華麗で不思議な色が大きな謁見の間をみたし、とてつもない高揚感と力感をみなに与えた。
今まさに筆舌に尽くしがたいきらめく白衣を着た、金星からの一二名の賓客が、私たちの中に立っている。紳士七名と淑女五名。みな、すばらしく美男美女である。
紳士六名は少なくとも身長一九三センチ、七人目は残りよりもゆうに五センチ高い。淑女は約一七八センチ。みな薄い茶髪だったが、背の高いマスターは例外で、すばらしい純金色だった。金星人のきらきら輝く鋭い青紫色の目は、美しく魅惑的だった。
背の高いマスターは、右手の指先を心臓と額に触れて東洋の挨拶をし、ラントの前で低くお辞儀をした。他の者も進み出て、挨拶し、集まった人々に紹介された。ラントは簡単な歓迎の辞を述べたが、以下の部分のみが記録を許された。
「至高なる唯一神と、ここに集まった『グレート・ホワイト・ブラザーフッド』のメンバーの面前において、金星からのこの一二名の賓客はロイヤルティートン・ブラザーフッドのメンバーになります」
背の高いマスターは夜会の司会マスターになった。歓迎に礼を言い、部屋のまんなかに歩いて行き、かぶせてある金布を物体から取り去った。
見よ、ロートスと息子と私自身の保存遺体のおさまっている水晶棺が三棺、目の前に立っている。まるで寝ついたばかりに見え、まったく健康そうで血色がよかった。司会マスターは私たちの方を振り向いて、言った。
「準備はいいですか」私たち三人は、はいと答えた。
「それではケースのそばに立ちなさい」司会マスターは指示した。
言うとおりにすると直ちに不思議な輝きが集まり、からだと私たち自身の周囲に近寄って来て、急速に激しさを増し、ついに私たちは見えなくなったに違いない。しばらくすると輝きは消え、驚いたことにひつぎは空っぽだった。ずっと昔に脱いで、この幾世紀もの間「生命の炎」によって維持浄化されてきた、からだをまとって、そこに立っていた。
変容は目を見はるものがあり、私たちは読者と同じくらい驚いていたので、その感覚は言い表せない。けれども誰の人間面も、最善の状態でも、つねに周囲のいたるところに存在するものすごい驚異と、何でもできるという生命の各界層における無限の可能性とに気づかないのである。神の認識と愛に寄りそって生きれば生きるほど、天地創造のこの驚異は個人生活に表れるだろう。
試みはうまくいき、兄弟姉妹の間を動きまわると、実現したことで全員がマスターと私たち自身を祝ってくれた。それほど奇妙な試みが、まぎれもない現実になったことに一同大喜びし、金星からの来客のからだによく似ていると大勢が意見を述べた。
それから水晶棺は元の部屋に移され、すばらしい楽器が謁見の間に運ばれた。サンジェルマンはグレートオルガンの一曲目、彼が「未来の心」と呼ぶ曲を演奏する。かつて地上のオルガンから発した、最も優雅で華やかだが力強い音楽のように私は感じた。演奏中この上なく美しい、えも言われぬほど華麗な音色が、広大な部屋の雰囲気をつき抜けて流れていた。
一団が次の曲を演奏する。マスター・サンジェルマンはオルガン、金星の淑女マスター三名とロートスは四台のハープ、金星の兄弟二名と私と息子は四丁のパイオリンを担当。全員準備が整ったときサンジェルマンが前奏曲を演奏している間、「うっとりした霊」という言葉がオルガンの上にピカッと光った。みな、あの驚嘆すべき音楽の豊かさと喜びに深く入りこむ。あの喜びの美しさと栄光は神の意識を十分送って、全人類、そう、地球自体すら永遠の完全さに高揚させたかに見えるほど音量とパワーはどんどん増した。
さらに四曲あり、いたるところで向上調和させる同じものすごいパワーをもって演奏され、まさに山がふわふわと飛んでいくように感じた。音楽が終わると楽器は元の部屋に片づけられ、司会マスターは大鏡前に全員を整然と着席させ、自分は地上の三角点をしめたのである。金星の驚くべき光景が現れはじめ、逐一詳しく説明してくれた。
映像から金星の教育制度の多くが明らかになり、天文学の道具が示されたが、その完全さに今日の科学界は感嘆と驚きで口がきけないだろうし、金星と地球、二惑星の内層を調べる地質学装置もある。発明家と、私たち地球人のきわめて他愛もない想像力をしのぐ、そのすばらしい発見の数々とを目にした。
「この発明品の多くが―マスターは説明した―今始まったばかりの透きとおった黄金時代に、地球で使われるようになるでしょう」
地球で使われる予定の主な発明品がいくつか説明されたが、人類がそれらを目にできたら、未来に関して気を取り直し、すごく勇気を出すだろうが。提供許可を得ることができれば、金星のこの映像は後に別の著作で取りあげ、描写するかもしれない。
金星の光景が終わって、地球の光景がスクリーンに映り、これからの七〇年で起こるさまざまな変化が示された。この変化はヨーロッパ、アジア、インド、南北アメリカに影響をおよぼし、今の世界情勢に関係なく、世界中に混沌と破壊をもたらそうとする邪悪な力が完全に滅ぼされることを示していた。そのとき人類の大部分は、ひとつひとつの心臓の中にあり、宇宙を支配する「偉大な神的存在」に目を向けるだろう。「平和が地球をおさめ、人間は隣人に善意を送るだろう」この啓示は驚くべきものだった。結末の光景が次に映しだされ、主に合衆国の来世紀に関するものだった。合衆国のその進歩向上はほとんど信じられない。
「偉大なる神の法」は間違わないので、このことは真実であり、あの新年の夜の啓示は永遠に真実の神の記録である。
この偉大な進歩を推進すべく、覚醒して引きあげられ昇天軍に加わることになる、ある偉大な霊たちが示された。それから司会マスターは「聖クマラ」のあの存在を思い出させ、愛と崇拝の念にみちた声で、彼らに敬意を表して以下の説明をした。
「七柱のクマラのことを金星から来た『炎の主方』として内界の学徒の中には知る者もいます。この惑星系全体で自らの自由意志と限りない愛ゆえに、地球の子の保護と進歩向上の援助とを申し出た唯一の方々です。地球の成長が最も危機のときここに来て、超越的援助を与えてくれました。一惑星の生命とその人類に大変危険なイニシエーションのときだったのですが、クマラの保護と指導のおかげで目標は達成し、人類は『さらなる高み』に到達できたのです。
二五〇〇年ごとにクマラが、宇宙的な愛と知恵とエネルギーの流出物を大いに強めて解き放つことを、兄弟姉妹の多くは聞いて知っています。地球とその住人にあふれて、すべてを貫通する、この燦然と輝く光とずば抜けた光輝は、すばらしく向上させる過程であり、人類のみならず地球全体の成長にとっても推進力を与えてくれます。
ちょうどこの偉大な流出物のそれぞれの前に途方もない物質的妨害が生じ、人々はあらゆる点で一般的不安を感じます。そんな妨害は前期末に蓄積された不調和によるものです。そんな不調和が生み出されるのは、つねに基本的『生命原理』からの逸脱と、そのように創造された人間感覚の妨害によるものであり、人類の外部活動、地球とその雰囲気を汚染します。
大異変が起こるのは、これを浄化して、人類を本来の純粋な生命に戻すためです。あとに続くこういう時期にクマラは『光』の大流出を解放し、地球の子を啓発して強め、ついに至高の達成をなしとげられるようにします。
もうひとつのそんな時期に近づいていて、今回、偉大で宇宙的な愛と知恵とエネルギーである強大な光線の解放は、人類のマインドだけでなく地球の原子構造も活発にし、その上、太陽系においてそれをさらに『光り輝かせる』でしょう。この偉大な炎の主方が地球に来て以来、やがて起こるような大流出を状況が可能にしたことは、いまだかつてありませんでした。前の活動で無情になったように見えた多くの者が、まるでほとんど一夜にして目覚め、ひとつひとつの心臓の中の偉大な『神的存在』の接近を感じるでしょう。柔和で謙虚だった大勢が『内なる存在』にぴったり寄りそい、突然きらきら輝いて、自らの表現する並はずれた光に自他共に驚くでしょう。すべては神の愛のパワーによってなされ、神の創造の一部がもう一部と戦うのは愚の骨頂だと、人類は実際に悟りだすでしょう。
自分自身のかわりに他人を祝福したいという願いは、ほとんど思わず知らず人類の心に入って『光』を放ち、『完全への道』を歩く残りの人を照らすでしょう。
利己主義だけが、地上での表現を許されてきた束縛と不幸でこの星の子をがん字がらめにしますが、『キリストの光』が『心臓における愛』に拡大するとき、利己主義は逃げ出して、忘却の海に戻ります。
自然の物理的な大変動が起こるでしょう。二つの偉大な『光』の中心地が、祝福を人類に注ぐでしょう。ひとつは目もくらむばかりの栄光に輝くシャンバラの『存在』。もうひとつは合衆国に現れるでしょうが、これまで信じこんできた場所ではなく、世界の外部チャンネルにまだ知らされていない地点です。
地球の子を世話する偉大な昇天軍による現在の援助活動と『光』の激しい流出の間、今の肉体が振動率の急上昇によって活気づいていることに、大勢の人類は気づくでしょう。そしてこれがすめば人間の肉体的な制限と不調和は、ぼろ服のように少しずつなくなってしまい、彼ら光の子は『永遠の生命の炎』および可視可触の現実となる『永遠の若さと美の完全さ』と、いつまでも『一体化』することを理解するでしょう。
愛する地球の子、君たちは時代の敷居に立ちます。『光』に当たりながら意識的にそばを歩くよう、いつも誘う『愛の偉大な者たち』が、時代の扉を開けっ放しにしています。外界の活動が何であれ、外見に関係なく『光』と共に、『光』に当たりながら歩きましょう。君たちの前にまったく同じ道を歩いて通った『光』のマスターを、そのとき見つけるでしょう。いつも見守り、そばに立ち、『真理の道』を示してくれます。
周期が変わって新体制に入り、それと共に、達成への道を歩いている者が『宇宙の偉大な光』と永久に接触しつづけることのできる、より安全より効果的なのに早い手段がもたらされます。
この新秩序において新参者の修練は、人体最上位の三中枢への注意力の完全な集中維持となり、これらの中枢点で全作業を行うでしょう。心臓、喉、頭部中枢のみに意識的に配慮、注意するでしょう。
志願者は、あらゆる努力を傾けて、この三点に注意を保とうとするでしょう。下位中枢から目をそらすことによってのみ、不幸と制限からまさに抜け出せるからです。頭頂中枢は人体最上位の焦点であり、創造の大起源から伸びる『澄んだ白光』の銀糸がそこに入ります。
マインドの注意をここに固定するとき霊の扉が開き、純粋な白光の三重活動が太陽神経叢の真下で腰まわりを回り、人間における獣性の破壊的活動を永遠に切り離します。これによって霊は、起源の完全さともう一度結びついた神の完全活動と、その後永遠に、地上の不調和を意味するあらゆる人間的創造を支配するマスターとに躍進できます。
外部マインドを照らして、あらゆるよいものを教えてくれるので、誠実な学徒は頭内の『金色の光』の完全な働きについてしばしば瞑想するべきです。これが『内なる神の光』です。それが自分の意識全体とからだと世界をみたしているのを感じるべきです。これが『誕生する人間ひとりひとりを照らす光』であり、存在する人間は自分の中にこの『光』を多少とも持っています。
すみやかに覚醒し、この『内なる光』の力強いうねりが自分を通じて流出しているのを感じ、そのようにより偉大な表現に気づきつつある者が、世界中いたるところに大勢います。もしかたくなに自分の調和を保ち、断固として注意を内なる神我に向け、まばゆい光輝が十分活動するのを受け入れて視覚化するなら、白光の三重活動で自分の周囲を取り囲みます。これが外界の不調和な創造を閉め出してくれるのです。
愛する兄弟姉妹、すべてをコントロールしている神の光の接近と流出のために、ここの隠れ家で毎年一月と七月、君たちと会うのは私たちの大きな喜びと栄誉でしょう。その光は、まもなくアメリカ全国あまねくあふれているでしょう。
今、水晶ケースが持ちこまれている間『金星と地球がひとつであること、形態にとどまる神の遍在』について深く瞑想しましょう」
約十分間、深い瞑想にひたり、それから司会マスターは私たち三人にひつぎのそばに立つよう指示を与えた。心臓と頭のサインをして両手を胸の上で交差させ、「神的存在」に呼びかけた。
「あなた、宇宙とその中にある万物の力ある創造主よ。あなた、遍在する唯一神よ。私たちは、あなたの恵み深い偉大なる存在の表現を待ちます」
やわらかなバラ色の「光の本質」が私たち自身とケースを囲み、私たちの周囲にぴったり寄り集まる。突然、大きな一条の目もくらむような白光がその光輝に入って、三、四分とどまり、徐々に視界から消えていった。
ケースをのぞくと三体の遺体がその中に安置してある。私たちはおたがいに観察しあい、マスター・サンジェルマンが私たちのために準備したからだを再びまとった。このためにロイヤルティートンの大集会を訪問できたのである。
司会マスターは、居合わせた人たち、「ロイヤルティートン・ブラザーフッド」と地球の万物を祝福し、今度の七月に再び一緒にいるのを約束した。
それから金星からの一二名は、謁見の間の床の円上の持ち場についた。
山全体が金星人の引き寄せる強力な神のパワーでふるえ、そのように集中した「光」は、からだは紫色、頭と足は金色の一羽の巨大な鷲の姿をとった。部屋全体は「強烈に輝く白光」にみたされ、「光の本質の大通路」の一端をなし、そこを通って一二名の輝く存在は金星の故郷に帰ったのである。
居合わせたあの人たちの見とれる至高の光景は、言語に絶するものだった。大きな振動活動は低下し、驚くほど透明な光輝が宇宙鏡を照らし、「地球全体とその住人に平安と啓発あれ。金星からの祝福」という言葉が鏡面を越えて表れたのである。
賓客ひとりひとりが自分の心臓と額に触れ、両手を胸の上で交差し、力ある流出を受け入れて会釈した。全員がラントの前を通りすぎて行き、一九三一年の仕事の個人的指示を受け取り、それから深く沈黙し、「偉大な光」を礼拝してすわった。瞑想の終わりに見事な音楽がどっと大ホールに響き、ラントの祝福を受けて一同会釈した。ラントの澄んだ朗々たる美声が響きわたる。
「神以外に至高者はいません。キリスト以外に実在する永遠のものは存在しません。光以外に真実のものはありません。この三つは『一体』。他のいっさいは影なのです。影は隠れ、誤った方向に導き、人類をつまずかせることを忘れないように。
『光の細道を歩く者』はキリストに忠実で、つねに神を見つめ、自分自身の世界に生き、周囲のさか巻く渦に触れることなく、その中でいつも働きますが、一方で影はつづきます。これらの影に光を当て、そのようにいや応なしに忘却の海に流します
万物の起源である偉大な唯一神の方を見て、あがめないなら幸福はありません。キリスト以外、永遠に存在しつづけるものはありません。『光の細道』以外、宇宙を進む道はありません。
このように生命を永久に理解することによって身を固め、あなたたちの起源である神のみに忠誠を誓い、キリストに忠実でありつづけ、光を運ぶなら、生命がどのような形で表現していても、どこで出くわしても『生命を愛し、祝福する』義務をあなたたちの名誉規準と見なすでしょう。
これが実存の永遠不変のプランであり、それを知る者はみな宇宙のどこにでも赴いて、その中の万物を調査することができ、人類がおのれの起源を忘却して創造した、いかなる影にも触れられることはありません。
神だけが偉大であり、いっさいの栄光は『まったき偉大な起源』にのみ属します。おのれの起源のみを知り、他のものを断る者は本当に賢明です。永続する至福と化し、どこに移動してもマスターだからです。
そのとき、そしてそのときにのみ諸世界の創造主になれるのです。これらの世界に創造主はおのれの幸福をささげ、この活動に実際、万物のための神のプランが生きています。
ロイヤルティートン・ブラザーフッドのメンバーたちよ、わがままな地球の子にこのプランを明かしましょう。あなたたちの光輝を彼ら自身の創造した影に放ち、私たちの超越的起源である『偉大な中心太陽』への『道』を示しますように。わが光はあなたたちをおおい、わがパワーはあなたたちを支え、わが愛は『光』の中で故郷をさがす者のために、あなたたちを通して息づきます。
愛する人類よ、まさにこの力ある光輝が光を放ち、あなたたちを照らし、いやし、『唯一の至高なる光』の永遠の抱擁ですべてを永久に抱きしめるあの神の愛で祝福しますように。
アメリカよ、神がおまえを祝福し、今『永遠につづく影なき光』で包みこみますように」
THE END
◆本章の「白光の三重活動」とは背骨に沿ってイダー、ピンガラー、スシュムナー管を体内の創造エネルギーが上昇する活動のこと。医術の神アスクレピオスの杖やマーキュリーの杖カドゥケウスのように。
7万年前に存在したサハラ砂漠の黄金時代
「物質を意識的に操作するとは、体験していることに左右されず、いつでもあなた自身が精神と肉体を完全にコントロールし、自らの自由意志を用いて行動できることを示す。」
サン・ジェルマンが説明を終えると、目の前にかなり古い時代の光景が現れた。
エーテル体に記憶された世界が目前に再現されていくのを見ながら、しばし2人とも無言で立っていたが、やがてレッスンが始まった。
「ここはサハラ砂漠だ。ただし、まだ亜熱帯性気候で肥沃(ひよく)な土地であった時代の頃であり、この都が全盛を極めたのは今から7万年前ことだ。」
周辺には無数の小川が流れ、ほとんど全域が緑に覆(おお)われて潤(うるお)いに溢(あふ)れていた。
王国の中心にある首都は、その繁栄(はんえい)ぶりから、当時その名は全域に知られていたことがわかった。公的機関の建物は高台に集められ、そこから四方八方へ広がっていく造りになっている。街の中心部に足を踏み入れると、重力が少し弱まったかのように足取りが軽くなった気がした。周囲の人々も軽やかに歩いている。それをサン・ジェルマンに尋(たず)ねると、次のように答えた。
「この国の人々は自分たちの”源(みなもと)の記憶(きおく)”を常に保ちながらこれまで暮らしてきた。
つまり、自分たちが創造主から生まれた”神の子”であるということを知っており、自覚していたということだ。それが、あなたにとっては神の叡智(えいち)や力を操(あやつ)ることが奇跡や超人のようにしか見えないわけで、彼らはその力を備え、操作することができた。だが、本当のことを言うと、奇跡などというものは存在せず、それらはただ宇宙の法則が用いられただけであり、人間が奇跡と認識するものもすべて、それぞれの宇宙の法則が応用された結果に過ぎない。」
「人間はかつてはその能力を駆使していたが、そうした時代の記憶を失ってしまったために、あり得ないことに見えてしまうのだ。生命の真実を正しく理解してしまうならば、現代人が奇跡と見なすような事象はすべて、言葉を発するのと同じくごく自然なものであることがわかるだろう。そうした事象は永遠へと拡大する、進歩する生命の現れであり、すべては愛と平和に基づいた宇宙の法則の手順に沿(そ)って、絶えず起きているのだ。」
「そうしたことが、現代人の感覚にいかに理解し難(がた)く奇異(きい)に映(うつ)ろうとも、そうした力は常に我々を取り巻いて、数々の驚異を生み出すために作用している。よって、宇宙の大いなる法則や高いレベルの知性の存在を否定する根拠にはならない。今日の現代人が誇る最高の知性も、内なる偉大な力や叡智(えいち)を熟知したこの時代の人々にとっては、ほんの幼い子どもの理解度にしか過ぎないだろう。」
上質の美しい生地の服を身にまとった高官と見える人々の1人が、私たちを宮殿へと案内し、この偉大なる王国の統治者に引き合わせてくれた。何と、その王様はサン・ジェルマンだったのだ! 王様の隣には、若く美しい娘が立っている。床に届くほどの長い金糸のような髪と、貫(つら)ぬくような青(あお)紫(むらさき)色の瞳。全身から愛おしさを溢(あふ)れさせている。彼女はいったい何者なのかと、視線で問いかける私にサン・ジェルマンは答えた。
「ロータスだよ」
娘のそばには20歳くらいの若者と14歳くらいの少年がいた。
若者は、すでに見てきたがルクソール神殿の過去世では大神官であり、少年は神官だった人物であり、今回は3人ともが王の子どもとして転生していた。(つまりサン・ジェルマンを王として、私は20歳の若者、すでに亡き妻が娘のロータスに、そして14歳の少年は息子のドナルドであり、3人ともが王の子どもとして転生しており、この時代にもこの4人は一緒に行動していたのだ。)
「転生の縁が少しわかったところで、祝福された民たちの活動に我々も入り込むことにしよう。彼らを”祝福された”と呼ぶにはわけがあり、それはほとんどの人々が自らの意識をコントロールする力を備えており、神の子としてのあらゆる叡智と力を正しく使うことができたからだ。彼らはその力がどこから来ているのかをよく知っており、それを受け継ぐことが何を意味するのかを理解したうえで、無限に駆使することができた。」
「外的自己というものは”内なる神”の道具に過ぎず、創造された本来の目的のためだけに使われるべきだということも認識していた。ゆえに当然ながら、彼らの”内なる神”は彼らにおいて何の束縛(そくばく)もなく活動し、あらゆる面において絶大なる完璧さを獲得していた。」
「この古代文明の時代、この王国は大いなる平和と幸福、それに繁栄に満ちていた。統治者である王は古代叡智のマスターであり、光の使者でもあった。彼はその光に従って国を率い、王国は完全性の生きた手本だった。完全な調和を保った状態は数百年間続き、その間に陸海軍などの兵力の類(たぐ)いを備える必要もなかった。」
「人々の統率は14人のアセンディッド・マスターたちに委ねられ、7つの光線にその2人ずつが配置され、大いなる神の活動を目に見える形で体現した。この14人の光の存在の下には7つの部門を支配する下位のマスターが14人置かれ、それぞれが”内なる神”に忠実に従い、主に科学や産業、芸術を管轄した。つまり、人間の側から妨(さまた)げられることなく、神の完全性が絶え間なく上から下へ流れていた。」
「この統治システムは、最も優れた成功例であり、どの部分をとっても満足のいくものだった。これ以後、地球上でこのレベルにまで近づいた文明は存在しない。今日にまで伝わる古代の記録では、この前時代の文明が黄金時代と呼ばれるのはそのためだ。」
「あなたがいま目にしている時代より1つ前の時代では、ほとんどの人々が巨大な飛行船を移動手段としていた。技術が高い水準に達した頃には、発展途上地域以外ではそれも必要なくなった。その理由は、人々を導く高官たちは霊的にも進んでおり、あなたがルクソールで体験したように、霊的な体で移動ができたが、同時に肉体での移動も簡単にできたからだ。彼らにとっては重力を超えることは、呼吸をするほど自然なことでもあった。」
”金”(ゴールド)が持つ本来の価値
「他の黄金時代と同様に、この時代にも”金”(ゴールド)は経済を支えてはいたが、その意味はあなた方の現代とは異なる。”金(ゴールド)”の自然な輝きは浄化とバランスであり、生命力を強めるエネルギーである。”金”は、この世界を創造して世界のシステムを統率し、光と愛の大いなる存在である”創造の神々”によって地球に置かれたものだ。」
「しかし人間の表面意識あるいは知的意識は、なぜこの惑星上に”金”が存在するかの真の意図をまったく理解していない。”金(ゴールド)”は本来、地中で植物のように成長するものだ。そして”金”から絶えずエネルギーが流れて出ており、我々が歩く道はそれによって常に浄化され、バランスが取れ、強固になる。その効果は、植物の成長や空気の浄化にも及んでいる。」
「”金(ゴールド)”のさまざまな用途の中でも、最も意味のないものが、貨幣と装飾品としての使用である。地球における”金(ゴールド)”の存在意義と目的は、このように本来の特質を発揮することで世界の原子構造のバランスを取り、強めて純化させるエネルギーを放出させることに尽きるのだ。あなた方の科学の分野ではまだその作用に懐疑的であるが、”金(ゴールド)”は極寒の地で使用されているヒーターと同じ目的でも使用される。」
「地中では、”金(ゴールド)”は太陽からのエネルギーを地球内部に供給し、維持活動のバランスを取るもっとも重要な手段の1つである。”金”は、太陽の力を我々の世界の物質に伝える変圧器としての役割も持っており、生命の進歩にも寄与している。実際、”金”に含まれるエネルギーは、太陽が放つ電子の1オクターブ下の力を持っている。しばしば”金(ゴールド)”が、”太陽光線の降雨”と呼ばれる所以(ゆえん)もそこにある。」
「”金(ゴールド)”に含まれるエネルギーの振動数は高いので、生命のもっとも微細な表現に作用させるためには、それを吸収するしかない。だからどの黄金時代においてもこの金属は、多くの人々に共有され使用されていた。この金属が多くの人々に行き渡っていたということは、人々の霊的進化が非常に高かった証拠でもある。なぜならそうした時代では、”金”は決して貯め込まれたりするものではなく、人々に共有され分配されるものだったからだ。」
「”金(ゴールド)”の持つ浄化のエネルギーを吸収すると、人々はより完全な状態へと引き上げられる。これこそが”金(ゴールド)”の正しい使い方である。この法則が人間たちに真の意味で理解され、守られるようになるならば、1人1人が十分な量の浄化のエネルギーを取り入れることができるだろう。」
「地球の世界各地の山脈には”金(ゴールド)”が蓄えられている。
ゆえに山には活力や生命力が感じられる。それは、地球以外の他の場所では得られないものだ。”純金”を適切に使用するならば、それが有害な影響をもたらすことはない。純粋な状態で”金(ゴールド)”は白色に輝き、崩れやすい。それが前に話した吸収目的で使う際の”金(ゴールド)”の質の見極め方だ。」
「さて、霊的にもっとも進んだこの王国の人々は、宇宙からの光の降雨で直接もたらされる”金”を大量に生産していた。多くの丸屋根には”純金”が貼られ、内装にも用いられて輝きを放っていた。宝石類の装飾品として、これも無限の宇宙から直接取り出すかたちでもたらされて、それらに見事な細工が施された。」
だが、いずれの過去の時代もそうであったように、”内なる神”の偉大な創造計画よりも、一次的な快楽を得ることに誘惑される者がここにも現れた。それはたとえ一部の人間ではあったとはいえ、そのような人間が出て来ることによって、王国一帯が神の力への認識の欠如へと除々に傾いていくことになった。その首都は、『太陽の都』と呼ばれていた。」
地球には私たちの知らない隠された「人類史」がある
ロッジでのある夕暮れ、すでに外も暗くなりかけた時、部屋の窓に何かがぶつかる音がした。窓辺に歩み寄ると、白い鳩がくちばしに小さいカ-ドをくえわえて立っている。窓を開けてやると鳩は歩いて中に入って来た。そして立ち止まり、平然と私の反応を待っている。私は小さなカードを取り、メッセージを読んだ。
<< 午前7 時、いつもの場所で会いたし。サン・ジェルマン >>
前回と同じくそれは手書きだったが、今回のは金文字で記されていた。
役目を終えた鳩は私の肩に飛び乗り、何度か頭を私の頬にすり寄せて愛情表現をすると、窓の外に出て矢のごとく飛び去っていった。
私は受け取ったカードを丁寧(ていねい)にしまった。
それを大切にとっておきたかったからだが、翌朝、出掛けに探した時には、もうどこかに消えていた。だが前回もらったカードは、3 日間は手元にあった。それを永久に手元に残るように期待して何度も眺めていただけに、宇宙へ戻ってしまったと知ったときの失望は大きかった。
朝7 時に到着するためには、16キロほどの山道を歩き、そのためには夜半過ぎに出発しなければならない。私は一眠りして起きると、午前3 時にロッジ(山小屋)を後にした。暗い中を早足で歩いたので、夜明けには待ち合わせの場所近くまで来ていた。聞こえてくる哀しげな鳥たちの声に、同じ調子の声で応じる。そのとき、鬱蒼(うっそう)とした森を駆け抜けて何かが迫ってくる気配を感じたが、茂みから私の相棒のジャガーが飛び出して来た。喜び勇んで抱きついてくる彼の頭を撫(な)でると、そのまま一緒に山道を登り始めた。
7 時ちょうど、サン・ジェルマンは大気中から姿を現すと、私を抱擁(ほうよう)した。
いつものように液体の入ったグラスが手渡され、盛んに泡だっていたが、それはこれまで飲んだことのない形容しがたい味だった。それは、電気を帯びた液体が体中の血管を駆け巡るような感覚を引き起こした。マスターはジャガーにも、小さな茶色のケーキを与え、あっという間に平らげる動物を見ながら、「これで君の相棒が今後鹿を襲うことはないだろう」と言った。
「さて、今日の体験では、君の体はここに置いていくことになる。今日連れて行く場所へ移動するためには内なる力を呼び起こす必要があるが、あなたはまだその術(すべ)を心得ていない。その間ジャガーがあなたの肉体を見守っていてくれるだろうが、念のため見えないマントで体を覆い隠しておく。行き先はロイヤル・ティトンだ。さあ、行こう」
(米国ティトン山脈・一部がティトン国立公園)
瞬時に私は肉体を脱け出し、いつの間にか光輝く金色の繊維でできた衣服を身に付けていた。彼は服地をよく見るようにと言った。
「この服は特殊な力をいくつも備えた素材で作られている。たとえばこれを着ると物体を自由に持ち上げることができ、運ぶことができる。それは服地の持つ純粋なエネルギーと、重い物を動かす力が等価になるからだ。それは途方もない作用をもたらすだけに、この服の地球上での使用を大いなる光のマスターたちに認めてもらったのは、今回が初めてのことだ」
読者のためにはっきりさせておきたいが、この体験の間、私は4次元で機能する服を着ていたのだ。だから物質界で誰もが固い物を掴んだり、触ったりするのと同じ能力が与えられていた。しかし私が今回使った体は、一般的に言われている「アストラル体」ではなかった。
まもなく、アメリカ有数の美しい景観を見下ろすようにそびえる、荘厳な山の頂(いただき)に到着した。眼下には巨大な連峰と広大な密林が広がっている。戦場の瓦礫(がれき)のごとく無造作に積み重なる巨大な岩々を進み、ある地点まで来ると、サン・ジェルマンは目印の玉石に触れた。するとすぐ岩が傾き、人が通れるほどのすき間が開いた。後について来るように言われ、彼に続いて中に入った私は驚愕した。それは目の前にブロンズの大扉が立ちはだかっていたからだ。
「ここはアトランティス大陸が沈むより前、つまり1万2000年以上前から保たれてきた場所だ」
扉のいくつかの箇所を彼が押すと、ブロンスの巨塊がゆっくりと開き、その向こうの空間には岩盤を削って造られた階段が下へ続いている。60メートルほど降りた場所で、サン・ジェルマンは別の扉に手を触れてそれを開くと、筒状のエレベーター・シャフトが現れた。それを見て私は「艶消(つやけ)し銀」かと思ったが、私の思考を読んだマスターが答えて言った。「確かにそう見えるが、これは鋼鉄よりも強度があり、破壊できない性質のものだ」
私たちは相当の距離を下り、先ほどとは違う形をしたブロンズ扉の前でエレベーターは止まった。「山の内部を、地下600メートルまで来ている」、とサン・ジェルマンは教えてくれた。(略)
大広間の東側の壁の手前に、たて約9メートル、よこ約21メートルの巨大なパネルが掛かっており、パネルの表面は緩やかな凹状を描いていた。材質は美しく、深みのあるインディゴ・ブルーのビロードのように見えたが、織物ではなさそうだった。そうした鉱物があるのかもしれないが、おそらく地球上には存在しない物質に思えた。サン・ジェルマンによると、やはりそれは光の降雨で宇宙から取り寄せたものであり、イニシエート(秘儀参入者)や高い精神性を備えた集団内のメンバーたちを指導するために、宇宙の鏡として機能するとのことだった。
「このパネルには、地球上の出来事やエーテル界の記録、アカシック・レコード、それに金星をはじめ他の惑星の様子が、学習者の目に見える形で映し出される。それも過去や現在だけでなく、遠い未来のこともね。後ほどあなたにも見てもらおう」
正面奥と右側の壁に、床から天井までびっしりと、艶消(つやけ)し銀のような白い金属性の棚(たな)が並んでいる。それぞれの棚には夥(おびただ)しい数の、同じ金属でできた筒状の容器が置かれており、各筒には4つの巻物が入っており、蓋(ふた)には象形文字で一つ一つ中身が記されていた。
「先日、あなたにした約束を果たすとしよう」と言いながら、サン・ジェルマンは棚の一角を指し示した。
「あそこにある巻物には、現在のサハラ砂漠にかつて存在していた国の文明の記録がある。私が古代王国の統治をしており、あなたが私の息子として生きていた時代だ。それだけでなくこの部屋には、現れては滅んでいった多くの国々と数々の文明の記録が保管されている。」
彼は説明しながら私に筒の一つを渡し、中身を広げて見せたが、私はそこに記された内容のすべてが理解できたことに自分自身が驚いてしまった。
「一時的にあなたの意識を高め、秘められた記憶を呼び起こすことであなたが読めるようにしている。しかもそれらの過去の記録は、かつてあなたが生きた全人生の経験でもある。日々の生活からもたらされる苦労を静め、必要な自己訓練に時間と注意力を費やすならば、誰でも過去の記憶に接し、理解できるようになる。」
「過ぎ去りし時代には、人類はあらゆる方法で完全性を現すことができていた。だが時代が過ぎ、人間の意識は肉体的感覚の世界である外的世界に向かうにつれて、神の叡智や全能の神の意識は曇り、それぞれの人生に与えられた神の計画から外れて沈んでしまった。形あるものすべてに優っていたはずの、人間の意識のコントロールも完全性も、いつしか影をひそめ、忘れ去られてしまった。」
「人間は神の意識ではなく、自分たちの五感そのものを意識にしたのだ。
そして自分の関心を引くものにだけ反応するようになり、故意に、そして意識的に、当初から与えられていた自然を支配する力と完全性に背を向けた。それがあらゆる欠乏と限界、不和の体験を作り出すこととなり、全体との一体感を失い、自分たちはその一部分だと見なすことで、不完全な存在という認識が意識に固定化してしまった。」
「人間の限界はいずれも、神の特質である自由意志を1人1人が悪用した結果にすぎない。その結果、自ら創造したものが、今度はその枠の中で生きることを強いるようになる。その苦悩は本人の心に、すべての源である大いなる存在の、自身の原点に再び意識を向けるようになるまで終わることはない。だが一度その殻を破ることができれば、自分は何者であったかを思い出し、宇宙の大いなる計画の一部である自分を知るようになる。」
マスターは別の棚を指差して言った。
「あの筒の中には、消滅したムー大陸やアトランティス大陸、現在のゴビ砂漠、サハラ砂漠、エジプト、カルデア、バビロニア、ギリシャ、ローマその他のものがある。」
古代文明「ポセイドニス文明」
「どんな状況でも決して驚いたり、失望したり、気分を損なうことがないように鍛錬しなければならない。自分自身の内にあるすべての力を絶えずコントロールできてこそ、統治権は与えられる。それは”光の道”を歩む者への報酬である。マスターの域には、こうした自己を修正することにによってのみ達することができる。
支配の権限、統治権は、”一なる者の法則”に従うことを学んだ者だけに与えられることを忘れないように。それを学んだ人間は、唯一の宇宙の愛の原因となる。つまり愛に類似した性質であることから、宇宙の法則そのものと化すのだ。よって調和のとれたもの以外、自ら発しないように努めてほしい。
破壊的な言葉が口から出ぬよう、あらゆる行動、態度にも現れぬように気をつけることだ。あらゆる瞬間ごとに、自分は何らかの力(エネルギー)を示しているという事実をよく自覚し、いついかなる時も自分を律するよう肝に銘じてほしい。」
「ところで今日私がここへ来たのは、あなたを重要な旅に連れていくためだが、そのために36時間は費やすことになる。だから部屋のカーテンを閉めて、ドアにも全部鍵をかけ、ベッドに横たわり、あなたは体を置いていく。そうすれば帰って来るまで安全だ。あなたはこれまでの過程で内面的にかなり進歩した。今回の旅も非常に興味深く楽しい体験が待っていると予告しておこう。」
サン・ジェルマンの説明を聞き終えると、私はベッドに横たわり、リラックスして気分を静めた。するといつのまにか体を脱け出して、体の傍らに立っている自分に気づく。しかも先日、ロイヤル・ティトンに行った際に使用したのと同じ、金色の服をまとっていた。物質的密度の感覚が消え、濃い霧を貫(つらぬ)くように壁をすり抜けることができたが、壁自体が密度を失った状態のようだった。
マスターとともにほどなくロイヤル・ティトンに到着した。
東側には雄大なロッキー山脈がそびえ、西側にはシエラネバダ山脈とカスケード山脈が見え、さらにその先にはコースト山脈が連なっている。海岸線はまったく変わっており、北方向を見下ろすと、イエローストーン地区が見えた。見事な美しさを誇るイエローストーンだが、そこには現代のアメリカ文明に繋がる古代の驚異と謎が隠されていた。
サン・ジェルマンが説明した。
「あそこは1万4000年以上前からずっと”イエローストーン”と呼ばれている。当時そこにあった”ポセイドニス文明”は、王国の政治を担っていた偉大なる光のマスターのおかげで、非常に高いレベルに達していた。だが大いなる叡智(えいち)が悪用され、衰退(すいたい)し始めたのは最後の500年のことだった。
当時そこには、世界のどの地域とも比較にならないほどの豊かな金鉱山が存在した。そして、ここから60キロほど離れた場所にダイヤモンド鉱山があった。そこで採掘(さいくつ)される石は最高に美しいイエローダイヤモンドで、後にも先にもそれ以上見事なものは地球上では見つかっていない。これらの素晴らしいダイヤモンドが理由で、この山が”イエローストーン”と呼ばれるようになり、現在に至っている。
この金鉱山とイエローダイヤモンドの、双方の鉱山を発見したのはあなただ。
その物的証拠となる記録を今から見せよう。あなたはポセイドニスの時代に転生しており、美しい家で姉妹と2人で暮らしていた。彼女は現在のあなたの妻ロータスだ。あなた方は高い精神性を持ち、”内なる神”と深いつながりを持って暮らしていたので、いかなる時も神が支えてくれた。
あなたは鉱山局の役人として活躍し、後に見事な飛行船を発明し、製造した。そして自らもそれに乗って各地の山々を視察した。ある日、あなたは深い瞑想状態の中で、2つの鉱山の場所の啓示を受けた。後にあなたが発見して採掘が開始され、管理は政府に委ねられた。これから、未だ知られていないそれらの鉱山に入ってみよう。」
ロイヤルティトンを後にし、私は再び、空中を天翔(あまか)ける自分を感じながら、イエローストーン国立公園のある地点まで素早く移動し、地上に降りた。そこには頑丈(がんじょう)そうな岩壁が立ちはだかっていた。振り向いたサン・ジェルマンが、「どこから入ればいいかわかるか?」と尋ね、私は、「いいえ。ですがここに入り口がある気がします」と、巨大な花崗岩(かこうがん)の一点を指して答えた。
微笑んだサン・ジェルマンが、私の示した位置に手をかざすと、瞬間に私たちの目の前に鉄扉が出現した。
「見たかね? 我々は秘密の場所を決めると、そこの入り口を独自の方法で封印する。そうすれば我々が望まない限りは誰も見つけることはできず、入ることはできない。そうした場所や物の封印に使う物質は、すべて宇宙から取り出した物だ。それは見た目は岩とまったく同じだが、それよりもはるかに硬い物質だ。」
「この方法で、我々大いなる白色同胞団の静修地や建築物、地下都市、鉱山、秘密の部屋などのすべての入り口を守ることができる。それらの場所は7 万年以上前から完全な状態で保たれ、我々がもう使用しないと判断したとき、宇宙へ戻す。」
「わかっただろうか? すべての力を従わせることができるのは、自分自身を律することができる者だ。宇宙に遍在するあらゆる力(エネルギー)が、我々が命じるのを待っている。それができるためには、力を行使する我々が、常に神の叡智と愛の一部にならねばならない。」
(略)
「すべてをコントロールする”内なる神”に全神経を集中させ、あなたの中に神が常にあることを決して忘れてはいけない。」